送らとは?
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「俺は神崎。実はきょう君に来てもらったのは君の活躍した話を聞くためさ。悪いね、ホントに。え、別に構わないって? 佐藤さんがいいながらメシを一口かじると、パトカーのサイレンが耳に入った。と、ほとんど同時に誰かの携帯が鳴った。 「どうしてこのコップと被害者のコップに同じ種類のジュースが入ってるんですか? しかも、まだ冷えている」 持ってきたったのはいいが、忙しいからやっぱりあと10分後に来てってインターホン越しにきつくいわれたんだ。 「じゃあそろそろ連行していくよ。名探偵が納得いかないとはいえ、証拠充分な犯人を釈放してしまうほど我々警察は甘くない」 もう怪しい人物を1人に絞ってあるんだ。あの人のアリバイを成立させれば怪しい人物を犯人に決めつけやすいだろう」 「あたしたちはずっと一緒だったものね。つまりあたしたちが共犯ではない限り、藤崎君が犯人か、もしくは佐藤君が犯人に絞られるわけね」 他の奴らのアリバイを聞かずして追いかけてきたんだろ。コンピュータのことならオレじゃなくてもいいしね」 「フフ、やっぱりね。……あれは犯人こと藤崎の家に行っていたんだよ。昨日、被害者に手紙を届けておいてって頼まれていたからね」 「そ、オレたちは親しすぎるから合鍵を持っているんだよ。もっとも、犯人の親から譲り受けたものだけどね。 おれたちは後部座席に座った。3分後、藤崎さんの団地に到着した。警察の方についていくと、ある一室に着いた。 でも文脈を調べるのは可能だね。それに、あいつのパソコンのハードディスクやフロッピーディスクからこの文章が見つかるかもね。 あなたがここに来たということは、同期の方たちの証言からして現場に行ってないことになります。アリバイは完璧ですよ」 「じゃあオレも帰るか。それにしても藤崎が自分の彼女を殺すとはな。改めて愕然とするぜ。とばっちり食わなくてよかった」 ここから現場まで直線距離。信号に多く捕まるが、一本横の路地に入ればかなり時間を稼げるはず。論より証拠だ。 部外者の犯人が容疑者に濡れ衣を着せるように見える。しかし、逆に考えればあの人の仕組んだ偽装工作かもしれない。 後は、中途半端なメッセージとキーボードの血痕。ダイイングメッセージと思われるが、被害者と親しい人物なら、あらかじめ入力しておくことが可能だ。 そう、藤崎さんのように。そして、被害者と親しい人物が同期の人たちにいないということを踏まえれば、やはり藤崎さんが犯人といわざるを得ない。 そうだとすると、おそらくパソコンのプラグを抜きたくないから仕方なくテレビの方を抜いた、と考えるのが妥当だ。 その両親は東京に出稼ぎに行ってて、事件を伝えたから今こっちに向かってるところだよ。連絡したら急に被害者のことをペラペラ喋りだしてさ」 「あの、この割り箸2本を鑑識に回してくれますか? このベタベタした部分を採取して成分を調べてほしいんです」 『よう元気か? 事件のあらましは大体聞いた。もちろんお前の言動もな。なんでも、必死に駆け回っているようだな。 ……でもな、今回がおれのいったことだとは限らない。自分を一番に信じろ。そこまで来たら頼りは自分しかない。 謎は充分抱えているが、先輩の助言通り、おれの仮説が正しければ犯人に自供させることが可能かもしれない。 きょうに限っての普段と違う所を見つけ出すんだ。でも、しらみつぶしに探すのは七面倒で時間の浪費。見当して探すんだ。 「発泡スチロールは燃え過ぎる。燃え過ぎて危険だから不燃なのだ。ったく、落ち葉を燃やす焼却炉なのに紙まで捨ててある」 「ええっと、パトカーが慌ただしく向こうへ走っていく少し前だな。でも、そのときの確認では発泡スチロールは入ってなかったような……」 そして今、椅子の下から見つけたアレの破片。これでうまくいけばあの人のアリバイは成立する。やはり、残る課題は証拠とアリバイ崩しだ! 「ああ、凶器からはやはり容疑者と被害者の指紋のみしか検出されなかった。テープからは鮮明じゃないが、被害者の指紋が検出されている」 「えと、確か刃から布で拭った跡が認められたね。柄の後ろの部分からも。にしてもよくわかったね、ついてることが」 「では、この家の至る所から容疑者の指紋が検出されたと思いますが、山積みされているカセットテープからも出てきましたか?」 「そうだと思うよ。