インフレとは?

今回のご質問は株式市場から少し離れて、経済全般に関わるものです。「インフレ」という言葉は最近よく耳にするようになりました。耳にするどころか、アメリカの金融市場はこのところ26年ぶりの高い物価上昇率など、インフレを巡る話題で持ちきりです。
少し前までは「デフレ」という言葉が世界中であふれかえっていましたが、今やデフレに代わってインフレがマネー市場の大きな論点になってきました。その原因はやはり原油価格が史上最高値まで値上がりしたためでしょう。インフレ、デフレを巡る議論は経済学の本質に触れる部分ですので理解しにくいところもありますが、できるだけ実際の経済に即して見てゆきましょう。
まずは用語の説明から始めます。インフレとは、経済学上の用語で「インフレーション(inflation)」の略称で、モノの値段が継続的に値上がりするような状態を指します。デフレはモノの値段が継続的に値下がりする状態なので、ちょうど正反対の状態を表します。簡単に言えば、インフレは物価が上がっている状態、デフレは物価が下がっている状態です。 景気がそこそこよくて、世の中も安定しているような正常な経済の状態では、物価は年間で2〜3%は上昇すると言われています。景気がよいために企業や個人のカネ回りもよくなり、それがモノに向かうため物価の上昇が起こります。
年2〜3%のインフレが正常な状態であるとしたら、90年代後半から2003年ごろまでの日本経済は異常な状態にあったと言えそうです。当時は物価がどんどん値下がりするデフレ経済の中にありました。デフレ経済では企業が作った製品はどんどん値下がりするので、せっかく作っても売上高は減ってしまいます。売上が減ってしまった企業はリストラの一環で従業員をカットするため、失業者が街にあふれ、残った従業員も賃金が減らされてカネ回りは悪くなり、ますます物価は下がります。これがデフレの怖さです。
インフレは好景気で起こり、デフレは不景気で起こりやすいのですが、何もインフレはよい側面ばかりではありません。インフレにも正常なインフレと異常なインフレがあります。異常なインフレとは、たとえば1カ月で物価が10倍〜1000倍にも上昇する狂乱的な物価の上昇です。これは「ハイパーインフレ」と言われ、第2次世界大戦後のドイツや日本、1980〜90年代のブラジルやアルゼンチン、最近では1997〜98年のロシアで起こりました。
特に第2次大戦後のドイツでは(日本もそうでしたが)、靴1足、バター1キログラムが労働者の4カ月分の給料と同じ値段にまで暴騰しました。このような状況ではドイツ国民は生きてゆくことができません。終戦直後のドイツ経済は、混乱という状態を超えて破壊されたと言ってもいいほどです。
実際に第2次大戦によって、敗戦国のドイツと日本の経済基盤は徹底的に破壊されました。そこではモノが絶対的に不足する一方で、それまでの戦費調達のために大量の国債が発行され、紙切れとなったおカネが街にあふれかえっていました。モノの価値が上昇し、マネーの価値がゼロに等しくなったため、歴史的なハイパーインフレが発生したのです。
インフレやデフレはなぜ起こるかというと、「需要と供給」の大原則にたどりつきます。経済を支配している最も大切な原則が「需要と供給」です。株価の上昇や下落、物価の上昇や下落もまさにこの原則から説明できます。需要が多ければモノの値段は上がり、需要が少なくなれば値段は下がります。また、需要が多くてもそれを上回る供給があれば、やはり物価は下がります。逆に少ない需要でも、それを満たす供給がなければ物価は上がることになります。
この20年間というもの、日本はインフレとデフレの間で大きく揺れ動いてきました。80年代の土地バブルとは、土地という資産の値段が大きく上昇する「資産インフレ」そのものです。その土地バブルが崩壊した90年代の日本は、長期間にわたって「需要」がほとんどありませんでした。ここで言う「需要」とは、主に民間企業の設備投資、個人の住宅投資、個人の消費活動の3つを指します。
そこで政府は自ら需要を創り出そうとして、公共投資を中心に経済対策を10回以上も発動したのですが、いずれも単発的で日本経済のすみずみにまで効果が浸透することはありませんでした。(すみずみにまで効果が浸透すると、民間企業の設備投資、個人の住宅投資、個人の消費活動が次第に活発になってゆきます。)
何よりも大手都市銀行や地方銀行が不良債権(=貸したおカネが戻らない)に圧倒されて、おカネの貸出がほとんど行われませんでした。不景気ゆえに借り手もほとんどいなかったという状態で、デフレ不況は次第に深刻化してゆきました。
