脳炎とは?
|
国立感染症研究所のページへ|感染症情報センターについて|引用リンクについて|サイトマップ 新興感染症|予防接種|人獣共通感染症|節足動物媒介感染症|寄生虫症|輸入感染症(旅行者感染症)|腸管感染症(食中毒を含む)|小児の感染症|眼の感染症|性感染症(STD)|日和見感染症|薬剤耐性菌感染症 A1 日本脳炎ウイルスに感染しても、ほとんどの人は気がつかない程度ですんでしまい、ごく少数の人が発病するにすぎません。その発病率は、100〜1000人に1人程度と考えられています。しかしいったん脳炎症状を起こすと、致死率は20〜40%前後と高く、回復しても半数程度の方は重度の後遺症が残ります。 わが国の日本脳炎患者発生数は、ワクチン接種の推進、媒介蚊に刺される機会の減少、生活環境の変化等により、その数は著しく減少し、近年では、年間数名程度の発生にとどまっています(図1:感染症発生動向調査より)。 しかし、日本脳炎ウイルスの保有動物であるブタにおける感染状況(日本脳炎ウイルスに対する免疫(抗体)保有率-感染症流行予測調査より-)をみると、西日本を中心に毎年広い地域で抗体陽性のブタが確認されています(図2)。つまり、まだ国内では、西日本を中心に日本脳炎ウイルスに感染しているブタが多数存在することになります。 また、図3に示したように、ブタが日本脳炎ウイルスの感染を受け始める時期は、6〜7月頃に、九州、中国、四国地方から始まり、8〜9月にかけてその地域が広がっていくのがわかります。 2005年5月30日の、厚生労働省による日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、3〜4歳での日本脳炎ワクチンの接種率が激減しました(図4:2006年度感染症流行予測調査より)。 その結果、ヒトの日本脳炎に対する抗体保有状況は(図5)、2006年度の0〜4歳群でこれまでにない低い割合になっています(図6)。 Q2 地域によって、日本脳炎に関するリスクが異なると聞きました。日本脳炎ワクチンの接種を考慮した方がよいと考えられるのは、具体的には、どの地域に住んでいる、どの年齢層の人でしょうか? A2 図2に示した日本地図で、ブタの抗体保有率が常に高い九州、中国、四国地方等にお住まいの方、あるいは近年、日本脳炎患者発生が多く認められた地域(図7)にお住まいの方で、日本脳炎ワクチンの接種をこれまでに1度も受けたことがない定期予防接種対象者の方(具体的には、日本脳炎ワクチンを1回も受けていない現在3〜5歳のお子さま)は、夏になる前に、最初2回のワクチン接種(基礎免疫)をできれば考慮された方が良いのではと考えています。 この年齢での接種に関しては、定期接種の扱い(費用の補助、万一の健康被害の際の救済等)になります。 なお、接種にあたっては、Q4に記載した日本脳炎ワクチンによる副反応の情報とも考えあわせた上、主治医の先生とよくご相談下さい。 Q3 ブタの抗体保有率が高い地域に住んでいるのですが、近所には養豚場などはないようです。接種を考慮した方がよいでしょうか? A3 日本では、主にコガタアカイエカによって、ウイルスを保有するブタからヒトに日本脳炎ウイルスが伝播されます。蚊の活動範囲(飛行距離)は、8km程度移動したという報告もありますが、概ね2km前後とされています。 近隣に養豚場がない場合でも、蚊の活動範囲や本人の行動範囲を考慮して、判断されるのが良いと思います。 また、一般的には郊外より都市部で生活される方が、日本脳炎に対する感染のリスクは下がると考えられます。 Q4 日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)はどのくらい報告されているのでしょうか? A4 A5で示すとおりADEMは様々な要因で発症しますが、平成15〜16年の全国調査(回収率60.2%)で、ADEMと報告された15歳以下の患者さん101名の内、発症1か月以前にワクチン接種歴があったもの(先行感染ありを含む)は約15%(15名)で、ワクチン接種歴があったものの内、日本脳炎ワクチン後の報告は約25%(4名)でした。 (平成17年度厚生労働科学研究『小児の急性散在性脳脊髄炎の疫学に関する研究(宮崎、多屋、岡部ら)』による。 厚生労働省によると、因果関係は明らかにはされていないものの、予防接種後副反応報告として報告されたADEMは、平成6年度から平成18年度までの13年間に21件ですが、その、年齢分布は、3〜7歳(初回接種)で14件、10歳(2期接種)で1件、14〜15歳(3期接種)で6件となっています。 予防接種後副反応報告として報告されたADEMの多くは、予防接種法に基づく健康被害救済制度の申請をされると考えられますが、厚生労働省によると、認定を受けた方の数は、平成元年〜平成19年3月までに16件で、その、年齢分布は、3〜7歳(初回接種)で10件、14〜15歳(3期接種)で6件となっています。 平成7〜15年度日本脳炎ワクチンの定期予防接種実施者数は(平成17年5月に積極的勧奨の差し控え)、 初回接種(生後6〜90か月未満、標準的な接種年齢:3歳で2回、4歳で1回):約280万人/年 Q5 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は、様々な要因で発症するといわれていますが、どのようになっているのでしょうか? A5 わが国における15歳以下のADEMおよびその周辺疾患(多発性硬化症を除く)の発症頻度は年間約60例程度、15歳以下の小児人口10万人あたり年間0.32であると推計されています。