巡回が近くにいて、すぐ現場に行けた警官がいたから。……そうだ、例の手紙はやはり被害者の文脈に間違いないそうだ。 「はっ。凶器からは被害者と容疑者の指紋しか検出されず、連行して尋問したところ、つい今し方、白状しました。 「ここが容疑者と話せる部屋だ。向こうには被害者の両親がいるが、まだ取り調べ中だから終わるまで待っていてくれ。終わり次第伝える」 「異常? 強いて上げれば呼び名だな。あいつは自分のことを『あたし』というんだ。メールでもな。だが、きょうは『わたし』。 「若干濁った声でインターホン越しに、やっぱり10分後に来てっていわれたんだ。だから近くで時間をつぶしてもう1回訪ねた。 「フン、あいつは金遣いの荒い奴でな。ヘソクリで金をためているはずなのに、もっと金を出せ出せいいやがる」 「実は、発泡スチロールは燃えます。有害物質も出さずに。逆なんですよ。燃え過ぎて危険なゆえ、不燃として扱っているようです。 「やっぱり犯人は藤崎さんですよ。証言を参考にしたいので、ちょっと上がっていいですか? 刑事さんの言伝てですので」 あれ? あの床に落ちているのはまさか……。ん、携帯電話!? 充電中か。いや、プラグは抜いてある。……いや、違う。 「嘘つくな! さっき俺が行き来したときお前の座り方が随分違っていた。お前は俺の家を探っていたんだろう。 「……。それはこっちのセリフだぜ。今回の事件の犯人は藤崎さんじゃない。あの人は無実の罪を着せられているだけ。 ……だが、実はその時間は被害者がちょうど買い物に行ってたんですよ。現場にあったレシートの時間がそう示唆している。 しかし、メールがその時刻に送られたとは限らないが、振動する携帯ですから、その時刻に送られたといって間違いないでしょう。 ちなみに、トイレじゃなかったとわかったのは、トイレに濡れた跡がなかったことと、急いで戻ってきたはずなのにハンカチで 「違う。俺は奴んちに手紙を届けた。それに、いったじゃないか。被害者は見知らぬ人を簡単に中に入れないはずじゃ……?」 まあがめつい相手に無理矢理特定の言葉を話させるには困難ですが、被害者の性格を見越していれば可能だ。 そう、金です。金を貢いで録音させたんだ。金はあらかじめ用意しておけばよいが、あなたは偶然被害者のヘソクリを見つけてしまっていた。 カセットデッキに入っていた3万円をね。それを金の献上に利用したんだ。その証拠に被害者の左ポケットには3万円が入っていた。 右には買い物のお釣りが入っていたのに……。まあ、3万円も出せばたったの一言くらい録音してくれるでしょう。 テレビのプラグを抜いてまで録音した言葉を使い、タウンページを携えた藤崎さんを追い返した。ボリュームを最大にしてね。 「実は残っているんですよ、ナイフの部分と柄の後ろの部分にね。要するに、柄を持たずにナイフの部分を持って刺したんだ。 ……あなたのミスは藤崎さんと被害者のコップにジュースを入れてしまったことだが、逆に偽装工作に見えて功を奏したようです。 いや、消しきれてなかったのかな。ちなみに、ぼくがテープを使ったと知ったのは、巻かれたテープに切れ目があったから。 だから、さっきの手で送られたはずの手紙を警察に見せるときに咳払いをし、FAXから切り取った音をかき消したんだ。 しかも焼却炉には念を押して発泡スチロールまで入れた。どうやら発泡スチロールは非常によく燃えるらしいですから。 不運なのは手紙が燃え尽きなかったこと。どうやら管理人が火力が強すぎるためにすぐ火を消してしまったようですよ。 さらに決定的なのは、あなたの嘘。ぼくは警察が手紙の確認に行くということで、ぼくらに会ったのは偶然と思っていた。 「わからないんですか? 被害者のあの体勢で自殺が可能と思いますか? 濡れ衣? あなたへの濡れ衣は逆がない」 「だからこういう事ですよ。自分の、つまり藤崎さんのアリバイがないんです。巧妙に仕組んでおいて、アリバイを用意してないはずはありませんから。 証拠は充分揃ってます。トイレの件に南からの件、フロッピーの件、そして嘘の発言。これらをどう説明します? 「だまれ! そこまでいうなら証拠を見せてみろ。俺が犯人だという決定的な証拠を。すべての状況証拠を裏付ける証拠があるか? ねーよな」 「被害者は刺殺された……。藤崎さんがあなたに電話したとき、殺されたといっただけで刺されたという言葉は使ってないそうです。 「墓穴を掘りましたね。まあ墓穴を掘らしたかったわけではなくて……。本当の証拠があります。まあ聞いてください」 あの人のはこんな音じゃない。あなたは今、携帯の充電を途中で止めています。いえ、電源を切ってさえいます。 それは、もしかすると電池切れの音を連想させてしまうかもしれないから。結局片づけるには至らなかったようですが」 それに、あなたの今さっきの発言をすべてぼくの持ってきたテープに録音させてもらいました。さて、自供しましょうか」 こうして計画的かつ完全な殺人は幕を閉じた。おれは事件解決へあちらこちら走り回ったことを評価された。 |
