魔球とは?

魔球(まきゅう)とは、主に野球漫画において投手が投げる変化球であるが、常識からは外れた極めて異質な変化をするものを特に「魔球」と表現することが多い。その多くは物理的に不可能である。
1958年に始まった『くりくり投手』(貝塚ひろし)が魔球を初めて出したされている。この作品は『イガグリくん』(福井英一)の野球版とも言え、後の野球漫画でよく見られるような投手対打者の構図がすでに出来上がっていた。
魔球という言葉が具体的に登場した作品は1961年開始の『ちかいの魔球』(原作:福本和也・作画:ちばてつや)とされる。その後を受けたのが、1963年開始の『黒い秘密兵器』(原作:福本和也・作画一峰大二)である。これは野球に形を借りた忍者漫画で、魔球や独特の打法は忍術、忍法の代わりだった。
そして更にその後発である『巨人の星』の大ヒットと共に魔球の存在は野球漫画において定着し、不可欠とされるようになった。『巨人の星』で星飛雄馬がまだ高校野球の速球投手だった当時、対戦相手の投手がドロップを駆使し、これが「魔球」と称された。格闘技漫画の原作を多く手がける梶原一騎の原作作品ということもあり、魔球は柔道やプロレスの「必殺技」の代わりだった。3号まで開発された大リーグボールとその攻略の駆け引きは作品を緊迫したものとし、「消える魔球」は正体がしばらく伏せられていた間、各界の著名人の間で種明かしの予想がなされた。
『巨人の星』の時点ですでにこれらの魔球は非常に荒唐無稽な代物であり、物理的に不可能と思われたが、『巨人の星』の後は更にエスカレートし、『アストロ球団』、『侍ジャイアンツ』などの作品で頂点を迎えた。
その影響で、当時、小学館のコロコロコミックや学習雑誌でも『リトル巨人くん』を初めとする長嶋ジャイアンツに小学生が入団し魔球で活躍する漫画が幾つか登場した。ある漫画では主人公が「左右にZ字型に曲がる魔球」と、「打っても外野フライになる魔球」で活躍するが、プロの打者たちやライバルに打たれ、結局、基本である速球を鍛えることになる、
『新・巨人の星』では星飛雄馬の分身魔球として「蜃気楼の魔球」が登場するが、花形と左門は謎解きよりもボールの影を見て本物を打つことを優先し、ロメオ・南条は「こんな手品の相手にはならん」と言って魔球打倒を最初から放棄し、星の別の球種を打つことを重視した。このため、「種明かし」は封印されて終わった。ここで、魔球の位置づけが徐々に変わっていた。『侍ジャイアンツ』に見られる奇抜な投法としては、『男どアホウ甲子園』でも剛球仮面による「回転投法」がある。
水島新司の『ドカベン』など、それなりに現実に即した野球漫画が主流になると、魔球もあくまで変化球の一種として描かれるようになる。たとえば水島作品にもドリームボールやさとるボール、超遅球といった魔球が登場するが、それぞれボールが揺れるフォークボールやシンカー、絶妙のチェンジアップというだけである。奇抜な変化で打者を打ち取るより、どこでそれを投げるか、どう使うかという配球の駆け引きが、魔球そのものより重視されるようになっていく。
「決め球に使ってくると思っている魔球をあえて初球見せ球にする」「投げる、投げると思わせておいて別の球で打たせて取る」「そんな魔球が本当にあるのかどうか打者を疑心暗鬼にさせる」など、魔球の描写に配球の駆け引きや心理戦を持ち込んだ水島の功罪は大きい。魔球の描写に新境地を与えた反面、かつての様な破天荒な変化球は必要とされなくなっていき、また配球さえ読めればどんなボールも(すくなくとも主人公には)打ててしまうなど、本来の魔球の魅力は徐々に失われていく。
ちばあきおの『プレイボール』では、主人公である谷口がピッチャーを務めるようになってから、フォークボールで強豪打線を抑えるという描写がある。最初は彼のフォークボールは怪我の後遺症とそれの対策によってできた偶然のものであり、フォークばかり投げていた。後遺症が手術によって完治したあとはウィニングショット的にフォークを使えるようになる。
さらに進んで、1980年代にはあだち充の『タッチ』に代表される様な、勝負の行方やプレイそのものより、野球を通じた人間関係を重視した野球漫画が主流になり、魔球は野球漫画における地位を下げてゆく。まれに登場はするものも、現実に新しく開発された新変化球を作中で別の名前をつけて魔球として扱っているだけであったり、一種のパロディやオマージュとしてであることが多く、漫画の主題とは成りえなくなった。東野圭吾のミステリー小説、『魔球』のように魔球自体を題材にした作品も登場したが、作中で主人公・須田武志が投げる揺れる魔球アシ・ボールも決して現実離れしたものではなく、魔球誕生のエピソードはアトランタ・ブレーブスのボブ・ウィックマンを連想させる。
