投げとは?

枕投げ(まくらなげ)は、複数人で枕を投げ合う遊戯である。複数の参加者と、適当な広さの場所、十分な数の枕があれば実行できる。また、チームを組んで行うこともある。移動教室や修学旅行などの学校の宿泊行事で、しばしば教師の目を盗んで行われる。枕合戦とも呼ぶが、これはピローファイト(枕叩き)を意味する場合もある。
枕投げの歴史は、現在のところ、ほとんど分かっていないと言わざるを得ない。「枕投げ」という言葉そのものも、多くの国語辞典にはなお未記載の語であり、文献上の初出例も明らかでない。
物を投げ合う習俗そのものは古くから存在した。中世の「飛礫(つぶて)打ち」もそのひとつで、祭礼などのハレの行事や、一揆や打ち壊しにあたっての「石打(いしうち)」などが記録に残る。遊戯的なものとして、2組に分かれて石を投げあう「石合戦」もあった。
また、雪玉を投げ合う「雪打ち」と称する習俗も、すでに中世の資料に見られる(『御湯殿上日記』の文明年間の記事など)。これが、明治時代以降の資料では「雪投げ」「雪合戦」と称され、今日でも子どもの遊びとして盛んに行われている。
しかしながら、投げる道具として枕が選ばれたのは、それほど古いことではないと考えられる。枕は日本でも古くから用いられていたが、近代以前のものには台が付いており、投げ合うことに適したものではなかった。近代になって輸入・生産された西洋型の枕であれば、これを投げ合うことが可能である。したがって、枕を投げ合う習慣は、早くとも明治維新を遡らないものとみて差し支えない。
枕投げが修学旅行と関係が深いことを考えても、その起源は、修学旅行の実施された明治時代よりは新しい風俗と推定されるが、それがいつ頃かは、決定的な資料がない。旧制高校の慣習には、きわめて乱暴なものが多かったことから、合宿時などには枕投げが行われたとしてもおかしくはない。しかし、実際に枕投げがなされたかどうかを語る資料は現れていない。
第二次世界大戦後は、そもそも修学旅行の余裕すらない時期が続いたが、団塊の世代が修学旅行の時期を迎える1950年代末から1960年代には、すでに枕投げが人気を博していた模様である。西鉄観光バスが2004年、現在の団塊世代向けに修学旅行を再現する旅行を企画したところ、再現の要望が一番強かったのが旅館での枕投げだったという[1]。
1960年代から1970年代には、枕投げは、修学旅行中に行う遊戯として定着をみていたものらしく、「枕投げ」の語が児童の卒業文集等にも登場している。戦後教育が定着し、行事の場で児童・生徒の自由度が広がるとともに、枕投げの習慣が全国に広がったことは十分考え得る。しかし、普及の要因などについて確定的なことは明らかでない。
1980年代以降、漫画やアニメーション(とりわけ「学園もの」の分野)で、学校生活の風物詩の描写としてしばしば枕投げが現れるようになる。このころにはすでに、子供の間だけで流行するサブカルチャーの地位を脱して、一般に認知される風俗となっていたと考えられる。
枕投げは、現在、日本全国にわたって、ほとんどの児童・生徒が経験する遊戯でありながら、これまでにほとんど歴史的な研究対象にならなかったものであり、今後の研究成果が待たれている。
修学旅行等で児童・生徒が行う枕投げには、ごく簡単なルールしか存在しない。基本的には、2人以上が複数のチームに分かれて枕を投げ合うことがすべてである。参加者が相手方のメンバーを目がけて枕を投げ、かつまた、相手方から飛んできた枕をかわしたり、受け止めたり、投げ返したりすることで遊戯が成立する。当然ながら、単に枕を相手に投げても、それが投げ返されなければ、枕投げが成立したことにはならない。
比較的大規模なイベント等で行われる枕投げでは、独自のルールが設定されることもある。たとえば、2001年に兵庫県有馬温泉・岡山県湯原温泉・広島県宮浜温泉で順次開催された「温泉旅館まくら投げ世界選手権」[2]においては、あたかも砲丸投げのように、投擲エリアから着地エリアに向けて枕を投げ、飛距離を競うことを目的とした。しかしながら、これは遊戯というよりは競技であり、一般にいわゆる枕投げの概念とは必ずしも相容れない。