[ 110] 送・ら・れ・な・い・は・ず・の・真・実・
[引用サイト] http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/9663/kei_oku.html
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然し私達の留置場生活も余り長くは続かなかった。三日目の午前十時頃保安隊員が来て錠を外し私と岩井部長に出る様に云った。又別の房からも三人ばかり出て来た。見れば新幕警備隊の石崎大尉と其の部下の内野と林田と云う軍曹であった。保安隊員は我等五人を前の署長室に連行した。其処には保安隊の支部長初め二・三人の幹部と一方にはソ連軍の将校らしき者二・三人が居て手真似で何か話していた。 やがて私達五人の者は銃を持った五・六人の保安隊員に囲まれ署前に出た。其処には一台のトラックが我々を待っていた。間も無くトラックに乗せられ出発した。新幕の町を出る迄は大勢の朝鮮人が物珍し気に私達のトラックを眺めていた。私達五名の者は云い合せた様になるべく低くしゃがんで顔を伏せていた。顔を知っている保安隊員に聞けば我々を南川に送る様である。出発後十五分位経った頃、新幕の町を外れて間もなくトラックが止まった。どこか調子が悪いらしい。私達五人の者は皆不安な顔をしていた。中でも林田軍曹はどうせ銃殺されるか或いは一生捕虜として酷使されるのだろうから逃げようではないかと小聲で話したが、夜間なら兎も角晝間ではとても逃げられ相にもなかった。若し逃げ出しでもすれば忽ち保安隊員の銃に依って殺されているかも知れない。五人共新幕に最愛の妻子を残しているのである。滅多に軽はずみな事は出来なかった。 三十分ばかりも止まっていただろうか、ようやく動き出した。やがて新幕物開門の峠を越えた処でトラックは又故障を起こした。此処では二時間位も停車していた。此の間保安隊員は我々に同情してか或いは逃走を恐れてか、煙草等を分けて呉れた。其の後もトラックは時々故障を起こして結局南川に到着したのは午後三時頃であったろうか。警察署の前で我々を降ろし隊長が中に入って行った。此処はソ連兵が澤山居た。ああ又留置場かと思っていると、しばらくして隊長が一人のソ連兵と一緒に出て来た。又トラックに乗り南川の町をゆっくり進んだ。此処はソ連兵の多いのに驚かされた。又、町の要所には「スターリン大元帥萬歳」と朝鮮語で大きく書かれた宣傳文が貼られてあった。しばらくして今度は別のソ連兵が居る処に連れて行かれた。此処で大分待たされた。隊長の話によると我々をソ連の憲兵隊に引き渡さねばならないのだが、憲兵隊はもう海州に移動した後であった。それに通訳も居ず要領を得ずに困っていた。留置場に入れようにも満員で、もう入れるところがない相である。それで隊長は我々を海州に連れて行くつもりで運転手に相談して居たが自動車の調子が悪くて、之から海州にはとても行かれないと云っていた。(この時自動車の調子が良かったら私達は海州に連れて行かれて、ソ連憲兵に渡されてどうなったか解らなかったであろう。自動車の故障ゆえ助かったとも居える) しばらくすると一人のソ連兵が出て来て私達を呼んだ。彼は南川の町を通り過ぎて橋を渡り、町外れに連れて来た。其処に川を隔てて相当廣いリンゴ園があった。此処には日本人が大勢居た。ソ連兵は私達を此処に入れるように隊長に手真似をしていた。然し隊長は同じ日本人の居る処に我々を置いて歸るのは不満のようであったが、私達は五人一緒になって決して逃げないからどうか此処に泊まらせて呉れる様に頼んだので遂に彼も承諾した。然し隊長は日本人會長に逢って我々五人の者を絶対逃さない様に・・・・・・若し逃がした場合は南川の日本人にそれ相当の処罰をするからと云って私達を預けたらしい。そこで彼等は私達を残して新幕に歸った。