そこで日銀は1999年2月に「ゼロ金利政策」の発動を決定しました。金利とは「おカネの値段」です。おカネの値段である金利をゼロにするということは、おカネを無価値にすることに等しいわけです。金利ゼロのおカネを使って、まず世の中で停滞しているおカネの流れを回復させよう、それと同時におカネの相手側であるモノの価値を「相対的に」値上がりさせよう、それが日銀のゼロ金利政策の目的でした。つまり意識的にインフレを創り出す政策に打って出たことになります。
ちょうど同じ時期に米国ではITバブルが起こりました。日本でも2000年春を頂点として、IT産業を中心に景気回復の芽が出たように感じられたものです。日銀のゼロ金利政策がうまく機能したかに見え、2000年8月にはひとまずゼロ金利政策は解除されました。しかしその直後に米国でITバブルは崩壊し、再び日本は激しい不況に直面しました。日銀はわずか半年後の2001年3月に、ゼロ金利政策をさらに一歩進めた「量的緩和政策」を発動することになったのです。
量的緩和政策とは、金利の水準にはとらわれず、市場にどんどん資金を供給しようという政策です。日銀は世界的に見て例のない非常事態の政策運営を採用したのですが、量的緩和政策がゼロ金利政策と最も異なる点は、インフレに対する政策の目的をさらに一歩進めて「インフレターゲット政策」を打ち出したことです。期限を区切っていつまでに物価上昇率をゼロ以上にする、と日銀がはっきりと打ち出すことで、市場に対してインフレ予想を創り出すことを狙ったものです。
それから5年近くが経過しました。量的緩和政策によって日本の金利はずっとゼロのままの状態です。この間、2001年12月のWTO加盟をきっかけに、中国が世界経済に大きく躍進するようになり、中国の経済発展に伴って原油や銅、アルミ、ステンレスなど産業の基礎素材が大量に消費されるようになりました。
中国という「眠れる獅子」が一大成長国家として忽然と出現したことで資源・エネルギー価格が一気に上昇し、原油価格はこの9月についに70ドル台に乗せました。それがインドやロシア、ブラジルなどの資源国経済を活性化させており、世界的な一次産品ブームが湧き上がっています。
これらの動きが素材価格の上昇を通じて、マーケットのインフレ心理に火をつけています。日銀の量的緩和策はそろそろ本来の目的を果たしたと言ってもいいでしょう。残された問題はいつ量的緩和政策を解除するか、言い変えれば中央銀行としていつ正常なスタンスを取り戻すか、という点に移っています。(続けて)正常な政策スタンスに戻るだけとはいえ、それはそれで金利が上昇することになるため、マーケットの心理は揺さぶられます。インフレとデフレ、人間の営みすべての根幹に関わる奥の深い問題です。

[ 182] インフレ−いま聞きたいQ&A
[引用サイト]  http://manabow.com/qa/inflation.html

RIETIトップ>メディア寄稿>新聞・雑誌>新聞・雑誌 (2002年度)>早わかり「インフレターゲット論」
日銀総裁人事が近づくにつれて、日銀の金融緩和政策でインフレを喚起すべきだ、という議論(インフレターゲット論)が活発になってきた。インフレターゲット論とは何か、その背景と効果を考える。
バブル崩壊後の12年間、相次ぐ景気対策と経済低迷による税収不足で、日本の政府債務残高は約700兆円(国内総生産の約1.4倍)に達している。
何かしなければ景気は良くならない。財政政策(公共事業や減税)による景気刺激は、膨らんだ財政赤字を考えても、もう無理だから、その肩代わりを日銀の金融緩和でしてもらいたい、というのがインフレターゲット論が出てきた背景だ。
また、欧米の経済学界では、景気変動を緩和するためには、財政政策ではなく、中央銀行の金融政策で対応すべきだ、という議論が主流だ。これも、日銀にインフレターゲットを迫る根拠とされる。
「デフレが不況の主因だ」というのがインフレターゲット論の前提だ。そのメカニズムをみていこう。 代表的なものは、「債務デフレ」と呼ばれる現象だ。バブル崩壊後、過大な債務を抱えた企業は、少しでも借金を減らそうとして、手持ちの商品や資産(土地や株など)を売ろうとする。買い手より売り手が多くなるため、当然、物価が下がる=グラフ1参照。
物価が下がると、企業は同じ量のモノを売っても、得られる売上金額は少なくなる。その結果、借金を返しても、残った債務の負担は実質的に増加してしまうことがある。
例えば、商品価格が100円の時に、借金が1億円の企業があるとする。企業は、商品を100万個売れば借金を返すことができる。