また、海外での「ピローファイト」と称するイベントが「枕投げ」として紹介されることもあるが[3]、これは枕で互いに相手を打擲する方式の遊戯ないし一種の格闘であり、やはり一般的に考えられている枕投げとは異質である。
修学旅行等で行われる一般的な形式の枕投げに関しては、公式大会が開催された実績もなく、また、遊戯を普及発展させようとする全国的な統括団体も存在しない。したがって、これまでに公式なルールが制定されたことはない。実際に、旅館やホテル等で児童・生徒が行う枕投げにおいては、ルールは参加者同士が口頭で簡単に確認するか、または、暗黙のうちに了解されているのが普通である。
物を相手にぶつけるように投げ合うという点で、枕投げはドッジボールに類似している。「3回以上当たったらしばらく枕を投げてはいけない」など、ドッジボールを模倣したルールもまま見受けられる。しかしながら、ドッジボールがスポーツであるのに対し、枕投げは遊戯の要素が大きい。あくまで娯楽として行うものであるから、スポーツマンシップに則るといった基本姿勢もない。たまに卑怯な行為があったとしても、「汚い手を使うな」と非難されるのみで、遊戯自体は続行されることが多い。
一般の球技では、得点を入れるための条件をルールとして設定し、その得点の多少によって勝敗を決する。ところが、枕投げにおいては、得点・勝敗といった、スポーツならば基本的な概念すら曖昧である。ペナルティがあるかどうか、投げる物に枕以外を含めてよいかどうかについてのルールも、個々の場合によって異なる。
遊戯の開始・終了時間についても、ルールとして定められることはほとんどない。参加者に継続意思があり、かつ外的環境が許せば、原理的には何時間でも継続することが可能である(「展開」の「終了」の節を参照)。
このような曖昧なルールによって進行する遊戯であるため、投げ合いを開始してしばらくすると、もはや枕投げとは別種の騒乱と呼ぶべき状況になることも往々にしてある。それだけに、参加者個人に応分の自制が求められる遊戯であるといえる。
以上の4点である。その他、参加者が心おきなく遊戯を楽しむためには、部屋の構造として歓声が室外へ漏れにくいようになっていること、破損しやすいものが室内に少ないことなども期待される。
修学旅行などでは、枕投げが行われる時間は、主に夕方や消灯時間の前後など、教師の監視の目がおろそかになる頃である。この時間に自由時間が確保されることが、枕投げにとって絶対に欠かすことのできない条件である。
多くの修学旅行では、夕方は風呂の時間帯となっているので、遊戯中に参加者が抜けたり入ったりして混乱することがある。他にも、夕食などで中断を余儀なくされることもある。また、宿泊施設によっては、この時間はまだ枕が手に入らないということもあり、必ずしも物的条件は良くない。ただ、寝ている者もなく、興奮している者が多いので、最も人員が確保しやすく、枕投げのやりやすい時間帯でもある。
消灯時間の直前は、十分な人数の参加者と枕が最も容易に確保できる時間帯である。また、この時間は枕投げをしていても教師が黙認してくれる場合があり、枕投げをするには最適の時間である。ただ、あまり枕投げに熱中しすぎて、歯磨きや消灯前の点呼、食器の片付け当番などを忘れてしまう者がしばしばあるので、参加者は互いに注意を喚起し合うことが求められる。
消灯時間後は、寝てしまう者がいるので、人員確保が難しくなる場合がある。また、この時刻は教師の目がより一層厳しくなっているので、声や物音を立てないなど細心の注意が必要となる時間帯である。逆に、あまり神経質になりすぎると、「危険を冒すよりは寝た方がよい」との意見が支配的になって、枕投げそのものが始まらないことや、たとえ始まっても、興が乗らないまま自然終了することがある。これらの点から、枕投げをするには難しい時間である。
枕投げは、旅館の一室で行われる場合が多い。走り回ったりすることを考慮すれば、遊戯場所はフローリングなどよりは畳が望ましい。その上に布団が敷きつめられていれば、消音や、転倒時の負傷防止の効果があり、いっそう都合がよい。