彼らも通訳は居らず新幕や海州に連絡は取れず我々を持て余したらしい。それで彼は責任上一旦新幕に歸って指示を仰いで又来るからと云い残して歸ったのである。彼らとしても私達を良い加減にして置いたのでは、後でソ連兵にどんなひどい目に逢わされるか、それが恐かったのである。 彼らが歸って直ぐ私達は日本人會長や幹部の人に逢った。先ず我々は自己の経歴を語り此処に泊めて貰う事をお願いした。會長は同じ日本人として直ぐにでも逃がして上げたいのは人情であるが、貴方達五名の者を逃がしたばかりに、我々南川の三百数十名の者がどんな目に逢うか知れないと思うと、貴方達の境遇には大いに同情するが、絶対逃げないと男として誓われるなら泊めて上げましょうと云われた。そこで我々もどうせ留置場に入れられる身体であるのが思わず同じ日本人に泊めて貰うのだからそれだけでもう満足である。決して皆さんには迷惑をかけませんと誓って此処に泊めて貰う事となった。こうして我々の身辺は想像したよりも好転して行ったのであった。 此処で南川国民学校の校長をして居られた同郷の岡村氏に巡り逢った。お互いに終戦以来の苦しみを語り合い、日本の不運を歎いた。此処で南川の情況を話して置きたい。此処は新幕よりもソ連兵がずっと多く、町を通って見てもソ連兵で一杯であった。尚其の上此処は、海州から國境近くにある金郊新渓方面に行く交通の要衝になっている関係上、ソ連軍の異動部隊が通過するので其の都度日本人初め朝鮮人迄も、相当被害があるとの事である。私達が町を通った時も、ソ連兵達は鮮人の物売りから、リンゴや其の他の物を手当たり次第取って食べているのが見られた。特に移動部隊が来た時は略奪が激しく、日本人会長さんや岡村さんの話に依れば、此の二・三日が最もひどく夜も一睡もできずに警戒していなければならない相である。夜間、彼等は女欲しさにやってくるらしい。全く野獣の如き振舞いをして女を求めるとの事であった。其の為か、南川の日本婦人、特に娘さん達は頭髪を惜し気も無く刈り、顔には墨などをつけて黒くし、モンペやズボンを二枚も三枚もはき洋服の上衣を着て男装をしていた。彼女達は、夜は家の中か防空壕に入ったきり出られず、晝間でさえ家から余り出られない有様で、全く戦々恐々とした生活を続けているのであった。又今日私達を連れてきたソ連兵は各室を一々廻って女の数を調べて歩いたから、今晩は余程警戒しないと危険だと話し合っていた。 午後四時頃私達は班に入れて貰って食事を戴いた。私と岩井部長は同じ班に入れて貰った。薄暗くなる頃から男は不寝番や警戒に当たった。私達も一緒になって警戒した。警戒といっても要所・要所に火を焚いて集まっている位で決して抵抗は出来ない。女達は明るい間に食事や雑用を済まし全部家の中に隠れていた。ソ連兵が川向こうの道路を歩いている時は「警戒警報」と云って知らせ、リンゴ園に入って来たときは「空襲警報」と云う合図をする様になっていた。 大分暗くなってから表門の方から「警戒警報」と知らせて来た。私は門の方へ行って見ると二・三人のソ連兵が道路をこちらに歩いて来つつあった。彼等は私達の居る方を見ながら何か話していた。門の処迄来て入りかけたが又引き返して行った。それから間もなく道路の方でパンパンと銃の音がした。彼等は威嚇の為に発砲したのである。すると間もなく「空襲警報」と云う合図があった。見ると二・三人のソ連兵が門の中に入っていた。我々の居る処に来て身体検査をやり出した。彼等は時計、万年筆、金などを探し、持っていたら片っ端から盗るのである。掠奪が済むと今度は女を探しに家の中へ入って行った。真暗い室内で子供の泣き叫び聲、叱る聲、逃げ惑って悲鳴を上げる聲。文字通り阿鼻叫喚の生き地獄であった。やっと彼等が歸ったと思えば、又新たに別の組が入って来たりして、十二時過ぎ頃迄はこうした状態が続いた。彼女達は全く生きた心地はしないであろう。然しさすがのソ連兵も彼女達の命がけの抵抗には辟易するらしく最后の一線と云う処で目的を果たさずに歸っていくらしかった。私は新幕に居る妻子の身を案じた。どうか新幕は南川の様にならなければ良いがと。 十二時過ぎから朝鮮人の保安隊が四、五名来てソ連兵が来る度にうまくとりなしては返してくれた。保安隊員もソ連兵の暴行ぶりにはあきれ返っていた。夜明け近くになってやっと家に入って横になる事が出来た。 |
[ 111] 八
[引用サイト] http://www18.ocn.ne.jp/~a6962/aika8.htm