借金のうち3000万円を返すために商品を投げ売りしたとする。同じように、他の企業も投げ売りに走り、商品価格が50円になったとする。すると、企業の借金の残高は7000万円だが、この7000万円を返すために、企業はさらに商品を(7000万円÷50円=)140万個も売らなければならなくなる。
つまり、当初の借金は商品100万個と同等だったのに、一部返済して残った借金は商品140万個分に相当することになる。借金の「重さ」が増加してしまっている。
借金の負担が増えると、企業はさらに投げ売りを激化させる。こうして価格低下・デフレが止まらない悪循環に陥る。
このような債務デフレに陥ると、企業は日々の資金繰りで首が回らなくなる。長期的な経営ができなくなり、すべての判断が短期的になってしまう。その結果、実体経済の活動が非効率になり、経済の成長力が鈍り、不況が続く。典型的な「合成の誤謬」だ。
この悪循環は、「企業の過剰債務(=銀行の不良債権)」と、デフレとが複合して発生しているものだ。これを止めるためには「不良債権」と「デフレ」の両方を解決することが必要である。
インフレターゲット政策の本質は、「日銀がここまでやるのだから、きっとインフレになるはずだ」という「インフレ期待」を国民に持たせようとする点にある。
第二は、その公約を果たすため、日銀が非伝統的な手法(株式や土地などの買い上げ)で現金を経済全体にばらまくこと、である。
この政策は、プリンストン大学のクルーグマン教授が98年2月に自身のホームページ上のエッセーではじめて提唱し、その後、日米の多くの経済学者が賛同した。
しかし、この政策提案の難点は、日銀の現金供給が、インフレ期待の上昇に結びつく経路がはっきりしないことだ。
クルーグマン教授のモデルでは、日銀が日本経済全体のマネーの量を自由自在に操作できると仮定している。だから、日銀が「インフレを起こす」と言えばインフレを起こせることになる。
しかし、現実には、日銀の供給する現金は、民間の銀行部門で信用創造=イラスト参照=され、複数の銀行を経て、その10倍程度のマネー(預金通貨)になって循環する。日銀だけでなく民間の銀行部門がマネーを創造するのだ。
現状では、日銀が現金供給を増やしても、信用構造が行われない。民間銀行が過小資本のため貸し出しができず、国民も金融不安から現金保有を増やしているからだ。信用創造がなされないと、経済全体のマネーが増えず、インフレ率も上昇しない。
もちろん、日銀が民間の銀行が所有する株や土地を全部買い上げればインフレになるかもしれないが、そうなれば、日銀の資産内容が現行の民間銀行と同じになる。つまり、民間銀行の代わりに銀行業をするのと同じ状態といえる。
インフレが起きれば、債務者は助かるから、不良債権問題もかなり軽減されるはずだという期待もある。しかし、それには少し無理がある。
これはインフレで株価がどれくらい上昇するかを計算してみると分かる。いま8000円台の日経平均株価が、2万円台を回復するためには、12%のインフレが10年続く必要があると、計算(10年間の配当の割引現在価値で株価を計算、利子率ゼロを仮定)で示すことができる。
逆に、2%や3%のインフレでは、株価は1万3千円程度にしかならない。これは98年秋の金融危機当時の株価水準だ。地価についても同じ様な計算ができる。これでは、銀行の健全性を回復するにはほど遠い。
つまり2〜3%のインフレでは、銀行の不良債権を解消するには、焼け石に水、ということになる。また、もし、株価や地価を高値まで日銀が買い支えながら、同時にインフレ率を2〜3%に抑えるならば、日銀が株や土地の含み損を抱えることになる。
この場合、日銀の含み損は国民全体の損なので、最終的に税金を日銀に投入して損失を穴埋めしなければならなくなる。これは、結局、政府が税金で株や土地を買い上げる政策と同じことになり、政府の債務を膨張させる。
インフレターゲット論が人気を集めるのは、政府の財政赤字を増やさないで景気を良くする政策だと誤解されているからだが、実は、結局、財政赤字を増やしてしまう公算が大きいと言える。
経済が健全性を取り戻し、持続的な成長をするようになれば、「結果として」2〜3%の緩やかなインフレになる、と予想はできる。
しかし、様々な難問を放置したまま、インフレターゲット政策だけを実施しても、インフレになるとも、経済が健全になるとも言い切れない。
もちろん、政府が不良債権処理など必要な政策を進める際に、日銀の金融緩和による側面支援が必要なことは言うまでもない。しかし、それを「インフレターゲット」と仰々しく銘打つ必要もない。