本調査(*)によるADEM発症の平均年齢は6歳11か月でした。 また、宮崎らによる94〜95年,99〜01年,01〜02年におけるAND(acute neurological diseases: 小児急性神経系疾患)調査では、国内約10地域より59例のADEM(ほとんどは原因不明)の報告があり、発症のピークは6歳前後で、全治19%、軽快66%で死亡例はなかったと報告されています。 (2005年6月27日、国による日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて−日本小児科学会コメントより:日本小児科学会ホームページ http://www.jpeds.or.jp/saisin-j.html) (*平成17年度厚生労働科学研究『小児の急性散在性脳脊髄炎の疫学に関する研究(宮崎、多屋、岡部ら)』による。) A6 現在国内では、これまでの日本脳炎ワクチンの製造法(原材料としてマウス脳を使用)とは異なり、ADEM発生の理論的リスクが低いと考えられている新たな日本脳炎ワクチンの開発が進んでいます。 なお,日本脳炎ワクチンの定期接種積極的勧奨の差し控えに関して、平成17年6月27日、日本小児科学会はコメント(別添資料)を発表していますが、国立感染症研究所感染症情報センターの意見はこれと同一です。(日本小児科学会のホームページは、2007年5月現在URL: http://www.jpeds.or.jp/saisin-j.html)です。 (別添資料 PDF)国による日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて−日本小児科学会コメント(05.06.27) |
[ 207] 日本脳炎:感染症情報センター
[引用サイト] http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE.html
|
日本脳炎ウイルスの感染によっておこる中枢神経(脳や脊髄など)の疾患です。ヒトからヒトへの感染はなく、ブタなどの動物の体内でウイルスが増殖された後、そのブタを刺したコガタアカイエカ(水田等に発生する蚊の一種)などがヒトを刺すことによって感染します。 ウイルスを持つ蚊に刺されたあとも症状なく経過する(不顕性感染)場合がほとんど(過去には、100人から1000人の感染者の中で1人が発病すると報告されている)ですが、症状が出るものでは、6〜16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識障害(意識がなくなること)、神経系障害(脳の障害)を生じます。 大多数の方は、無症状に終わるのですが、脳炎を発症した場合20〜40%が死亡に至る病気といわれており、幼少児や老人では死亡の危険は大きくなっています。 なお、詳しい情報は、国立感染症研究所感染症情報センターをご覧ください。 この情報に関する国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、 近年の患者の発生は年間数名で、おもに中高齢者となっています。しかしながら、平成18年9月に熊本県において、小児での発生が報告されています。 感染状況は地域によって、大きく異なります。過去9年間(平成11年から平成19年4月)に46件の発症がありましたが、そのうち大部分は、九州・沖縄地方(41%)及び中国・四国地方(43%)で発症しており、北海道(0件)、東北(0件)、関東(1件)甲信越(0件)地方における発症は非常にまれです。 なお、詳しい地域別の情報は、国立感染症研究所感染症情報センターをご覧ください。 この情報に関する国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、 現行の日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルスを感染させたマウス脳の中でウイルスを増殖させ、高度に精製し、ホルマリン等で不活化(毒性をなくすこと)したものです。 予防接種法にもとづく現行の定期予防接種スケジュールは以下のようになっています。 なお、日本脳炎は定期の予防接種の対象疾患となっているのですが、その発生状況等を検討して、予防接種を行う必要がないと認められる地域を都道府県知事が指定することができるようになっています。 これを踏まえて従前より、北海道のほとんどの地域では、日本脳炎の予防接種は実施されていません。 Q7 .組織培養法による新しい日本脳炎ワクチンが開発中とのことですが、いつから使用できるのですか? 組織培養法による日本脳炎ワクチンについては、(財)化学及血清療法研究所、(財)阪大微生物病研究会から、それぞれ、薬事法上の承認申請が行われております。 しかし、承認申請に添付された臨床試験結果を見ると、局所副反応の発生率が既承認の製品に比べて高いこと等から、接種に適した用量等を再検討した上で、あらためて臨床試験を行うこととされました。 厚生労働省では、その試験結果を待って、これらワクチンの有効性、安全性を確認することとしています。 まれに接種後直後から翌日に、発疹(ほっしん)、じんましん、そう痒(かゆみ)、等の過敏症がみられることがあります。 