完結とは?

創元ライブラリ版『中井英夫全集』全十二巻がようやく完結した。第一回配本『とらんぷ譚』が一九九六年五月のことだから、ちょうど十年を費やしたことになる。思えば東京創元社の看板文庫たる『日本探偵小説全集』もそのぐらい長丁場での刊行ペースだった。良書を丁寧に市場へ供給する良心的出版社の面目躍如といったところであろう。
本全集発刊までの経緯は戸川安宣元編集長も私も幾度か書いている。たしか最初の話は一九九一年のことで、当初は『とらんぷ譚』全一冊本の創元推理文庫収録というプランニングだった。ちょうどその時期、講談社文庫の『幻想博物館』『悪夢の骨牌』『人外境通信』『真珠母の匣』が絶版となりかかっており、また創元推理文庫で出た紀田順一郎さんの『古本屋探偵の事件簿』が好調とのことで、そんな厚い文庫本で一冊、と戸川さんはお考えになっていたと記憶している。
ところが、そのころから中井英夫の体調が急速に悪化し、入退院を繰り返すようになり、また引越しも余儀無くされ、次第に経済状態が悪化することになる。当時は戸川さん、講談社の宇山秀雄さん、『幻想文学』の東雅夫さんと、今後の中井英夫の生活をどうしたらよいか、幾度も会合を重ねた暗鬱な日々だった。そんなある日、戸川さんが中目黒の私の家の近くの喫茶店までいらしてくださり、「いっそのこと『全集』ということにして、これまで出たもの、これから出すもの、全部収録するってことにしたらどうでしょう」と申し出てくださったのである。
十九世紀中葉のフランスの作家、ブルターニュ地方の名門貴族の出自を持つヴィリエ・ド・リラダンは、精神の孤高を持しながら、生涯赤貧洗うが如き生活を送ったという。その自尊心を傷つけぬよう援助の手を差し伸べるのに腐心したというエピソードが残されているが、戸川さんのお話はその逸話が再現されたかのような感慨を抱いたものだった。思えば、東京創元社の齋藤磯雄訳『ヴィリエ・ド・リラダン全集』を担当していたのは若き日の戸川安宣氏だったのである。
それに文筆に生涯を賭けた中井英夫にとっても、最晩年に全作品が文庫本という入手しやすい形で出版されることが決定していたのは、うれしい知らせだったに違いない。私などがいうのも僭越だが、改めて戸川さんと東京創元社のお力添えに心から感謝申し上げたい。
中井英夫が“全集”というタイトルに警戒的になっていたのは知られた話だろう。かつて『新思潮』編集時代に太宰治を訪ね、「いったい、まだ生きている作家が“全集”を出すぐらい滑稽なことがあるだろうか」と詰め寄ったというのである。戸川さんとは『コレクシオン中井英夫』とか『中井英夫集成』というネーミングを考えたが、発刊は歿後のこととなりお蔵入りとなった。
十年という刊行期間には幽明境を異にする執筆者、関係者も多かった。ご高齢だった埴谷雄高氏、椿實氏、また『薔薇幻視』の写真家佐藤明氏。生涯ただ一度だけ三一書房版『中井英夫作品集』一巻本の装幀に手を染められた作曲家の武満徹氏。今回の私の全集装幀原案にサジェスチョンをいただいた装幀家の小倉敏夫氏。また一昨年にはまだお若かった小笠原賢二氏、さらにこの夏には宇山秀雄氏の急逝が相次いだ。改めて御冥福をお祈り申し上げたい。中井英夫の作品は決してベストセラーになるようなものではなく、少数の読者によって静かに読み継がれていく性質のものだと思うが、そこにはこういった多くの方々の力強いお仕事があったのである。うれしいことに創元ライブラリ版『中井英夫全集』は少しずつながら大半の巻が版を重ねている。
今回の“全集”は中井英夫生前の刊本を集成するというスタイルを採り、決して本来的な意味での全集とはいえない。多くの単行本未収録作品、草稿、異稿、日記、書簡類を残しているが、他日を期すことにした。例外的に執ったのが第十巻『黒衣の短歌史』所収の「中井英夫中城ふみ子往復書簡」で、これは一九九三年の九月、小樽文学館の玉川薫さんが病床の中井英夫を訪ね、生前に諒承をいただいたことで収録することにした。中井英夫の死の三ヵ月前のことだった。この往復書簡のことで中城ふみ子の忘れ形見である愛娘、厚美雪子さんに、生前一度だけお会いする機会を得たのも忘れられない思い出である。
編集実務には戸川さんの社長就任前後より、代わって伊藤詩穂子さんが担当してくださった。往復書簡の解読や『薔薇幻視』編集での熱心な作業など思い出も多い。記して感謝申し上げたい。
創元ライブラリ版『中井英夫全集』の校訂に携わる。著書に写真集『彗星との日々―中井英夫との四年半―』、写真+エッセイ集『プラネタリウムにて―中井英夫に―』。また監修した書籍に、中井英夫『中井英夫戦中日記 彼方より』、赤江瀑ほか『凶鳥の黒影(まがとりのかげ) 中井英夫へ捧げるオマージュ』がある。