経済学では、個々人が合理的に行動しているのに、全員の行動の結果が合成されると、目的に反する結果になることを、合成の誤謬と言う。債務デフレでは、個々の企業は自社の債務負担を軽くしようとして、商品を投げ売りする。しかし、全員が投げ売りをすると、物価が下がり、結果的に、個々の企業の債務負担は上昇してしまう。典型的な合成の誤謬だ。
インフレを求める意見は、論者によってかなり幅がある。単に物価上昇の見通しを示せばよい、という消極的な意見から、高率のインフレで不良債権も財政赤字も消してしまえ、という乱暴な意見や、インフレに伴う高金利で構造改革を進めようというものまである。本文で紹介している論は、経済学者が議論する標準的なもの。
2003年2月2日 朝日新聞に掲載筆者及び朝日新聞社に無断で掲載、送信するなど著作権者の権利を侵害する一切の行為を禁止します
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[ 183] 早わかり「インフレターゲット論」 RIETI 経済産業研究所
[引用サイト]  http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/kobayashi/05.html

この項目では経済におけるインフレーションについて記述しています。宇宙論のモデルについては宇宙のインフレーションをご覧ください。
インフレとも呼ぶ。英語で「膨張」の意味。 典型的なインフレは、好況で財やサービスに対する需要が増加し、需給が逼迫することによって発生する。すなわち経済全体で見た需要と供給のバランス(均衡)が崩れて、総需要が総供給を上回った場合に、これが物価の上昇によって調整されることで発生する。物価の上昇は貨幣の価値の低下を同時に意味する。 好況下での発生が多いが、不況下にも関わらず物価が上昇を続けることがあり、スタグフレーションと呼ばれる。
大きく分けると、実物的な要因と貨幣的な要因に分けられる。前者はさらに国内要因と貿易要因、需要要因と供給要因に分けられる。
需要側に原因があるインフレ。ディマンド・プル・インフレとも呼ばれる。 供給を大幅に超える需要があることにより物価が上昇する。 1973年から75年にかけての日本のインフレーションの原因は、オイルショックに注目が集まるが、変動相場制移行直前の短資流入による過剰流動性、「列島改造ブーム」による過剰な建設需要も大きな要因である。
供給側に原因があるインフレ。コスト・プッシュ・インフレとも呼ばれる。多くの場合、スタグフレーションや、それに近い状態になる。
産業によって成長に格差がある場合に、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。これは、例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレを招く。
輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。幕末期に、生糸などの輸出が急増しインフレが発生している。このパターンは乗数効果で総需要が増大しているため、需要インフレの側面もある。
他国の輸入を通じて海外のインフレが国内に影響し発生する。穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり、輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けたりした場合に、穀物の輸入が減少し穀物価格が上昇する。現実にも、中国が穀物純輸入国に転じた際にトウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。
貨幣が過剰に供給されてだぶつくことにより発生する。貨幣の過剰発行は、過剰流動性を生み出し実質金利を低下させる。このため通例では投資が増大し、乗数効果で何倍もの需要増大をもたらす。そのプロセスは最終的に、需要インフレに帰結することでインフレに結びつく。
政府の発行した公債を中央銀行が引き受けることにより、過剰に貨幣が供給されて発生する。前述の金利を経由した効果のほかに、財政支出から直結した有効需要創出効果もある。
銀行が過度に貸付を行うことにより発生する。銀行の信用創造機能が過剰に働くことにより、貨幣の流通量が増大する。
ゆるやかに進むインフレ。インフレ率は年数%で、好況期に見られる。経済が健全に成長していると見なされ、望ましい状態と言われることが多い。マイルド・インフレとも呼ばれる。
猛烈な勢いで進行するインフレ。極端な場合、一日単位や数時間単位で貨幣価値が変わることもある。経済が崩壊した状態である。
