力士とは?

ここで述べる力士像とは金剛力士像や仁王像(二王像)などや本物の力士を模った銅像などと異なる為、あえて建築力士像と名づけました。社寺建築の装飾彫り物(彫刻)の定番である「龍」、「鳳凰」、「獅子」などの縁起の良い架空生物は良く見かけると思います。しかし、力士像はその絶対数が少なくかなり凝った社寺建築にしかありません。又、他の装飾彫刻が技量が見所に対し力士像は表情や形態がユニークでその配置1つにとっても地域差があり、単純に作者の技量だけでなく内面的なものを表しているようにも見えます。特に注目されている訳でもない為、日本でどのように存在しているかもわからず、とりあえず秋田県の社寺建築を中心に調査を始めたところです。寺院にも一部ありますが基本的に神社が多く実際の力士と神社の係わりや横綱が神と呼ばれたり、土俵が神聖視されたり、マワシは注連縄を連想させたりと興味が尽きないところです。西日本では力士像のことを邪鬼と称しているようですが社寺を守るという点では同じものと言えると思います。
秋田県内には力士像が装飾彫刻された社寺建築がどの様に分布しているのでしょうか?下記の「建築力士像が装飾彫刻された社寺建築の分布と地域性の考察」でも詳しく数字を出しましたが、明らかに地域によって分布が異なることがわかりました。まず、秋田県内を次の6つのブロックに分けその社寺建築の数を調べてみます。
上記の表を見てもわかる通り、秋田県内でも特に横手市を中心とした南部山間地域にある社寺建築に非常に多く、特に旧郷社レベルになるとかなりの確率で存在します。秋田市と中心とする中央沿岸地域では、雄物川流域の旧河辺郡周辺に多く存在し、雄物川によってのなんらかな文化の繋がりを想像させます。由利本荘市を中心とする南部沿岸地域では、特に贅をつくした社寺建築のみ存在し、後で述べますが、その形態や配置が他の地域と異なることが分かりました。そして、秋田県北部(井川町の熊野神社以北)には全くといって見当たりません。当然、1人の目視のみの調査で本殿や宮殿などは覆屋や鞘堂内部にある場合もあるため全てを確認している訳ではありませんが、明らかに数に違いがある事は明白だと思います。
まだまだ調査件数が少ないのですが調べていくうちに、社寺建築の中での配置(ようするに力士像がいる場所)が4つパターンに分けられることがわかりました。そしてその配置にも地域差があり、力士像に対する考え方が多少異なるのではないかと考察できます。まず配置の型ですが、(1)-隅木支え型、(2)-蝦虹梁鎮座型、(3)-蛙股鎮座型、(4)-複合型に分けられます。そして、地域ですが(1)型は秋田県全般(由利地域除く)、(2)型は由利地域(※玉ノ池八幡神社は(1)型ですが下浜より現地へ移設されたことで秋田中央地区の影響が強かったとかんがえらえます。)、(3)型は仙北地域(※雲厳寺と金峰神社の2例あり後年の法憧寺は円満造翁が意識していたと思われます。)。(4)型は地域性が現在見られません。(現在3箇所なので判別していません。)実際、このようにはっきりと地域差が出るとは思ってもみませんでしたが、今後も注目していきたいと思います。
詳しい数字は「建築力士像の建物における配置と地域性の考察」で書いていますが、地域によって力士像の社寺建築のなかでの配置が異なる事がわかりました。これは力士に対する意味付けが地域によって異なる事を意味していると思われます。屋根の4隅を支える「隅木支え型」は明らかに四神や四天王を表していて、特に四天王は須弥山の四方を守る神とされ、その仏像には「邪鬼」が踏み潰されているのを良く見かけます。御本尊を守る四天王を屋根の隅木に例え、それを踏みつけられる邪鬼を力士に例えていると言ったところでしょうか。それに対する「蝦虹梁鎮座型」や「蛙股鎮座型」は金剛力士像や仁王像に例えられていると考えれます。これらも、御本尊を守る神とされ、通常は寺院の山門などの両脇に「阿形」、「吽形」の2体が安置されます。その為、「蝦虹梁鎮座型」や「蛙股鎮座型」は基本的に2体で一対の形を取っています。特に「蛙股鎮座型」は山門や寺院の本堂に設えられていたのでその理由はわかりやすいと思います。
建築力士像には様々な個性があり、大きく4つに分けてみました。これも力士像が装飾彫刻された社寺建築が建立された地域ではっきりと区別することができます。調査件数が少ない為、はっきりとは言えないのですが、上記の建物における配置と同じ様な結果になりました。製作者や時代が異なると思われるのですが単なる装飾彫刻だけでなく力士像への意識や思想が違うのだと考えられます。
