気分とは?

いい気分は、それ自体が幸せなだけでなく、次の幸せにつながりやすくなります。 気分はコントロール可能です。自分の気分に気づけ、気分をよくしようと思えば、気分を変える方法はいろいろあります。
「気分よく生活する」ことには、「気分をよくする」ことと「イヤな気分で過ごさない」ことの2つがあります。
イヤな気分が続くのは、考えていることが原因である場合がほとんどだと思います。イヤな気分で過ごさないためには、まず自分のイヤな気分に気づき、考え方を変えるように心がけることが第一だと思います。「まぁいいか」「気にしてもしょうがない」「もっといいことを考えよう」などと簡単な言葉で気分を変えられることも多いと思います。
この(出来事・人・問題などの)ことを考えるとどうしてもイヤな気分になってしまう、ということがあります。反対に、この(人の)ことを考えるいい気分になれる、ということもあります。「こんなことを考えるより、○○のことを考えよう」のように考える対象を選ぶことで、気分よく過ごすことができます。
イヤなことがことがあったのは、「許せない。××のせいだ」と思うと、そのことがなかなか頭から離れなくなりがちです。「こういうこともある。まぁいいか(いい経験だと考えよう)」と思えれば、すぐに忘れることができます。
人のことを考える時には、その人のイヤなところ・悪いことを考え出すと、次から次へとイヤなことを思いつきます。「でも、こういういいところ(してくれたこと)もある」と考えられれば、ひとまず気もちは落ち着くと思います。
気分よく過ごすためには、どんなことをどんなふうに考えるかが、実はすごく大きいと思います。そして、それはほとんど習慣になっています。結局いつも書いているように、少しずつ、1つずつ、幸せになる考え方をできるように心がけていくしかないと思います。
何かを「視る」ことで気分を変えることができます。私は、外を歩いている時、花や緑や空を視ることでいい気分になれます。花って探してみると意外にあるんです(幸せと同じように)。最近は庭先に花がある家も多いし、道端の雑草の花もあります。私は、朝日や夕焼けや夜空の星を視るのが好きです。私は、人を視るのも好きです。
音楽は気分を変えるのには、いちばん簡単で有効なような気がします。私の生活の中では、音楽が重要な役割を果しています。また、気分を変えるのに音楽を使います。自分の幸せな気分になれる歌、元気になれる歌、やすらかになれる歌などをもっていると意外に簡単に気分よくなれますよ。1日の中には、好きな歌を鼻歌しながら、お気楽に過ごす時間があってもいいのではないでしょうか。
気分は、何かをイメージすることでも変えることができます。鼻歌や頭の中の音楽もイメージだと思います。いい風景のイメージや好きな人のイメージやいい将来のイメージでも、いい気分になれます。
イメージするだけなら、少しの時間があれば、何もなくてもどこでもできます。少しでも気分がよくなれば、それをあとに続けることができます。
「気分をよくし続けなければいけない」などと考えたら、そんなことはできないし、逆にプレッシャーになってしまいます。
悪い気分に気づいた時には少しでもラクになれるよう気分を変え、ふつうの時にはいい気分になれることをすればいいのです。
ある程度いい気分になれたら、そのまま何か(できればいいこと)を始めればいいのです。悪い気分でするのといい気分でするのでは、ずいぶん違います。始めたら、そのことに集中したり愉しめばいいのです。
生活することとは、いろいろなことをすることです。生活の中のいろんなことが気分よくできれば、それが気分よく生活することになります。そうするためのステップとして、少しでも気分をよくしてから何かを始める方法があります。
そして、生活の中の1つ1つのことを幸せな気分になるような態度で生活することを心がけることができれば、と思います。
気分は次にすることに影響を与えます。ちょっとした気分転換や、1つ1つのことを気分よくやることを、生活の中で自然にできるようになることが、いい気分の連鎖を生むのだと思います。そういうことが「気分よく生活する」ことだと思います。
気分をよくする方法はたくさんありますが、私は「体を動かす」ことが有効だと思います。気もちよくなれる体の動かし方がいろいろあります。