賃金も物価の上昇に伴って上昇するが、物価に比べると調整に遅れをとるため、実質賃金が下がり、雇用をふやしやすくなるので失業率は下がる(フィリップス曲線)
物価上昇率が預金金利を上回ると預貯金の価値を実質的に引き下げてしまい、資産家にしわ寄せがゆく。物価上昇率が貸出金利を上回った場合、インフレにより実質的な負債の価値が下がり、その結果実質的な返済負担が減る。
記録に残る世界最古のインフレはマケドニア王国のアレクサンダー大王の時代の事であると言われている。大王がアケメネス朝ペルシアなどの国々を征服して、征服先の国家の財宝などを接収して兵士達への賞賜に充てた事から、その結果ギリシア世界に大量の金銀が持ち込まれて価格騰貴が発生したのだという。
江戸時代の徳川綱吉のときに勘定吟味役荻原重秀が、幕府の財政拡大による財政赤字増大と元禄・宝永の改鋳による金銀含有率の引き下げをおこない、インフレとなった。その次の新井白石が幕府の歳出を減らし、正徳・享保の改鋳で金銀含有比率を慶長小判の水準に戻して、インフレを抑制した。 その次の徳川吉宗の享保の改革においても金銀含有比率を維持するために緊縮財政を続けたが、米などの物価が下落したので、元文の改鋳を行い貨幣流通量を増加させ、デフレを抑制した。
第二次世界大戦中の日本政府の借入金総額は国家財政の約9倍に達していた。戦争中は統制経済と戦時国債の個人購入で資金を吸収して、戦時インフレ傾向を抑えていたが、敗戦でこの仕組みが崩壊し、インフレ傾向が一気に表面化した。なおかつ、政府が軍発注物資の代金を一挙に払ったため通貨の大幅な供給過剰に陥り、ハイパーインフレが発生した。
日本政府は預金封鎖と新円切替で、通貨の流通量を強引に減らしてこのハイパーインフレを抑えたが、傾斜生産方式による復興政策が始まると復興金融金庫から鉄鋼産業と石炭産業に大量の資金が融資された結果、復興インフレが発生した。インフレを抑えるために融資を絞ると生産力が鈍るために、融資を絞ったり拡大したりする不安定な経済状態が続いた。また、これらインフレへの対策の一環として、1946年秋には浮動通貨の吸収を緊急の目的に日本競馬会による競馬が再開されている。
アメリカから大統領特命公使としてジョゼフ・ドッジが派遣され、ドッジ・ラインと呼ばれる経済政策(超均衡予算と復興金融債の復興債発行禁止など)を行なった。ドッジ・ラインによりインフレは収まり、物価は安定したが、資金の引き上げや貸し渋りによる企業の倒産と失業が増加し、安定恐慌と呼ばれた。 朝鮮戦争の勃発により戦時物資や役務の調達に伴う需要が増大し、この特別需要(朝鮮特需)により、生産活動が活発化して景気が上昇し、緩やかなインフレに移行した。
1955年からは高度経済成長が始まりインフレが進む。1973年〜74年および1979年の2回にわたるオイルショックでは一時的に急激なインフレが発生した。その後インフレ傾向は弱くなった反面、投機に支えられたバブル経済のもとで資産インフレが急激に進行、しかし三重野康総裁の指導下で日本銀行が1989年から金利を急激に引き締めたことに起因して資産インフレが終焉を迎え、1992年からは資産デフレが進行した。1999年以降明確にデフレーションに入り(良いデフレ論争)、日銀の速水優総裁の下におけるゼロ金利政策解除等の政策とあいまって、ことに資産デフレ傾向は強化された。(いわゆる「失われた10年」)。
第一次世界大戦後のドイツでは、連合国側に対して1320億金マルクの賠償金支払いが課された。しかし、これはドイツの支払い能力を大きく上回っており賠償金の支払いは滞った。これを理由に1923年、イギリスの反対を押し切ってフランス・ベルギーが屈指の工業地帯であり地下資源が豊富なルール地方を軍事占領した。このため、従来の賠償金支払いに加えて、地下資源を輸入に依存せざるを得なくなり、現地で進駐に抵抗するストライキを起こした住民への経済的補償も必要とされた。既に第一次世界大戦中よりドイツではインフレが進行していたが、これらの事態は事態を致命的な状況へと導き、空前のハイパーインフレが発生した。この結果、1年間で対ドルレートで7ケタ以上も下落するインフレとなり、100兆マルク紙幣も発行された。
この破滅的な状況下で、ドイツの人々はヴェルサイユ体制への不満を募らせたが、シュトレーゼマン首相のレンテンマルク発行などにより奇跡的にインフレが収拾されたこともあり、この段階では議会制民主主義が揺らぐことはなかった。このインフレ期にアドルフ・ヒトラーが起こしたミュンヘン一揆も、失敗に終わっている。
