この頃とは?
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今年の夏は例年になく暑さが厳しかったせいか、爽やかな秋の訪れにほっとしています。若い皆さんはこの暑さの中でも、海や山へ出かけたり、部活やアルバイトに汗を流したことと思います。今年度から前期試験が夏休み前に行われるようになり、これまでとは違って夏期休暇を存分にエンジョイできるようになりました。後期の授業が始まりましたが、エンジョイしすぎたせいか教科書を開いても、講義を聴いてもちんぷんかんぷん。頭の中は空っぽで、パニック状態の人もいるのではと心配しています。そこで、今回はこのパニックについてのお話です。 もうずいぶん昔のことですが、「どこも具合が悪くないのに、何もしないで家でぶらぶらしている。」と、業を煮やしたお父さんが20歳代半ばの青年を連れてこられました。このAさん、2年前までは原子炉の点検修理という危険な仕事に従事していたのですが、ある時から胸が突然苦しくなる発作が起きるようになりました。何度か病院で精密検査を受けましたが、どこも悪くないと太鼓判を押されてしまいます。しかし、「あの発作がまた起きるかと思うと、とても外には出られない。」と、Aさんは話します。「発作が起きたとき・・・、このまま死んでしまうのではと急に怖くなって・・・。そうこうするうちに、ますます具合が悪くなって・・・。」発作全容の記憶は朧気なのですが、発作に対する恐怖は心にしっかりと根付いていました。 Aさんはパニック障害と診断されたのですが、この病気は1980年代後半から日本でも徐々に注目されるようになりました。発作中は心臓が高鳴り、冷や汗がでて身震いし、また息が詰まりめまいがするなど、様々な身体の異常が出現します。さらに、Aさんのようにこのまま死んでしまうのではないか、あるいは気が変になるのではないか、という強い恐怖感が伴います。このような発作が日に何度も起きることもあれば、数週間に一回ということもあります。発作は長くても1時間程度で治まり、数時間続くことは稀です。 実はこの発作は、パニック障害だけに特有の症状ではありません。何か具合の悪いことが生じると、その原因はある程度予想がつくものです。テスト中に頭が真っ白になったら、日頃の授業態度を反省させられます。そして、同じ失敗を繰り返さないために、対策を立てることができます。しかし、パニック障害の患者さんにとって発作の出現はまさに晴天の霹靂、今風にいえば「えっ!なんで?」なのです。そのため、患者さんは予期できない発作を怖れるあまり、誰にも助けてもらえそうにない状況を頑なに避けるようになります。 さてAさんの治療にもどりますが、「これはパニック障害という病気であり、発作によって死ぬことはない。発作の再発を防ぐ良い薬があり、この薬を飲めが発作が起こらなくなるので、外に出る訓練をしなければならない。」ことを十分に説明しました。Aさんは抗不安薬のalprazolamと抗うつ薬のanafranilの服用を開始し、程なく飼い犬のポチを警護役に当てて外出を繰り返すようになりました。そのうちにポチはお役ご免となり、「親父を乗せて下関に行って来ました。」、「一人で博多に行って来ました。」と、受診する毎に家からの距離が伸びていったのです。Aさんが車のディーラーに再就職したのは、それから間もない頃のことでした。 パニック障害は、2〜3:1の割合で女性に発現しやすいといわれています。患者さんは20歳代半ばから40歳代半ばの人が最も多いのですが、初発年齢の割合は10歳代後半が高いとの分析結果が出ています。余談になりますが、従来パニック障害は不安神経症の一型として、神経症の中に位置付けられてきました。しかし、患者さんに乳酸を注射したり二酸化炭素を吸入させると容易にパニック発作が発現すること、精神分析理論に基づいた治療よりも薬物療法や認知・行動療法が好成績であることから、「パニック障害を、無意識の葛藤に原因があるとする力動精神医学の神経症概念だけから捉えようとするには無理がある」ことが、徐々に認識されるようになってきました。もし皆さんに思い当たるような症状がありましたら、一度保健管理センターに相談に来てください。 |
[ 143] パニック障害、今日この頃
[引用サイト] http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~hoken/03healthmente/hirano-dr/hirano-7.html