いちばん簡単な方法は呼吸です。深呼吸することで落ち着けたり胸やお腹のあたりがスッとしたりします。私は、たまに口をすぼめてゆっくり息を吐くことがあり、友達に「なにため息ついてるの?」と言われることがあります。また、あくびのマネをすることがあり、マネのつもりがほんとになってしまうこともあります。
もう少しちゃんと体を動かす方法なら、ストレッチングや肩の上げ下げは簡単にできて、それなりの効果があると思います。
私は、気分がよくない時には、時間があればとにかく歩きます。30分くらい歩けば相当に気分よくなれます。その間にいろいろなものを見たりいいことを考えたりするので気分はいいのですが、ある程度歩くとすごく気もちよくなるんです(ウォーキングハイ?)。
悩みや大きな問題がある時には、ともすると部屋に閉じこもりがちになりますが、体を動かさずに考えてばかりいると、どんどん気分が悪くなり悪い考えをしやすくなります。そんな時にはちょっと億劫かもしれませんが、とにかく外に出て歩き出してみれば、気分転換ができ、慣れれば気分よくなれると思います。私の場合には、歩きながらだといい考えが浮かびやすいということもあります。
顔を洗うでも、歯をみがくでも、トイレにいくでも、体を動かすことが簡単な気分転換になります。考え方で気分転換をする方法よりも、簡単で効果があると思います。
「気分を出す」って言葉がありますよね。気分って出せるものなんです。どうやって出すかっていうと、いろいろあると思うんですけど、「その気になる」とか「そういう気分になったつもりでやる」とか「それらしく振る舞う」っいうのがふつうだと思います。
私は、気分を変えて行動することをします。やってみると意外に簡単にできると思います。そのやり始めは「楽しい気分でやろう」などのかけ声からです。すがすがしい気分で、落ち着いたイメージで、やすらいだ感じで、やさしい気もちで、さっそうと、カッコよく、幸せな気分で、・・・自分の好きな気分、その時に合った感じを出せばいいわけです。
気分を出したほうがうまくできたり愉しめたりするような気もします。少しの時間、少しの気分でも、そういういい気分で過ごせる時間を持てるだけでも、少しは幸せになれたような気がすると思うのですが。
いくら気分よく過ごそうと心がけていても、気分が悪くなってしまうことはあります。それはしかたがありません、にんげんだもの。
しかたはありませんが、気をつけなくてはいけないことがあります。それは「悪い気分に流されない」ことです。
「カッとなって」「ムカついたから」など感情を爆発させて、悪いこと・取り返しのつかないことをしてしまうことがあります。「イライラして」「むしゃくしゃして」「ストレスがたまって」など悪い気分を押さえられずに、よくないことをしてしまうこともあります。「つらくてガマンできなくて」「何かを忘れたくて」「どうでもよくなっちゃって」などイヤなことから逃れようと、しなくもいいことをしてしまうこともあります。
それには、まず自分の悪い気分に気づけることが必要です。気分よく暮らそうという心がけを続けていれば、だんだん気づけるようになれます。
そして、自分の悪い気分に気づいたら、とりあえず立ち止まる。「まてよ」と今の考えをストップする。これは「悪い気分のせいじゃないか?」と考えられればOKです。
気分が悪い時には、自分の考えを鵜呑みにしないで疑ってみる「気分が悪いからこんなことを考えてしまったのではないか?」。
気分が悪い時には、行動は控えめに。衝動にかられても「気分が悪いからだ。ガマン、ガマン」。押さえられそうになかったら、その場を離れよう。それができなければ、心の中で、ただ「ハオハオ」と繰り返す。
方法が思い浮かばないのは、まだ慣れていないからだと思います。それと、自分が気分よくなれる方法のレパートリーが少ないからではないでしょうか。
何か試してもあまり気分がよくなれないのは、その方法がその時に合っていないか、自分に合っていないか。もしくは、もうひと工夫足りないか、上達していないからだと思います。
気分よく過ごすことをつい忘れてしまうのは、まず意欲が足りないような気がします。どこかに書いておくとか、目印を置くなどの工夫もできるはずです。忙しいのかもしれませんが、時々はちょっとした心の余裕を持つことは可能だと思います。