遊戯を行うための広さについての基準はないが、狭い部屋よりは大広間のほうがより適している。というのも、旅館の枕は比較的大形であり、それを投げ合ったり避けたりするためには、一定以上の広さが必要だからである。宿泊先がホテルであった場合、ベッドなどが邪魔になる上、走り回るなどの空間が確保できないので、枕投げを行なうことは極めて困難になる(その場合でも、あえて枕投げを実施する者は少なくない)。
いわゆる陣地は、特に規定されないことが多い。相手方の至近距離から攻撃してもかまわない。ベッドルームであえて枕投げを行う場合は、それぞれのベッドが陣地になることもある。
また、陣地に関してはローカルルール的に、「自分の布団の上で膝立ちをした状態で、布団の外に歩いて出てはならない。布団の上は膝歩きでしか歩いてはならない。枕はそこから手が届く物のみを拾って投げ合う。」というようなルールも存在する。
このルールでは、投げられた枕がいずれの選手の陣地より遠く離れて飛んでいった場合、選手の一人が静かに立ち上がり、そそくさと早歩きで、しかし決して走らずに回収する。そして陣地に戻ってきてまた膝で立ってから、その選手は競技を再開する。回収に立った選手を狙う事は暗黙の了解上殆ど無いが、稀に流れ弾で当たった場合や選手が興奮状態だった場合に発生する。その際、当てられた選手は抗議を申し立て『今のはノーカン(ノーカウント)』と宣言する事がしばしばある。
このルールは、その選手たちの割り当てられた部屋が比較的狭い場合に有効に働く。選手が修学旅行生だった場合、競技の為に部屋を選択するという余地が無いのが殆どである。
このローカルルールを採用する集団は宿泊先が洋間のベッドルームであった場合も同様のルールを用い、その場合、自分のベッド(陣地)の事を便宜上『島』と呼んだりする。
枕投げには、十分な参加者がいることが望ましい。理想的には、例えば、クラスの男子全員、または、女子全員が同室しているといったような状況が望まれる。とはいえ、必要最低限の人数というものは決まっていない。状況が許さない場合、少人数でも遊戯は成立する。例えば、2人での旅行において、宿泊先で相対して枕投げを行うことも十分可能である。
チームはあらかじめ定めてもよいが、一般には自然発生的に形成される。遊戯中に、しばしば、なし崩し的にチーム同士の吸収合併や分裂、参加者の移動が行われる。隣室等から集まってきた者を随時加えることもできる。場所が許すかぎりにおいて、人数の増加は支障がない。チーム編成が1人対多人数になることもあり得るが、この場合、枕投げの遊戯性が低下し、いじめに変質するおそれもある。
枕投げの成否は、主唱者のリーダーシップに左右される面がある。枕投げを行う時間は、多少とも人員確保が難しい時間帯であるから、主唱者は、参加見込みの者に対し、「風呂を早く出るように」「風呂には入るな」などと指導を徹底することが必要である。また、遊戯中は、脱落者がないほどの白熱した展開に持ち込む力量が要求される。
枕投げに参加したくとも参加が難しい者もいる。病気や怪我をもつ者、とりわけ、激しい運動を避けなければならない者や、本来なら入院が必要な状態の者は、遊戯に参加すべきでないし、周囲も参加させてはならない。他方、単に身体能力が高くない(いわゆる運動音痴)、低年齢または高齢であるなどの理由で、希望者の参加を拒むことは望ましくない。例えば、何らかの事情で幼児と同室した場合には、枕をやさしく投げてやるなどの配慮をしつつ、全員が楽しく参加できるようにすべきである。
枕投げのために必要な用具は、ほぼ枕のみである。まれに、それ以外の遊具が用いられる場合もある。以下、それぞれの場合について述べる。
枕投げの枕に求められる条件は、飛距離が出やすく、適度な重量感があり、的中したときに派手な音がすることである。これらの点において最も優れている枕は蕎麦殻枕である。人によっては、長野県飯田市の蕎麦殻を使った枕を特に推奨するが、これは同市が信州蕎麦の名産地であるからという以上の意味はない。実際上は、枕の使用感が蕎麦の産地によって左右されることはほとんどないといってよい。
