偏屈とは?

私は自分を別に偏屈だとは思っていない。ところが八年ほど前、親しくしている講談社の編集者諸兄から「偏屈庵」なる綽名《あだな》を付けられた。理由は、好んで儲からない仕事ばかりしているということのようだが、片意地、臍曲がりと思われているところもあるのかもしれない。しかし、本人はそう思っていないから、冗談めいた呼称としか受け取っていない。
本年一月、私はパソコン上に日記を付け始めた。動機は実にいい加減なもので、たまたまウェッブ上で「しばやん日記」なるソフトを目にしたことによる。その制作者の言葉が何ともとぼけた面白いものだったため、乗せられるように始めたまでのことだった。日記名という欄に「偏屈庵日乗」と書き入れたのはそんな気持からのことで、荷風の「断腸亭日乗」に倣ってというようなことではないのである。
例年の三日坊主が意外に続いているのは、パソコンだからのことであろう。そしてある日、友人でありパソコンの師である放送専門誌『GALAC』(ぎゃらく)編集長の坂本衛兄に、その日記をメールで送った。そこから、ホームページを作れとけしかけられ、だんだんその気になり、坂本兄に手間を掛けたことで引くに引けなくなり、実現へと動いていった。
その過程で、何より考えさせられたのは全体のタイトルだった。まさに左思右考したものだが、やがて膝を打つように思いついたのが偏屈庵通信だった。私が勝手に書くものが、目配りの利いたものになるはずはない。だったら、戦中派と言うべき昭和一桁世代の放言として、あらかじめ偏見をお断りしておくほうがいい。それには偏屈庵通信が打ってつけではないか、そう思ったわけである。
日記も、所詮は読まれることを意識して書かれるとする見方はある。それも事実ではあろうが、秘匿されるものとして心の裡を赤裸に吐露するという面もある。死後に公開される作家の日記は、それゆえに価値を持つ。しかし、他者への苛烈な批判やあまりにも私的なことは、ウェッブ上の公開は憚らねばならない。私は実際に書いた日記から、そうした部分を削除してここに載せているわけで、荷風の日乗とは大きく隔たる。言うまでもないこととは思うが、ご容赦いただきたい。
自分が作ったのではないから言えるのだが、このホームページは技術的に素晴らしく良くできている。それだけに内容が問われそうだが、私としてはこれまでの経緯そのままに、肩に力を入れずにやっていきたいと思っている。おかしな言い方だが、よろしくお付き合いくださるようお願いする次第である。
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[ 152] 偏屈庵通信‖偏屈庵通信について
[引用サイト]  http://www2.odn.ne.jp/henkutsu/about.html



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