気分よく過ごす心がけが続かないのは、あきらめが早いのではないでしょうか。すぐにうまくできなくても、それは当たり前です。少しでもいい気分になれたら、それを喜ぶことが大切だと思います。はじめは気分よく過ごすことを意識して生活するのは疲れるかもしれません。慣れていないからもありますし、力が入り過ぎているからだと思います。少しずつ、1つずつと心がけと工夫を続ければ、必ず慣れてラクにできるようになれます。それがいつしか習慣になって、自然にできるようになります。
気分よく過ごそうと意識し、ここで書いたことなどをヒントにして、何かを試してみれば、きっと少しは気分よくなれることがあると思います。ある程度できたら、それでいいのかもしれません。たまに思い出した時に、気分よく過ごすことを意識するのでもいいように思います。
カゼやお腹の具合が悪いなどの時、歯が痛い時、二日酔いの時などは、なかなか気分よくは過ごせません。疲れている時、睡眠不足の時、寝過ぎの時なども、気分が悪くなりやすい。不規則な生活、テレビゲームやネットのやりすぎ、運動不足なども、なんとなく気分が悪くなってしまいます。
気分が悪い時には、「体調が悪いからかな?」と自問してみるといいと思います。「体調のせい」とわかれば、対策を考えることができます。また、体調が悪い時には悪い考えをしがちなので、「体調のせい」と考えられれば、悪い考えに従わなくてすみます。
体調は万全に越したことはありませんが、しかたがないこともあります。体調が悪い時にはそれなりの過ごし方があると思います。体調がよくないと気づいていれば、それもある程度は可能だと思います。
気分よく生活するためには、体調に気をつけて生活することも重要です。また、気分よく過ごすことが体調をよくすることにもつながると思います。
気分よく生活するためには、1つ1つのことを少しでも気分よくできるように心がけること、イヤな気分には早めに気づき気分を少しでもいいほうに変えようと試みること。そしてもう1つは、1日の中で少しでも気分のいい時間を持つことだと思います。 気分のいい時間を持つためには、自分が好きなこと・幸せになれることを考え・するのがいちばんだと思います。
「悩みや問題があるから、気分よくなんて過ごせない」ではなく、「悩みや問題があるから、気分よく過ごす時間を持ったほうがいい」と考えられたら、と思います。 「いい気分」というのは「(小さな)幸せ」だと思います。
「いい気分で過ごす」ことは「幸せに過ごす」ことです。ここで書いた「いい気分」を「幸せ」、「気分よく」を「幸せに」に読み替えてみてもいいと思います。

[ 117] 気分よく生活する
[引用サイト]  http://www.din.or.jp/~honda/diary052.htm

気分障害とは、文字通り気分が沈んだり、「ハイ」になったりする病気です。以前は感情障害と呼ばれていましたが、泣いたり笑ったりする「感情」の病気というよりも、もっと長く続く身体全体の調子の病気という意味で、気分障害と呼ぶようになりました。病気がひどい時に、一時的に妄想や幻聴などの精神病症状がでることもありますが、いわゆる精神病には含まれません。
気分障害には、大きく分けて2つの病気があります。1つはうつ病、もう1つが双極性障害(躁うつ病)です。
(注: その他に、気分変調症、気分循環症、抑うつ気分を伴う適応障害、器質性気分障害、内科疾患に伴う気分障害など色々ありますが、ここでは代表的な2つのみについて解説します。)
うつ病は、ストレスにさらされれば誰でもなる可能性がある、という意味で、よく「心の風邪ひきのようなもの」と言われます。実際は、風邪ひきよりはもう少し重い病気と考えた方が良いでしょう。軽くてインフルエンザ、重ければ肺炎くらいのイメージです。放置すれば命にかかわることもありますが、きちんと治療すればほとんどの場合すっかり良くなります。
悲しいことがあったり、大きな失敗をしたときなどは、誰でも食欲がなくなったり眠れなくなったりしますが、うつ病はこれがひどくなって、そのまま治らなくなってしまった状態です。どの位ひどければ病気と呼ぶのか、一概には言えませんが、「1日中続き、どんなにいいことがあっても改善しないような嫌な気分(抑うつ気分)」または「それまで興味のもてたどんなことにも興味がなくなった状態(興味喪失)」のうちの少なくともどちらかがあって、5つ以上の症状が2週間以上続いた時に、うつ病と診断することになっています。