[ 110] 東京創元社|Webミステリーズ!(本多正一)
[引用サイト]  http://www.tsogen.co.jp/web_m/honda0611.html

【カーヌスティ(英北部)=木村正人】世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの完結編「ハリー・ポッターと死の秘宝」(第7巻)が21日午前零時1分(日本時間同日午前8時1分)、世界中の書店で一斉に発売された。ロンドンやニューヨークの書店では魔法使いに化けた子供たちが列をつくり、完結編を買い求めた。シリーズで4億冊以上の売り上げが見込まれている。■発売開始 「登場人物の2人が死亡する」と発表し、ハリーが死ぬかもしれないと世界的な反響を呼んだ作者J・K・ローリングさんは同時刻、ロンドンの自然歴史博物館で500人のファンに対し完結編を読み始めた。ウェブサイトで「興奮、不安、救済の合体」と発売前の心境をつづっていたローリングさんの声は館内に静かに響き、ファンはかたずをのんで聞き入った。 「ハリーを救え!」という嘆願署名を展開していたロンドンの大手書店ウオーターストーンではハリーやその仲間たちの姿をした子供たち約2000人が雨の中、列をつくり、完結編の発売を待ち兼ねた。最高36時間並んだという人もおり、フィンランドなど海外からも大勢のハリー・ファンが駆けつけた。■攻防 完結編は内容が事前に漏れるのを防ぐため、各国の出版社が保管倉庫に警備員を配置するなど厳重な管理下に置かれた。投じられた費用は1000万ポンド(約25億円)と伝えられる。 しかし、完結編の一部とされる文章がインターネット上の複数のサイトに登場。フィンランドの書店では解禁前の19日、間違って完結編数冊が店頭に並べられ、うち1冊が販売された。 さらに19日付の米紙ニューヨーク・タイムズなどが独自に入手し完結編をもとに書評を掲載。ローリングさんは「読者の期待を無視した」と憤慨する騒ぎもあった。■経済効果 このシリーズは第6巻の「ハリー・ポッターと謎のプリンス」までで64カ国語に訳され、約200カ国で出版、約3億2500万冊が売られた。 完結編は93カ国で発売されるが米国だけで1200万冊を出版。大手ネット書店「アマゾン」にはすでに220万冊の予約がある。完結編を含めると4億冊以上の売り上げが期待されている。 日本では14日、5作目の映画「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の先行上映が始まった。第1作から第4作までの興行収入は35億ドル。このほかDVD、ビデオなど関連商品の売り上げも10億ドルに上り、ハリーの経済効果は計り知れない。 さて、注目のハリーの運命だが、それは完結編を読んでのお楽しみに。
彼らは非常にわずかなあいた、お互いの胸に魔法の杖を向け警戒をしたが、お互いの魔法の杖を外套の下にしまい込んで…
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[ 111] 「4億冊以上売り上げ見込む ハリー完結編発売」本・アート‐書評ニュース:イザ!
[引用サイト]  http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/breview/69349



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