また、全身症状としては、発熱、悪寒(さむけ)、頭痛、倦怠感(けんたいかん)、はきけなど、接種部位の局所症状としては、発赤、腫れ、痛みなどが認められることがありますが、通常は2〜3日中に消失します。 さらに、ごく稀に急性散在性脳脊髄炎(ADEM、アデム)というQ9に示すような副反応がみられます。 ある種のウイルスの感染後あるいはワクチン接種後に、稀に発生する脳神経系の病気です。ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害等の症状があらわれます。 ステロイド剤などの治療により多くの患者さんは正常に回復しますが、運動障害や脳波異常などの神経系の後遺症が10%程度あるといわれています。 麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)、インフルエンザなどのウイルスやマイコプラズマなどの感染後にみられ、病原体感染の後におこることもあるといわれています。 ワクチン接種は毎年たくさんの子どもにおこなわれるので、ワクチン後にADEMがみられた場合は、ワクチン接種によるものとウイルスなどの病原体の感染によるもの、あるいは原因不明のものとの区別が困難です。 現在の日本脳炎ワクチンは、製造の過程で微量ながらマウスの脳組織成分が混入する可能性があり(検出限界以下)、この成分によってADEMが起こる可能性が否定できないとされています。 Q10 日本脳炎ワクチンを接種したことによるADEMの副反応は、どれくらいあるのですか? 日本脳炎ワクチンの副反応としてのADEMは、70―200万回の接種に1回程度、極めてまれに発生することがあると考えられています。万が一発症してもその多くは正常に回復し、再発は通常みられません。 Q11 平成17年5月に定期予防接種として、日本脳炎ワクチン接種の積極的な勧奨を差し控えた理由はなんですか? 因果関係は不明なものの、マウスの脳を用いた現在の日本脳炎ワクチンを接種した後に重症ADEMを発生した事例があったことから、より慎重を期するため、定期予防接種としての現行の日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨は行わないよう市町村に勧告し、希望する者に対しては、接種を行って差し支えない旨の通知をしたものです。 日本脳炎ワクチンを接種した後に重症ADEMを発症した事例があったという事実は重く受け止める必要があり、引き続き安全性に十分に配慮していくべきという考えは変わりありません。 しかし、日本脳炎は居住地域や年齢などの諸事情により感染するリスクが異なるので、効用及び副反応を念頭におきつつ、居住する地域の特異性(養豚場が近隣にある、当該地域では発症率が高いと見込まれる等)等を考慮し、接種するか否かの判断をしていただきたいと思います。 市町村の担当窓口に相談してください。市町村で実施する日本脳炎の予防接種については、「定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の取扱いについて」(平成18年8月31日付け健感発第0831001号本職通知)によって予防接種を受ける機会を法に基づき引き続き確保するよう依頼しているところです。 国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ上に以下のような日本脳炎に関するQ&Aを掲載してあります。 地域によって、日本脳炎に関するリスクが異なると聞きました。日本脳炎ワクチンの接種を考慮した方がよいと考えられるのは、具体的には、どの地域に住んでいる、どの年齢層の人でしょうか? ブタの抗体保有率が高い地域に住んでいるのですが、近所には養豚場などはないようです。接種を考慮した方がよいでしょうか? 日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)はどのくらい報告されているのでしょうか? 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は、様々な要因で発症するといわれていますが、どのようになっているのでしょうか? Q15 万が一、予防接種で重い副反応が起こったら補償はありますか?予防接種が原因と特定されなければ補償されないのでしょうか? 予防接種法に基づく予防接種により疾病、障害、死亡等の健康被害を生じた場合には、被害者に対して予防接種健康被害救済制度によって、医療費の支給、障害年金の支給等を行うこととなります。 なお、救済制度の対象となる健康被害は、厚生労働大臣が予防接種との因果関係を認定したものに限ります。 日本脳炎の感染源は日本脳炎ウイルスを媒介する蚊です。一般的な注意として戸外へ出かけるときには、念のためできる限り長袖、長ズボンを身につける、露出している皮膚への蚊除け剤の使用、網戸の使用など、ウイルスを持った蚊に刺されないよう十分な注意をすることをお勧めします。 蚊の発生を減らすためには、住居周辺の水溜まりを作らないことに心がけることが重要です。また、側溝等に落ち葉や土砂がたまり、流れが滞らないように定期的に清掃することも有効と考えられています。 |
[ 208] 厚生労働省:日本脳炎ワクチン接種に係るQ&A
[引用サイト] http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/nouen/