うつ状態と躁状態が出現する病気です。躁状態だけの人も、いずれうつ状態が出てくることが多いので、双極性障害とほぼ同じ病気と考えて構いません。双極性障害は、100人に1人位しかかからない病気で、誰でもなりうる「うつ病」とはだいぶ違います。いったん治っても、放っておくとほとんどの人が数年以内に再発するので、生涯にわたる予防療法が必要になります。
うつ病の主たる原因はストレスです。ストレスにさらされると、これに立ち向かうホルモン(副腎皮質ホルモン)が分泌されますが、普通は「フィードバック機構」が働いて次第にストレス反応が止まります。うつ病になるとこれが止まらなくなってしまうのです。また、うつ病になると、脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどが不足すると考えられています。強い持続的なストレスにさらされたら、ほとんどの人がうつ病になりうると考えられますが、ストレスに対する弱さには個人差もあります。ストレスに対する弱さは、生まれ育った環境などによって決まるようです。幼い頃に両親をなくすといった体験をすると、セロトニン神経の発達が悪くなり、うつ病になりやすくなります。
双極性障害の主たる原因は、遺伝的な体質により、セロトニンなどの神経伝達物質に対する過敏性があり、そのために、これらの神経伝達が不安定になることだと考えられます。ただし、遺伝病とは異なり、こうした体質を持っていても病気になるとは限らないし、むしろこの体質には良い面もあるかも知れません。ストレスは発症のきっかけにはなりますが、直接の原因ではありません。
うつ病、気分障害という名前から、どうしても気持ちだけが落ち込む病気かと思ってしまいますが、実際はもっとからだ全体の調子が悪くなってしまう病気です。
うつ病になると、一日中嫌な気分が続き、朝起きた時が一番ひどく、どんなに好きなことをしても全く気が晴れません(抑うつ気分)。食欲がなくなり、好きな食べものを食べてもおいしいと思えず、まるで砂をかんでいるような感じで、食がすすまないので体重がどんどんやせていきます。夜は寝付きが悪い上に、夜中に何度も目がさめ、朝は暗いうちから目が覚め、眠れないままにふとんの中でもんもんと過ごします。動作や頭の働きも、いつもよりゆっくりになってしまいます(制止)。いつもなら決断できることが、迷ってしまってなかなか決められません。本を読もうとしても、同じ行を何度読んでもいつものようにすらすらと頭に入りません。それどころか、仕事も、家事も、趣味さえも、とにかく何かをしようという意欲はまったくわいてきません。いつも楽しみにしていテレビや、毎朝読んでいた新聞にも興味がわかず、とにかくやり場のない苦しみに一日中苦しんでしまいます。何をしていても気持ちが落着かないので、ため息をつきながら、立ったり、座ったり、うろうろしたりと落着かなくなることもあります(焦燥)。何を考えても悪いほうにしか考えられず、自分は今まで何の役にも立ったことがないだめな人間だ、としか思えません(微少念慮)。これが高じると、自分は生きる価値のない人間だとしか思えず、死にたくなってしまいます(希死念慮)。
こうした症状のうち、2,3の症状が4,5日続く、ということは、肉親の死などの強いストレスにさらされた時にはよくあることですが、このうち5つ以上が2週間以上というと、そうそうあることではないとわかっていただけるでしょう。
うつ状態がひどくなると、こうした症状が極端になり、「恐ろしい罪を犯した」「決して治らない身体の病気にかかった」「家が破産した」など、ありもしないことを信じ込む症状(妄想)や、こうした内容の幻声まで聞こえてくることもあります。こうした場合、「精神病症状を伴ううつ病」と呼びます。
躁状態では、気分は爽快で楽しくて仕方がなく、夜はほとんど寝なくても平気で、疲れを知らずに活発に活動します。多弁で早口になり、ほとんど口をはさめません。豊かな連想、素晴らしいアイデアがあふれるようにわいてきます。自分は周囲から尊敬されている素晴らしい人間だと確信して(誇大性)、突然選挙に出ようなどと言い出します。 最初のうちは、仕事がむしろはかどるかもしれませんが、あっという間にひどくなり、ちょっと口をはさむだけで怒り出します。色んな考えが浮かぶので、すぐに気が散り集中できません。誇大性が高じると、「超能力がある」などの誇大妄想に発展します。うつ状態だった人が急に躁状態になること(躁転)はまれでなく、一晩のうちに躁転することもあります。逆に躁状態の人は、治るまでの間に、多かれ少なかれうつ状態を経験します。