しかし、1929年の世界恐慌でドイツ経済が再び崩壊すると、議会制民主主義への信頼は失われ、ヴェルサイユ体制打破を掲げる権威主義的なナチスへの支持が急増し、ファシズム政権の成立へと至った。
ハンガリーでは第二次世界大戦後に激しいハイパーインフレーションが発生した。このときのインフレでは16年間で貨幣価値が1垓3000京分の1になった。
1946年に印刷された10垓ペンゲー紙幣(紙幣には10億兆と書かれている)が歴史上の最高額面紙幣であり(ただし、発行はされていない)、最悪のインフレーションとしてギネスブックに記録されている。
1988年、経済成長の後退からハイパーインフレが発生。1989年には対前年比50倍の物価上昇が見られ、1992年にアルゼンチン・ペソ〜米ドル間の固定相場制を導入するまで、経済が大混乱となった。国家財政の破綻はもちろんのこと庶民のタンス預金は紙屑同然となった。
国単位でのインフレの他に、地域単位、都市単位でインフレ現象が起きることがある。現代的に問題になっているのは、国連平和維持活動(Peace-Keeping Operations : PKO) に伴うインフレである。紛争地域の停戦後、平和維持のために派遣される各国の部隊は、経済が疲弊している所に急に現れる富裕層と同じである。そのため、駐屯地の周辺では、部隊が調達する生活物資・食料品を中心に価格上昇が起きてインフレとなり、紛争で困窮した周辺住民の生活を圧迫する。対策として、部隊員の駐屯地外での購買活動抑制が行われており、PKO部隊は Price Keeping Operation も同時に行っていることになる。
日本では、明治以降の資本主義経済化の下で局地的インフレが見られた。農業地域や未開拓地域(北海道)に工業・鉱業・巨大物流施設(港湾)が出来ると、急激な資本投下と人口の急増(都市化)とが発生し、生活物資の必要から局地的なインフレが起きた。そのため、物価安定を目的に日本銀行の支店や出張所が置かれた。日銀の支店・出張所の開設場所や開設時期は、その地域での経済活動に伴う局地的インフレ懸念と密接に関係している。
ネットワークゲームの一種MMORPGでも、システムの欠陥(アイテム増殖や所持金増殖の裏技)やゲームシステム設計上のミス(簡単で短時間に大きな報酬を得ることが出来る方法が存在する場合)を突かれてゲーム全体での通貨供給量が異常に上昇すると、ハイパーインフレーションが発生する。運営側の判断で、元の状態に戻すことが現実世界と比較すればはるかに容易である点が違う。
また、リアルマネートレーディングを組織的に行う者たちがゲームに大量かつ断続的に流入し、これらの者たちが自動プログラムなどによる狩猟や、アイテム加工などを利用して販売目的のゲーム内通貨を大量に生産するなど事により、通貨の過剰供給が起き大規模なインフレが発生することがある。この状態の場合には、インフレの原因となる行為の開始から問題となる状態までの期間が長い事により、運営側の対処が難しいとされている。しかも、この形のインフレでは初心者やライトユーザーから「廃人」などと呼ばれるヘビーユーザーまで満遍なく需要がある素材系アイテムの価格が暴騰することが多く、結果としてライトユーザーや後発プレイヤーのプレイ継続率に悪影響を及ぼす要因にもなる。
漫画・テレビゲーム(特にRPG)などによく起こる現象で、『苦労して強い敵を倒すも、またさらに強い敵が現れ立ち向かっていく』という構成のストーリーが際限なく繰り返されていくことによって、キャラクターの戦闘能力・各種パラメータ値などが指数関数的に増加してゆく事がある。また、トレーディングカードゲームなどにおいて新たな商品の展開により、キャラクターの強化が際限なく繰り返されてしまうことがある。これらを指して「強さがインフレを起こしている」「パワーインフレーション」などと表現されることがある。この傾向は、戦いが主体の長期連載の漫画とその関連商品などで特に顕著に見られる。
この「パワーインフレーション」は、現在ではマンネリ化やワンパターン化の原因になるとして回避策を模索する作品が多いが、あくまで結果を定義に当てはめているだけなので、ストーリーの魅力や構成力が高ければ、インフレが存在しても人気のものが多い。 その一方で、近年のギャグ・コメディ系作品ではあえて意図的にこのパワーインフレーション展開を誇張して使用し、ストーリーを展開させてゆく手法も見られている(例としては『逆境ナイン』が挙げられる)。
麻雀においては、ドラを増やしたり、ワレメや青天井を採用したりするなど、点数を吊り上げてギャンブル性を増すルールを「インフレルール」と呼ぶ。
また、鉄道車両においては、同一形式の大量増備で極端に増大した車号(東武8000系電車の80000番台など)を「インフレナンバー」と呼ぶ。