一方、1970年代半ば以降、「スポーツを題材としたギャグ漫画」が登場すると、それまで隆盛を誇ったスポ根漫画のパロディとして、魔球もまたパロディの題材とされるようになる。江口寿史の『すすめ!パイレーツ』やいしいひさいちの『がんばれ!!タブチくん!!』といった作品にはパロディの魔球(あるいはその試み)がいくつか登場した。
ちなみに、野球盤では消える魔球が使われている。これは地面に当たる板の一部が下がってボールが下に落ちるので、「消える魔球」でなく「フォーク」と呼ぶ人もいた。
三段ドロップ、スカイラブ投法、殺人L字ドロップ(投法)、ファントム大魔球、ファイナル大魔球(『アストロ球団』)
ハイジャンプ魔球、エビ投げハイジャンプ魔球、大回転魔球、分身魔球(横)、分身魔球(縦)、ミラクルボール=ハイジャンプ+大回転+分身魔球(『侍ジャイアンツ』)注:すべてボーク、もしくは違反投球の疑いが濃厚。
Wボール WWボール WWWボール Qボール トンボール 赤トンボール スプリングボール (『ドラベース』)
ブラックレイ、小町、四大秘球(絞竜、白竜、飛竜、天竜)、五光裂華・旋風、剃刀カーブ、魔球XX(『Mr.FULLSWING』)
スノーミラージュボール、レインボースパークボール、サンダーバキュームボール、ハイパースピンブラックホールボール、イリュージョンスペースワープボール(『ミラクルジャイアンツ童夢くん』)
袈裟切りフォーク、ゼロシーム、バクボールI〜IV、バクボール0、魔球KOBE、魔球ブラック、魔球1.7、魔球エンジェル、ネオ魔球1.7、魔球ミーティア、セーリングボール、嵐!!無限球(『Dreams』)
超フライ投法、重力加算投法:グラビティ・プラス、ライフル・ショット、ウィザード・ドライブ、ウィザード・ライザー、トルネード・クイック、ウィザード・バイパー(『キャットルーキー』)
アニメで「野球漫画の魔球」を取り上げる場合、飛雄馬の「消える魔球」と番場蛮の「ミラクルボール」(または最終回に出た魔球全部)の場面がよく放送され、大リーグボール2号がアニメの魔球1号のような扱いになる。
魔球の種類は、既存の変化球の角度を急激にしたもの、打っても必ず外野フライに終わるもの、バットに当たって凡打になるものと逆にバットをよけるもの、ボールが消えるものと逆に分身するもの、直球だが投球フォームが複雑で打ちづらいもの、さらにエスカレートすると球がZ字型のような複雑なコースをたどるものや、色が変わったり光ったりするもの、あるいはこれらが2つ以上組み合わさる(分身して虹のように光る、上下2段に分かれて分身して下が黒くなるなど)といったものになる。ちなみに星飛雄馬の「消える魔球」の未完成形である「たてに変化する魔送球」も立派な魔球である。星飛雄馬は「バットを狙う、よける」、「消える、分身する」の4種をすべて投げた。
『ちかいの魔球』にあったらしい→「大リーグボール2号」(『巨人の星』)→卓球漫画でも消える魔球が出たらしい→「(漫画版)童夢スペシャル / (アニメ版)スノーミラージュボール」(『ミラクルジャイアンツ童夢くん』)→「ウィザード・ドライブ」(『キャットルーキー』)
→「ウィザード・ドライブ」は、初速を上げ、更に右打者の目の前で急激に大きく変化することで動体視力に対する相対速度を上げ、打者の動体視力が追いつかないために消えたように見える右打者専用の消える魔球であり、左打者にとっては“キレの鋭い、変化の大きなカーブ”でしかない。また、回転数が高いため芯で捉えられると反発力で長打になりやすいという欠点があった。
「タマタマボール」(『くりくり投手』)→「0の秘球」(『黒い秘密兵器』)→「分身・竜巻落とし」(『アタックNo.1』最終回)→「分身魔球」→「ミラクルボール」(『侍ジャイアンツ』)→「蜃気楼の魔球」(『新・巨人の星』)→光る魔球と融合→「レインボースパークボール」(『ミラクルジャイアンツ童夢くん』)