72歳女性。幼少時父が失踪し、母に育てられた。女学校卒後、会社員として勤務し、28歳で結婚。子育てをしながら62歳まで仕事をしていた。
60歳頃より夫と感情的にすれ違うようになり、定年退職と共に夫と別居し、娘と2人暮らしを始めた。この頃より、不眠、食欲不振、意欲低下が出現したが、何とか家事はしていた。精神科を受診し、うつ病の診断で治療を受け、2年ほどで軽快。その後は問題なかった。
71歳時、帯状疱疹にかかり、内科で治療を受けたが痛みが続いた。4カ月ほどして、次第に抑うつ気分、食欲不振、不眠が出現したため同じ病院を受診し、抗うつ薬を投与されたが、副作用でふらふらになり、通院を中断。別の病院で抗不安薬による治療を受けたが改善しなかった。72歳時、抑うつ症状が次第に悪化し、焦燥、希死念慮が出現したため、大学病院精神科に入院し、抗うつ薬による治療を開始した。
病棟では、「歩けない」「私はもうだめだ」「食べ物が一口も食べられない」と訴え、検査の時は車椅子で看護婦が付き添い、配膳も看護婦が行っていたが、実際は食事、歩行はできていた。1カ月ほどで自ら配膳、歩行ができるようになったが、相変わらず自己評価は低かった。入院7カ月目に、抗うつ薬の作用増強のためリチウムを加薬したところ、次第に自己評価も改善し、自分でも「良くなってきた。退院したい」と言うようになった。9カ月目には完全に改善し、退院となった。
22歳女性。短大卒後就職し、仕事も特に問題なくこなしていた。21歳時、職場の配置転換を機に、仕事に積極的になれず、趣味のテニスもしなくなったが、何とか出勤していた。3カ月ほどして、不眠が出現した後、朝4時頃に起き出して朝早くから誰も来ていない会社に出勤したり、高価なブランド物のバックなどを買い漁る、朝早くから友人に電話してひんしゅくを買うなどの行動が出現し、様子がおかしいことに気づいた両親が精神科を受診させ、入院となった。入院時は多弁で、口を挟むのも難しいほどであった。リチウムおよび抗精神病薬により治療を開始すると、躁状態は落ち着いたが、すぐにうつ状態となり、また躁状態となることを繰り返した。リチウムに加え、カルバマゼピン、バルプロ酸を加えたところ、次第に落ち着き、躁状態、うつ状態は出現しなくなり、1年間の入院後、退院となった。職場の上司も病気を理解してくれたため、元の職場に復帰し、その後は順調に仕事を続けている。
うつ病の経過は人によってさまざまです。一生に一度きりで2度とならない人もいるし、何度も繰り返す人もいます。途中から躁状態がでてきて双極性障害になる人もいます。
双極性障害では最初のうちは、ストレスでうつ状態になることが数年に1回あるという程度ですが、次第に回数が増え、ついには特にストレスがなくても1年に4回以上病気を繰り返す状態(ラピッドサイクリング)になってしまいます。
双極性障害には予防薬があるので、これをしっかりのめばたいてい再発は防げるか再発しても軽くすみます。しかし、一生薬を飲むのは並大抵のことではなく、ほとんどの場合薬をやめてしまい、再発します。躁状態、うつ状態はいずれ治りますから、自殺さえしなければ、それ自体で命を落とすことはありません。しかし、躁状態、うつ状態を繰り返したまま治療もせず放っておくと、離婚、失職など、社会的には相当のハンディキャップを背負うことになってしまいます。
内科で異常ないと言われたが、やはり具合が悪い場合は、うつ病を考える必要があります。周囲の人が特に心配した方がよいのは、重症のうつ状態で本人が病気という認識が持てず、どんどん悪くなっている時、うつ病として治療を受けていたが具合が悪くて病院に行けない時、食事ができず栄養不良や脱水状態になりかけている時、死にたいと訴えている時などです。
うつ病、および双極性障害のうつ状態の治療は、患者さんの苦しみを改善し、できる限り早く症状をとることに加え、自殺予防が何より大切です。うつ病で自殺して亡くなる人は、日本でおそらく年間1万人以上いると思われ、交通事故の死亡者より多いと考えられます。自殺予防の第1歩は、希死念慮の有無とその強さを把握することです。希死念慮があるとわかったら、自殺は決してしない、と約束してもらいます。自殺しないと約束できない人は重症ですから、入院の必要があります。入院しても安全が確保できない場合は、「修正電気けいれん療法(mECT)」という、自殺念慮に対して即効性のある治療法もあります。