蕎麦殻の枕を使用する場合、参加者の中に蕎麦に対するアレルギー体質の者が存在する場合もあるので、注意が必要である。また、枕の種類にかかわらず、遊戯中には埃の発生量が尋常でないことから、アレルギーはなくとも、粘膜系が弱く鼻炎などにかかりやすい者は、自主的にその場を離れることが勧められる。
蕎麦殻の枕に次いで適しているのは、短く切ったストロー状のプラスチック(ポリエチレン)を入れたパイプ枕である。一方、パンヤ綿・羽毛・低反発ウレタンなどを中綿にした軽いものは、使用に不適とまでは言えないが、力一杯投げても飛距離を出し難いことや、相手に当たった場合の威力が弱いことから、あまり好まれない。また、年代物の箱枕、中国風の陶製の枕などは、そもそも調達が難しい上、材質が硬いために相手が負傷したり、障子が破れたりするといった事故の危険性が高く、枕投げには適さない。
枕の数は、参加者と同じだけの数が確保されることが望ましい。通常、枕は各部屋に布団とともに人数分が準備されているので、同室者だけで遊戯を行う場合には問題が生じにくい。ただし、他の部屋の者が多人数で遊びに来ている時に突然遊戯が始まるような場合、枕と参加者の数が整合せず、遊戯の円滑な進行に支障を来すこともある。
外泊中に行う枕投げの場合、旅館到着時にすでに参加者が枕を確保していることはまれである。大抵の旅館では、寝具の用意は、客が別室で夕食をとるか、または風呂に入る時間帯になされるので、それまで待たなければならないことが多い。もっとも、旅館によっては布団を敷く作業を宿泊者自身に行わせる場合があり、その場合は、入室時にすぐに押入れを開けて人数分の枕を得ることができる。
枕以外に遊具、とりわけ投げられるものがその場にあるかどうかは、実際に枕投げが行われるかどうかを左右する重要な要因である。林間学校では、ドッジボールやバスケットボールなどが入手可能なので、場合によっては、就寝前などにはこれらを用いた遊戯が行われ、枕投げに至らないこともある。臨海学校においてビーチボールなどが入手できる場合も同様である。
座布団は、大抵の旅館に常備されているが、枕の代わりに投げるということは少ない。これは、枕投げが寝具の支度がなされた後、すなわち座布団が1箇所に片付けられた後に行われることが多いことによる。
ただし、参加者がエキサイトしたり、チームの人数が劣勢であったりする場合には、部屋の隅の座布団があえて使用されることがある。具体的には、
とはいえ、座布団を連続して投げた場合、通常では考えられない状態で室内に散乱するので、教師などの監督者が巡回してきた場合、容易に見つかり、何らかの処罰を受けるリスクが高まる。また、特にブーメラン式に投げられた座布団は、軌道が不確定なので、調度・障子・襖(ふすま)などを大きく破損したり、参加者または傍観者を負傷させたりする事態にもつながりかねない。したがって、遊戯の進行が順調で、参加者の判断力が確かであるうちは、座布団を枕の代替物にすることは避けられるのが一般的である。
枕投げが開始されるためには、上記の条件が満たされることに加えて、その契機が必要である。大きく分けて、主唱者の開始宣言が契機になる場合と、誰かが突然枕を投げたことが契機となって始まる場合とがある。
前者の場合は、主唱者を中心に、事前に枕投げを行うことが合意されており、同室者の全員が目的意識を共有しているのが普通である。遊戯開始前に、すでにグループに分かれて待機していることも多く、開始後はきわめて順調に展開する。
後者の場合は、最初の一撃を行う者の行動がきわめて重要になる。同室者たちが、雑談やゲーム・漫画など他のことに熱中している場合、唐突に枕を投げたとしても、相手に軽くあしらわれて終わってしまうこともある。また、相手を激怒させ、喧嘩に発展し、遊びどころではなくなることもある。同室者の誰もが、暗黙のうちに枕投げへの期待感をふくらませている時に、誰かがその雰囲気を機敏に察知して、最初の一撃を行うことが求められる。一撃が絶妙であった場合、何かが爆発したように遊戯が開始し、白熱する。