なお、一部には「インフルエンザ」のことを端折って、これをインフレと呼ぶ人もいる(代表的なところでは長嶋茂雄がいる)。なおインフルエンザの英語での略称は「フルー」(flu)。

[ 184] インフレーション - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

RIETIトップ>コラム一覧>コラム一覧 (2002年度)>インフレ目標論は日本経済破綻のシナリオではないか
今まで、あまりにも日本の経済問題を先送りしてきたため、単に問題が大きくなっただけでなく複雑になりすぎ、変えたいと思っている人達でも、いざその場に直面すると現状維持を望んでしまうようだ(筆者が「外務省を変える会」でODAの改革を提案した時も大変であった)。そればかりか頑張っても解決できないかもしれないという諦めと自信喪失が大きくなり、短期決戦の道や特効薬を探しだそうとする。インフレターゲット論が最近、話題になっているが、筆者は何でもありの世界に日本が突入してしまう不安を感じる。金融・経済の苦手な小泉総理に対し官僚・学者は次期日銀総裁はデフレ退治に積極的に取り組む方がいいと圧力をかけている。この方向性は正しい。しかし、なぜこれがインフレターゲット論になるのか理解に苦しむ。金融政策で構造的デフレなど解決できないと筆者は思う。日銀がベースマネーを前年比で30%も増やしている。しかしマネーサプライは2−3%しか増えていないのである。これは金融政策の効果がないことを意味している。
資本主義を維持しているわりには、日本政府は突然世界をあっといわせるようなことをする。一例を挙げるなら日銀の「ゼロ金利政策」である。デフレでマイナス成長だから当然だという。デフレ経済とはいえ、先進国のリーダーはゼロ金利政策の導入をさける。「流動性の罠」の恐さを知っているからである。英国シティのバンカーの友人達は、「日本は自力回復できない」と切り捨てているので最近は日本へ出張に来ないが、以前は「なぜ日本は金利をゼロにしたのか?」と官庁訪問の際によく聞いたものだ。彼らは日本のゼロ金利政策は誤りだと思っている。これに対する役所の答えは、「何度も利下げを行ってデフレ不況からの脱却を試みたが景気回復の効果があがらず、量的緩和政策を使いゼロ金利に誘導した。これにより、景気が上向くと期待している。一方、大型企業倒産も回避できるし、デフレ不況の深刻さに比べると日本の失業率の上昇を免れる」また「政府は国債の発行体であるから、金利が安くなれば資金調達コストが安くなる。企業も過剰債務を抱えているため、同じ利点を享受できる。企業の業績回復にも繋がる」等というものだった。金融市場で長く仕事をしてきた筆者は、ゼロ金利政策は投資家や銀行にとっては命取りであると考える。投資のリスクとリターンが合わなくなるからだ。生保や年金は構造的運用難に何年も悩まされている。保険会社が業績をあげられないのはデフレとゼロ金利のためである。一方、日本のコール市場は全く機能しなくなった。金利がゼロになると短期市場の資金が流れなくなり、いくらただの資金が潤沢にあっても資金需要は減っていく。日本が流動性の罠に嵌ってしまったことは世界的に知られている。量的緩和政策の結果、株価が額面割れした倒産リスクのある企業がほとんど倒産しなくなった。2001年3月から2年続いている量的緩和政策は、最近では「失業対策的」な意味合いが強く、モラルハザードを進行させている。ゼロ金利を普通の金利に戻した時が危険である。倒産する企業が増えるからだ。
金利をゼロにし、資金をジャブジャブにしてもデフレ退治ができず、デフレ脱却の特効薬としてインフレ目標論がマスコミで注目されている。日銀がインフレ目標(例2−3%)を設定し、無制限の国債買いオペや株式・不動産などの購入を積極的に行い、インフレ目標を達成させようというのが基本的な考えのようだ。狙いは、日銀がインフレを実現させるための意思表示を強く押し出すことにより、企業や国民のインフレ期待を高め、投資を前向きにさせることによりデフレから脱却すること。つまり、日銀が土地・株(例ETF:上場投資信託)を積極的に買うことにより、株価・地価が上昇し、その結果、国・企業や家計のバランスシートが改善され不良債権処理も加速されるということだ。
インフレ目標は本来インフレを押さえ、物価安定のために使われてきている。デフレ脱却のためには使われたことはない。日銀は実質経済の将来に対する成長期待や生産性を向上させる努力という裏付けのないまま、インフレ率だけを高めようとするのは「無謀な賭け」だと反対している。