小学館学習雑誌に連載された、「どんまいキャプテン(原作:辻真先、作画:庄司としお)」に登場。主人公の相手チームの投手と主審が裏で結託し、投球の際に主審がカセットテープを再生する。「ひとつの球がふたつに別れ、ふたつの球がよっつに別れ……」。こうして催眠術にかかった打者は、いわゆる分身魔球と相対することになる。実は前日の夜、暴走族に襲われ、その際、この魔球の存在を知らされるという前暗示があった。主人公がバッターボックスで暴れ、主審のプロテクターをバットで叩き落し、プロテクターの裏からカセットデッキがこぼれ落ちたことで、陰謀があばかれる。主人公も「Jターン」という魔球を使う。いわゆる軽い球で、バットの風圧に押されて、結果、球はバットを避けて落ちる。これのどこがJターンなのか、絵を見てもよくわからないのだが……。なお、同時に主人公側チームの「天狗の仮面を被ったコーチ」が誰であるか、という謎解きがなされている。
「大リーグボール(左)1号」(『巨人の星』)→遅球だがバットの丸みのせいで打つと必ず外野フライになる魔球(小学館学習雑誌連載で、タイトル不明。投手は小学生。最終的にグリップ・エンドで打たれて敗れた)
1970年代後半〜1980年代にコロコロコミックに連載されていた「燃えろクロパン」にはほぼ大リーグボール1号と同じ「白鳥の舞」が登場する。体の弱い登場人物が、27球で一試合を終わらせるための秘技。
1970年代後半〜1980年代にコロコロコミックに連載されていた「燃えろクロパン」で主人公のライバル高の投手「さんば」がほぼ同じボールを投げる。
「光る秘球」(『黒い秘密兵器』)→分身魔球と融合→「レインボースパークボール」(『ミラクルジャイアンツ童夢くん』)
1970年代後半〜1980年代にコロコロコミックに連載されていた「燃えろクロパン」には「サンダーボルト」という魔球が登場する。ボールが空気との摩擦から電気を発して輝く。さらにそのボールを打つと感電するという恐ろしい魔球。感電した選手のユニフォームがボロボロになって失神し、担架で運ばれる場面がある。奇抜で非現実的な魔球だが、高野連から「危険なので使用禁止」というごく常識的な措置で封印される。
小学館学習雑誌の野球漫画には、小学生が投げる魔球で左右にZ字型に曲がる魔球が出現し、別の野球漫画では上下にZ字型で曲がる魔球があった→「ウィザード・バイパー」(『キャットルーキー』)
→「ウィザード・バイパー」は、指の筋力が非常に強い投手が強く弾くことでボールに一切回転を与えることなく、トルネード投法によって生まれた運動エネルギーを射出にのみ使用することによって生み出された高速ナックルで、速度が速いことでブレの頻度は少なくなるがその分左右のブレの幅が大きくなり、芯で捉えることが困難となる。ただし、変化率が一定でないことと、投手にかかる負担が大きい欠点があった。
「竜巻落とし」(『アタックNo.1』)→「ハイジャンプ魔球」(『侍ジャイアンツ』、「ハイジャンプ投法」と呼ぶべきもので、実際、アニメで初登場の際には中継の解説者からそう呼ばれた)→「マウンテンボール」(『大甲子園』)→「通天閣投法」(『ドカベン(プロ野球編)』)→「超フライ投法」(『キャットルーキー』)
→「超フライ投法」はドームの天井に着こうかというほどボールを高く射出し、落ちてくる際にボールは再び重力加速により加速するため打者はバットを振るタイミングが取りづらい球種であった。ホームベース上に落ちてくるような軌道でないとストライクゾーンを通過しないためコントロールが難しく(それでもこのボールを投げた投手はドーム球場なら9割方ストライクゾーンを通す自信があると言っていた)、風の影響を受けないドーム球場限定の投法であった。
→「グラビティ・プラス」は背の高い投手が高い位置から腕を振り下ろすことによって、射出エネルギーに位置エネルギー(=重力)を加えることにより、初速と終速を同じにして打者の感覚をずらす魔球。また、非常に角度がつくため打者が打ちにくい、長打になりづらいという利点があった。
「魔送球」(『巨人の星』)→「ハラキリシュート」(『侍ジャイアンツ』)→「対角線投法」(『大甲子園』)→「ウィザード・ライザー」(『キャットルーキー』)
→「ウィザード・ライザー」は、単に横からの投球と言うだけではなく、文字通り「浮き上がる」変化をする。これは、捕手・寅島球児の発案により右投手、三ヶ月心の左打者対策のために開発された球種である。ウィザード・ライザーはアンダースローから射出され、地面を這うような軌道からホームベース手前で大きくホップし、高めのストライクゾーンを通過する。左打者から見ると自分の顔に向かってくるように見えるため距離感がつかめず、スイングするタイミングが取れない魔球であった。ただし、投球動作後の守備がおろそかになる、投球フォームで球種が判るという欠点があった。なお、この「打者の距離感を破壊する」という概念はそのまま『Mr.FULLSWING』に転用された。