枕投げの開始の様態がどのようであったにせよ、遊戯が白熱してくれば、秩序はほとんど崩壊する。遊戯の主唱者であったかどうかというようなことは関係がなくなる。当初、「枕投げは幼稚である」「早く寝る必要がある」などとして実施に反対していた者が、かえって異常に発憤し、狂態の限りを尽くすということもまれではない。
枕投げの終了については、明確な条件はない。参加者が飽きることで起こる自然脱落、外部からの遊戯の停止命令、遊びの範囲からの逸脱による負傷や器物損壊などのために終了することが多い。
参加者の飽きによる終了は最も普通に観察される。飽きる理由としては、参加者の疲れや眠気、遊戯内容の単調化、参加者数の減少などが挙げられる。
外部からの停止命令としては、典型的なものは教師など監督者による注意である。教師以外でも、団体での共同宿泊では、団体の監督者が枕投げの参加者に終了を命ずることがある。注意に至る状況としては、
以上のような問題が発生しやすいことから、学校における修学旅行では、明示的にではないが枕投げが禁止されていることがある。教師は、就寝時刻以降、各部屋を巡回して、枕投げその他の遊戯にふける者がいないかどうか確認し、適宜注意を行う。枕投げの参加者は、教師からの呼出しや注意を恐れているので、他室の者などから教師に密告されることを非常に忌み嫌う。また、教師の側としても、密告した者とされた者との間の人間関係などにも気を配る必要が生じ、ただでさえ煩雑な旅行中の仕事が増えるので、密告を受けるような事態はできれば避けたいところである。全員が真面目に枕投げをしないで寝るか、全員が共犯関係にあって枕投げの事実を表に出さないような状態であれば、教師は手がかからない。
遊戯があまりに白熱しているような場合には、しばしば負傷者の出ることがあるため、注意が必要である。参加者の中に眼鏡またはコンタクトレンズなどの着用者がいる場合は、特に注意しなければならない。負傷者が出た場合、当然ながら遊戯続行は困難となる。
軽度の負傷は、鼻血が代表的な例である。枕が顔面を強打した場合、また枕を避ける際に柱などに顔面を打ちつけた場合に起こる。前者の方がより起こりやすく、負傷の状態はより軽度である。後者は起こりにくいが、負傷の状態はより重度になるおそれが高い。枕で負傷した場合をより細かく見れば、枕が固かったとき、枕にファスナーなどの金属がついていたとき、枕が近距離から投げられたとき、枕にスピードが付いていたときなどがある。
鼻血の事故によって遊戯が終了となるかどうかは、鼻血の噴出量、服・枕・布団などへの付着の多少、および負傷を負った人間の精神状態によって変わってくる。鼻血の噴出が少量であれば、遊戯をいったん中断し、負傷者の鼻にティッシュペーパーを詰めた上で再開されることが多く、服や枕・布団などに鼻血が付着した場合は終了となる可能性が高い。
中度の負傷は、突き指が代表的である。枕を近距離で指に受けた場合や、枕を投げる際に壁や柱などに指を強打した場合に発生する。また、床・柱などへの激突による打撲や裂傷、転倒による捻挫なども多く発生する。ただし、突き指や打撲・捻挫などの場合は、負傷者が戦線を離脱した後、遊戯自体は続行するケースが多い。
重度の負傷として、きわめてまれではあるが、壁面や他の人物などへの正面衝突に伴う昏倒が発生する場合がある。遊戯が佳境に差しかかり、参加選手がアドレナリンの過剰放出に伴う異常な興奮状態にある場合、このような事故が起こりうる。負傷を受けた選手は、興奮状態になっているので、往々にして出血したまま遊戯を続行したり、けたたましく笑い転げたりするなど特異な行動を見せることがある。他の選手がそれによって心理的ショックを受け、遊戯が中断することも多い。
言うまでもないことであるが、負傷が中程度以上、ことに生命の危機にかかわるような場合には、迅速な救護が必要である。中でも、破損した窓ガラスの破片などによる多量の出血、眼鏡・コンタクトレンズの破損などによる眼の負傷、蕎麦殻枕での蕎麦アレルギー、枕や布団の埃による気管支喘息、激突による骨折などが起こった場合は、人命を最優先して速やかに監督者に知らせ、必要に応じて救急医療機関にも通報すべきである。