うつ病の人には、これが病気であり、休養を取って服薬すれば必ず治ること、治るまで重大な決定をしないこと、治るまでには一進一退があることを説明します。うつ状態にある人は、いくら頑張ろうとしても気力がついてこないため、自信をなくしています。周囲は激励したりせず、やさしく支えることが大切です。 また、うつ病の患者さんとかかわる時は、患者さんが元来しっかりした人であったことを忘れてはいけません。うつ病の患者さんは、いかにも自信がなさそうに見え、自分は何もできない人間だと強く訴えますが、実際は能力もあり、人に信頼され、きちんと仕事をしてきた人だ、ということを忘れずに接するようにしないと、患者さんも治る目標を見失ってしまいます。
うつ病の患者さんに絶対してはならないのが、「気の持ちようなのだから、薬にばかり頼っていないで自分で頑張って何とかしなさい」といった励まし方です。精神科にかかることを名誉と思う人はいませんし、薬をのみたい人もいません。それを我慢して薬を飲んでいるのに、周囲の人にこのように言われるほどつらいことはないのです。
うつ病の治療には抗うつ薬を使いますが、これは効き目が出るのに1〜2週間かかり、副作用(口の渇き、尿が出にくくなる、目がかすむなど)が強いという特徴があり、使い方の難しい薬です。しかし、その強い副作用でも、うつ病を経験した人に聞くと、「うつ病の途方もない苦しみよりはずっとましだ」と言います。
抗うつ薬が効かないからといって、うつ病でないとは言えないし、簡単に治療をあきらめては行けません。最終的にはmECTを使えば、ほとんどすべての患者さんが治ります。難治性のうつ病に見える人は、ほとんどの場合、治療が不十分なだけなのです。
躁状態の患者さんは、本人はとても調子が良いと思っている一方、周りの人を困らせていることが多いので、なかなか治療に結びつけにくいという問題があります。何とか本人の訴え(眠れない、いらいらする、など)を引き出して受診に結びつけたり、上司から指示してもらうなどして、受診につなげます。躁状態の患者さんを治療せずに放っておくと、社会的信用や家族との信頼関係を失ってしまうので、早期の治療が必要です。外来治療を拒否する場合は、入院が必要となります。意に反して入院させるには、医療保護入院といった強制的な入院が必要なこともあります。こうした場合は特に、抗精神病薬により十分に鎮静して休養できるようにすることが必要です。
躁状態では、子供扱いせず相手を立てるようにしながら対等に話す、根気よく説得し、相手の正常な部分を引き出して交渉する、しつこい場合は話をそらす、など対応を工夫しながら、薬物療法による改善を待ちます。躁状態は、治療すればたいてい2、3カ月以内に治ります。
双極性障害の治療で最も大切なのは、再発予防です。患者さんの人生を脅かすのは、再発を繰り返すことによる二次的な社会的ハンディキャップです。そのためには、長期間、ほぼ生涯にわたる薬物療法が必要となります。
予防薬には、主としてリチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸の3つがあります。リチウムは、手がふるえる、のどが渇くなどの副作用があり、中毒になりやすい薬なので、医師の指示を守りながら服薬する必要があります。これらの薬を効果的に使えば、ほとんどの患者さんでは薬を飲んでいる限り病相(躁状態、うつ状態)が全くなくなるか、軽い病相ですみます。
一生薬を飲むというのは、誰にとっても受け入れがたいことです。しかし、それを受け入れない限り、患者さんが社会的ハンディキャップを背負うことを予防できません。そのためには、患者さんが疾病を受容するプロセスに注意しながら、疾患について教育していく必要があります。生涯薬を飲めといわれれば、誰でも反発したり、認めようとしなかったりします。納得しても今度は、一生治療を続けなければならないほどの病気になってしまった、と落ち込んだり、自己否定したりします。その時期を通り越して始めて、病気とつきあいながら暮らしていこうという境地に至るのです。

[ 118] 気分障害とは何か
[引用サイト]  http://square.umin.ac.jp/tadafumi/MoodDisorder.html



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