詳しい数字は「建築力士像の表情から見る地域性の考察」で書いていますが、力士像の表情や体型でも地域差ははっきりと出ます。これは力士像の意味をどう捉えているかで大きく異ることが考えられます。特に南部山間地域に多い「太身鬼神型」は上記でいう四天王に踏み潰されている「邪鬼」を現していると思われます。その為、体がごつく、顔も鬼の形相となっています。それに対する「太身人型」は南部沿岸地域の「蝦虹梁鎮座型」に多く金剛力士像や仁王の意味合いを持ちながら、実際の力士を神格化しそれをモチーフにしたのではないでしょうか。中央沿岸では「細身人型」が多くその容姿は南部地域で見られるものと大きく異なります。この地域は「隅木支え型」が多いのですが邪鬼が踏みつけられているのではなく、あくまで力士が屋根を支えている、守っていると言った様相を見せています。姿形も細身で洗練されたイメージを持ちます。
建築力士像には様々な個性があります。前述した総体的なイメージとは違う個々の表現を大きく8つに分けてみました。当然複合した力士像も多く含まれるのですがある程度管理人の主観で分けています。装飾彫刻した職人の気質や癖、地域差などが分かればよいと思っているのですが・・・・。8つ形態には主に座り方と屋根の隅木の支え方に注目しています。皆様が実際神社をお参りする祭参考にしていただければと思います。
詳しい数字は「建築力士像の容姿から見る地域性の考察」で書いていますが、力士像が取っているポーズや格好は地域によって異なります。これらも上記で述べた力士の意味合いで大きく異なります。南部山間地域は「邪鬼」をモチーフにしている可能性が高い事は先に述べましたが、その為、あくまでも屋根を支えている形ではなく、「邪鬼」が押しつぶされるのを耐えているといった姿が一般的になったと思われます。それに対する他地域では、支えている又は持ち上げようとしている姿が一般的な解釈なのではないかと思います。
当初、秋田県内中心に調査をしていた為、建築力士像は主に神社を守るもので、幕末〜明治にかけての大工や彫刻の技術が最も高い時期に造られるものと思っていました。しかし、調査を進める内にどうも考え方を改めた方が良いようです。それは次に上げる2つの理由からです。
このことから建築力士像(邪鬼)は古来中国の思想や建築様式が入ってきた600〜700年頃に同じように伝えられたと考えられます。西日本ではこの邪鬼の概念がそのままの形で土着していたことが推測されます。ただ邪鬼とはあくまで仏教用語な為、神社建築に対して概念は同じでも名称が力士像となり、東日本では寺、神社共に力士像として定着していったのではないでしょうか?
では何故「邪鬼」が屋根を支えているのでしょう?実は「邪鬼」は悪さや人と異なる事をする代名詞とされ、四天王(持国天-東方を守護・増長天-南方を守護・広目天-西方を守護・多聞天-北方を守護)に常に踏みつけられています(四天王参考リンク)。屋根を四方から守護するという事であれば、屋根の隅木が四天王に例えられると思います。そう考えると「邪鬼」は屋根を支えているのではなく、隅木(四天王)によって押さえ込まれていると言った方が正確なのかも知れません。「邪鬼」を掘り込む事で逆に四天王が建物を守っていると表現していたのではないでしょうか?
では何故「力士」が屋根を支えているのでしょう?ご存知のように、相撲は神事であり、奉納相撲はいまだに各地に残っています。現在は行われなっか神社にも境内に土俵の跡があったりします。古代には占いなどにもなっていたらしく、古墳から力士を模った埴輪も出土したいます。特に力士が四股を踏む事は土地の霊を鎮めることに通じ地鎮を意味します。又、土俵の上部に屋根が掛かっているのを良く見かけると思うのですが、四隅にぶら下がっている房はそれぞれ色が異なり四神(青龍・朱雀・白虎・玄武)を表しています。力士が屋根を支える事は土地を鎮めることを意味するだけでなく、それを模ることで四神が建物を守っていると表現していたのではないでしょうか?
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[ 45] 秋田建築力士像 −秋田県の社寺建築彫刻
[引用サイト]  http://www.geocities.jp/akitasaisei/rikisi.html



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