あまりに激しく枕投げを行っていると、枕本体が壊れることがある。蕎麦殻枕やパイプ枕の場合には、粒状の内容物が散乱し、収拾のつかない事態が生じる。室内全体に内容物が飛び散った場合は、清掃のために予想外の時間が必要となり、睡眠時間が少なからず削減されることもある。
さらに深刻な場合として、投げた枕によって障子・襖・行灯などが損壊することがある。こうなると、事の重大さによって、枕投げどころではなくなってしまう。宿泊施設の側から賠償責任を問われ、金銭的な損失を免れない。かといって、損壊した器物を一時しのぎに隠蔽したりすると、発見時に責任をより厳しく問われることとなるので、損壊した者は、ありのままを正直に監督者に申告するのが賢明である。
器物を損壊した場合、枕投げの参加者は、監督者によって以後の旅行中の行動を制限されたり、旅行中または後に反省文を書かされたりするなどの罰を受けることになる。当事者の精神的打撃は量り知れない。また、当事者同士が責任のなすり合いをしたりして、楽しいはずの枕投げがかえって人間関係を壊し、各人に後々までトラウマを残すおそれもある。
参加者は、遺憾な結果を招かないように、枕投げの最中には、常に周囲に気を配る必要がある。これは、熱狂を追求する枕投げという遊戯の本質とは両立しない部分もあり、参加者の悩みの種になる。とはいえ、危険を回避するため、遊戯中に不断に努力することによって、参加者が知らず知らずのうちに社会に配慮することを学んでいる面があることも無視し得ない。
遊戯中に、非常ベルやその他のスイッチ類に枕が当たることもある。それによってベルなど鳴り出すといった事態が発生すると、宿泊施設全体が騒然として、枕投げの続行が困難になる上、監督者によって上述のような罰を受ける結果に終わるおそれが高い。これを防ぐためには、枕投げ開始の前に予めスイッチ類の場所を確認しておくことが望ましい。
枕投げという遊戯にどのような意義があるかについては、これまでほとんど論じられたことがない。教育現場では、枕投げを積極的に教育に取り入れているという実践報告はほぼ皆無といってよい現状である。枕投げと同様、投擲を要素とする実技のうち、ボール投げについては、スポーツないし体育の立場からすでに膨大な研究・実践報告がある。ボール以外でも、たとえばタイヤ投げについては四海久富の研究がある[4]。また、修学旅行との関連でいえば、スノーケリングを取り入れた実践報告なども存在する[5]。しかしながら、枕投げについての報告は目下のところ見出しがたい。こうしたことから、教育関係者の間において、枕投げの意義はほとんど見出されていないと判断せざるをえない。それどころか、集団行動を維持する上では害になると考えられている節もある。
遊戯の当事者である児童・生徒は、枕投げに夢中になっている以上は、なにがしかの意義を感じていることが推測される。枕投げが世代を超えて一定の広がりを見せ、また、全国的にも広がっていることを考えれば、常識的には、「単純におもしろい」「スリルがあって楽しい」などの意義が当事者間で共有されているものとみられる。しかしながら、現状では、枕投げの当事者に対する客観的な聞き取り調査等も実施されておらず、当事者の意識にどのような傾向がみられるかについては不明である。かつて枕投げを経験した成人についても、やはり信頼に足る調査は行われていない。
ある者は枕投げを外泊の楽しみの最たるものとして枕投げに興じれば、ある者は宿泊施設という日ごろ親しんだ遊具の無い環境では枕投げしかする事が無いという消極的な理由で枕投げに興じる。しかし積極的と消極的という差はあれど、枕投げに興じる者は多い。そして積極的と消極的という差は関係なく、競技は白熱し充実する。
結局のところ、枕投げは、公的に意義が付与されているとは言い難く、当事者自身の意識もなお不明な部分が多い。児童・生徒の間では広く秘かに支持され、世代と地域を超えた遊戯であることはほぼ確実であるが、遊戯の意義付けを含め、包括的研究についてはなお後考に待たなければならない。