デフレ退治の処方箋としてインフレを起こすことが可能であるならば、巨額な財政赤字を抱えている政府にとっては都合のいい選択肢であろう。通常、財政赤字を減らすには1)景気を回復させる。2)歳出を減らす。3)増税するの3つの方法しかない。2)と3)は政治家と政府は好まず、1)は金利をゼロにしても実現不可能であった。インフレにより、貨幣の価値が下がれば、増税という言葉を使わずに増税した時と同じような債務削減効果を政府は得られるのである(税を徴収する手間もはぶける)。
インフレの利点として国の借金や企業の不良債権が減る可能性があるのは解った。戦後の財政危機はハイパーインフレにより救われたという(注1)。しかしインフレ目標論には解らない点が多い。1)インフレをどうやって起こし、そしてコントロールするのか(インフレ目標論を主張する学者は、第一次世界大戦後にドイツが行った、輪転機でお札をどんどん印刷して引き起こしたインフレとの違いを強調している)。もし、インフレをコントロールできない場合は誰が責任を負うのかも明らかではない。2)インフレ期待が強くなると、当然名目金利は上昇するので新発債の調達コストも上がる。既発債の価格は下落する。その際、国債・地方債・財投債の発行計画と引き受け状況はどう影響されるのか(既発債を保有している投資家は損失を被るため、新発国債の買い控えをするかもしれない)。国の格付が下がり金利が急上昇しても、財政破綻に繋がらないと確約できるのか。3)インフレ(例5%)が起こった場合、雇用はどうなるのか(人件費が上昇するはずだから失業率は上昇するだろう。企業は就業者をパートに切りかえるかもしれない)。倒産しかけている企業は生き返るのか。中小企業の企業価値は上がるのか。産業の供給過剰問題はどうなるのか。国の税収は増えるのか。4)インフレによる貨幣価値の低下は年金生活者の生活水準を下げる。彼らの不満は自民党への支持率低下に繋がらないのか。高齢者の自殺が増加しないのか。等である。
高度経済成長の帰結がインフレ目標政策なのかと考えると、何か割り切れない気持ちになる。インフレ目標論はデフレ脱却論ではなく日本経済破綻のシナリオではないかと思う。マクロ経済学者のインフレ目標論には、彼らのインフレ目標政策が仮に失敗した場合、1億2千万の日本国民が不幸のどん底に陥ってしまうかもしれないというリスクに対する説明が抜けている。インフレ目標論を導入するぐらいの勇気があるのなら、国民に対し国の財政の危機的な状況や不良債権処理問題の深刻さを解りやすく開示し、この危機から脱却するにはいくつの選択があり、各々どういう国民負担を要するのかを説明する方が賢明な選択に思える。国民に危機感がないのは本当の情報が届いていないからかもしれない。筆者はインフレ目標論よりかは国民に増税への理解を求めた方がまだいいと思う(そのためには、国の債務返済計画をディスクローズすべきである)。また、国有財産の徹底的な民営化や規制改革の実施、中央・地方政府への公会計導入による労働生産性向上に努める方がより効果的だと思う。今回のインフレ目標論はデフレ脱出・需要回復政策にも見えるが、本当は不良債権と財政赤字の削減が狙いなのかもしれない。公的セクターも金融セクターも赤字であり、自力での再生はほとんど不可能なため、唯一黒字である家計セクターの1400兆円の個人金融資産を利用し、日本経済の再生を試みようとしているように思えてならない。1400兆円の個人金融資産は、大部分が年金生活者の預貯金だという。この人達の預貯金が日本経済再生のために狙われているのかもしれない。戦後の預金封鎖を覚えている世代は政府に対する不信感も強い。自民党はインフレ目標論導入で自民党を支持する有権者を敵に回してしまうかもしれないのだ。
注1)井掘利宏氏の著書『財政再建は先送りできない』(岩波書店)によると、1945年に猛烈なインフレが生じて約2000億円あった日本の実質債務残高は1年で3分の1以下に減少。その後のインフレで日本の債務残高は結果的になくなってしまったという。しかしこれは統制・封鎖経済下での出来事であると述べている。
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[ 185] インフレ目標論は日本経済破綻のシナリオではないか RIETI 経済産業研究所
[引用サイト]  http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0075.html



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