^ 『読売新聞』西部夕刊 2004年1月22日付「懐かしの修学旅行再現 ガイドは濃紺・白襟 食事はカレー・給食/西鉄観光バス」。なお、枕投げの要望についてバス会社社長は「こればかりはねぇ」とコメントしている。
^ 四海 久富 (1992)「体育教材の価値に関する研究(2)―投運動教材(タイヤ投げ)を中心として」『教育学研究紀要(中国四国教育学会)』2-37。
^ 宮崎 明世 (2006)「修学旅行におけるスノーケリングの取り組み―2005年度修学旅行の実践から」『筑波大学附属高等学校 研究紀要』47。

[ 155] 枕投げ - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%95%E6%8A%95%E3%81%92

パイ投げと呼ばれる行動では、パイ皿ないし紙皿にホイップクリームを大量に盛ったものを投げつけることが多い。近距離であれば顔に向かって平手気味に叩きつけるのが一般的である。『トムとジェリー』などのスラップスティックコメディのドタバタでしばしば行われるが、政治家や有名人に対する抗議、あるいは単なる悪戯や遊び目的で行われることもある。
スラップスティックコメディにおいてパイ投げ大会は、突発的におこるものである。不意をつかれパイを投げつけられると、その人物の顔に白いクリームがたっぷり附着して、それまでのすました顔がとたんに喜劇的なものとなる。大体、その姿を見て笑っているものが、第二の標的になる。スラップスティックコメディでは、投げつけられた人間もいずこかからパイを取り出し投げ返すので、途端にパイ投げ合戦に発展し、混迷を極める事態に陥る。争いが始まって、投げあう人の中には、パイを両手に持って走り回りながら投擲する対象を追いかけるものもでてくる。
そうしたコメディ作品内のみにとどまらず、実際にこれを楽しむ愛好家もいる。この場合、しっかりした準備の下パイ投げをとり行う必要がある。
パイ投げで用いられるパイは、食用のものとは少々異なり、大抵はパイ皿に白いホイップクリームが大量に盛られている。直径は15 - 30cm程度。形状は四角形や三角形や星型などのものはあまりなく、円形が主流である。
パイ投げを撮影する際には、本物のパイを使うこともあるが、調達や見栄え、後かたづけの手間を考え、食用のホイップクリームの代わりにシェービングクリームを盛りつけてあることが多い。
使用されるパイ皿だが、安価に済ませる向きでは紙皿を利用する。ただし金属製のパイ皿は重く、人にぶつかると大変危険である。陶器製のパイ皿も固い上に割れるため、同じく危険である。場合によってはクレープの皮のようなものにクリームを盛る事もある。ケーキのスポンジにクリームを盛る事もあるが、こちらはややコストが掛かるため、豪勢な遊びといえよう。
シェービングクリームを使ったものは主に喜劇用で、パーティー等の余興では食べられるクリームを使う場合が多い。もちろん、腹が空いた時は手に持ったパイを食べても構わないが、競技の趣旨から言えば、顔面に投擲されたパイのクリームを舐め取ったほうがより滑稽で、適していると思われる。
なお、アツアツのピザパイはパイ投げに使うべきではない。火傷の恐れがあり大変危険なので、間違っても、これを投げてはいけない。
パイを投げる際のパイの位置関係についても注意を払う必要がある。フリスビーのように地面と水平に投げると、パイ皿の端が相手にぶつかることになり危険を伴う。そのため、接触面積の大きいパイの上面が相手にぶつかるよううまく狙いをつけて投げなければならない。
パイ投げに参加した人間は、顔面のみならず体中にクリームが附着して服がひどく汚れてしまうので、事後のクリーニングは必須である。従って、パイ投げに臨む人間は、一張羅ではなく汚れても構わない服装をしておくべきであろう。またパイ投げは屋外でやるほうが後始末が楽だが、屋内で行う場合は、汚れに弱い調度品は適切なカバー等が必要であろう。他にも、飛来物で破壊される危険性のある物品は、予め室内から出しておく事が奨められる。
だが、スラップスティック性という面では、正装であるほど・澄ました格好をしているほどに喜劇性が向上する。このため洗濯しやすい(汚れの落ちやすい)化学繊維製の燕尾服やドレスといった、普通の正装では見られない専用の着衣もあるもようで、バブル景気の日本ではイベント向けにパイクリームやパイ皿とセットで乱痴気騒ぎ用にレンタルする業者がいたとする話も聞かれる。
相互に投げ合って楽しむ場合には、あらかじめ汚れても構わない配慮が徹底しやすいが、特定個人を揶揄・批判したりする場合に、事前の打ち合わせ無しにこれらパイを投擲した場合には、標的と成る人物の着ている衣服を場合によっては弁償させられる場合がある。少なくとも着ている服のクリーニング代を請求される覚悟も無く投げ付けてはいけない。
一方で、あらかじめクリーニング代金を封筒に入れて用意してから、パイを投擲する場合がある。これらでは事前ないし事後にこの封筒を手渡す事で、ジョークであるので許して欲しいという意図が伝えやすい。だが抗議の意図を込めて・ないし愉快犯として投擲する場合は、クリーニング代金を考慮せずにぶつける人もいる。例:1998年2月、被害者ビル・ゲイツ、2000年8月、被害者ジャン・クレティエン。
1914年、サイレント映画監督マック・セネット(Mack Sennett)が『キーストン・コップス』シリーズの映画でパイを投げさせたのが始まりである。その後パイ投げはエスカレートし、1927年のローレル&ハーディ(Laurel & Hardy)による映画『The Battle of the Century』では、1,000個のパイが投げられたと伝えられる。パイ投げはマルクス兄弟や3バカ大将(Three Stooges)らのスラップスティックコメディの定番ネタであった。
1970年代 - 1980年代にテレビの娯楽番組(日本テレビ系『元祖どっきりカメラ』やフジテレビ系『ドリフ大爆笑』、TBS系『8時だョ!全員集合』など)で折に触れてスラップスティックコメディの一環として披露し、視聴者の笑いを誘っていたが、PTA、保護者、良識人、識者からは食い物を粗末に扱う行為であると指弾されるなど、専ら非難の対象となった。欧米諸国では競技・遊びの一つとして認識されていること、また、パイ投げに用いられているのはシェービングクリームである事などは敢えて報道される事はなかった。これは、同じく食品を食用以外の行為に用いるビールかけやシャンパンかけに対する態度とは、対照をなす。
以前はテレビ以外でも、結婚披露宴の余興や学園祭の模擬店等のイベント事でパイ投げがよく行われた。またバブル期には、ぶつけられ役になる人間をパーティー会場に派遣するサービスも見受けられた。一般では、ぶつけられ役になるのはほとんど男性で女性にパイをぶつけるのはほとんど皆無であった。
1990年代より以後パイ投げは影をひそめ、2000年代前半まで娯楽番組の中で見られる事も殆ど無くなった。
2000年代になると、一度はすたれたパイ投げに興味を持つ人が増え、山内崇嗣(アーティスト)、深瀬鋭一郎(キュレーター)、ピンクローターズ・栗戸理花らにより東京・青山の路上で『青山路上パイ投げ大会』が白昼堂々繰り広げられ報道されたことをきっかけに、再度あちらこちらで行われるようになった。『ハロー!モーニング。』で松浦亜弥のコンサートなどのスタッフが誰かが誕生日を迎えたときにパイ投げをする恒例行事があると話した。 2005年ごろから、テレビ朝日系『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』やフジテレビ系『SMAP×SMAP』でのゲーム企画及び罰ゲームやフジテレビ系『志村けんのバカ殿様』のコントなどで、娯楽番組でのパイ投げが徐々に復興し始めた。

[ 156] パイ投げ - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E6%8A%95%E3%81%92



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