「かすみの秘球」(『黒い秘密兵器』)→「大回転魔球」(『侍ジャイアンツ』、「大回転投法」と呼ぶのが正確)→「ライフル・ショット」「トルネード・クイック」(『キャットルーキー』)
→「かすみの秘球」は投球動作が終わらないうちに球が来るもので、「背面投げ」がこれに近く、『ドカベン』で土佐丸高校の犬神が山田に対して使った。
→「ライフル・ショット」は超長身ピッチャーが球離れを遅くすることによってストレートの威力を増すと同時に、そのリーチの長さをフルに活かして通常のピッチャーよりも遥かにホームベースに近い位置から投げ込むことによって、実際の球速以上に打者に速く感じさせタイミングをとりづらくする高威力のストレート。
→「トルネード・クイック」はトルネード投法の下半身の動きを省略し、足を上げると同時に上体は後方へひねり、上半身の柔軟性だけで投げ込むことにより完成した超クイック投法で、バッターのタイミングをずらす“モーションによる高速チェンジアップ”。けん制の下手さをカバーするために生み出された。
その一種として、1970年代後半〜1980年代にコロコロコミックに連載されていた「燃えろクロパン」に空中で停止したボールがタイミングをずらしてホームベースを通過するという「スクランブルエッグ」という魔球が登場する。
「水流投法」(『父の魂』)→「エビ投げハイジャンプ魔球」(『侍ジャイアンツ』、これも「エビぞりハイジャンプ投法」と呼ぶべきもの)→「背負い投法」(『ドカベン』)
他に、「ありもしない魔球をあるように思いこませる」といった心理的な魔球も存在し、「ドカベン (プロ野球編)」で山田太郎が考案した、渡辺久信のブルースカイフォーク(三振をとったフォークはすべて魔球だと言い張る)などが代表例。同じ水島作品のドリームボールなども、そんな魔球が本当にあるのかどうかで球界全体を煙に巻いた、心理的魔球の要素が大きかった。
もし、現実の野球界で消える魔球や分身魔球が出現した場合、主審はストライクかボールか判定しにくく、禁じ手にされるか自粛を要請されるかも知れない。また捕手にとっても捕りづらく、捕れる捕手が限られると、その捕手が負傷または移籍すると終りになる。 特に、捕手の手前で普通の球に戻るのでなく、捕手が眼力で(本物の)球の位置を見極める場合、その捕手が他球団に移ると簡単に打ち込まれる。
『侍ジャイアンツ』で捕手の八幡太郎平は番場蛮の分身魔球を捕球するため動体視力を鍛えたが、もし八幡が打席に立ったら分身魔球を打つことも可能だった(実際は、そうなる前に物語が終わった)。アニメの最終回で番場が投げた「ミラクルボール」の分身はすさまじく、さすがに八幡もミットでの捕球をあきらめ、胴体でボールを止めた。
『新・巨人の星』で星飛雄馬が投げた「蜃気楼の魔球」は「球が3つに見える分身魔球」で、捕手は本物のボールの影を見て捕球していた。当然、これは打者が魔球を打つ原理でもあり、花形と左門はそこに気づいて魔球を打った。
星一徹の魔送球は本来、投手が打者を打ち取るものではなく、のちに飛雄馬の消える魔球に発展。巨人の森と伴の2名以外はプロの捕手でも慣れないと捕れず、森も最初は落球している。番場蛮のハラキリシュートは打者がバントの構えをすると捕手が落球し、オールスターで田淵が番場に「2ストライクのあとのハラキリは遠慮してほしい」と要請したらしい。
犬飼知三郎の対角線投法も似たようなもので、殿馬がこれを打とうとして片足が打席から出てアウトになってしまい、山田は足を横にずらして打ち込んだ。
『ワイルドリーガー』に登場する魔球・エリプスハンターは単純に言ってしまえば「非現実的なほど極端に曲がるカーブ」なのだが、球質が異常に重く(ミートした瞬間の衝撃で打者の足の骨が破壊されるほど)球速が変動する事で打者の視界から一瞬消える特性を併せ持つ(盲点に入るものと思われる描写がある)。しかし当然ながら捕手の視界からは軌道は見えており、タイミングを計る事でミートも可能な点からボールが物理的に消滅している訳ではない。また、エリプスハンターを投げる主人公・浅野夏門が右投げであるため、必然的に左打ちの打者はその軌道をある程度見切ることが可能(作中初めてバットに当てた打者は左打ちの前田智徳である)。更にこの魔球にはマウンド上で極限まで集中力を高めるルーチンが必須であり、浅野夏門はこれ以外に変化球を持たない(しかも「エリプスハンター!」と大声で予告する場合さえある)ためフェイントなどの戦略的要素は限りなく薄い。
柳田理科雄は『空想科学読本2』で『巨人の星』の消える魔球(大リーグボール2号)を、『空想科学漫画読本』で『侍ジャイアンツ』の「ハイジャンプ魔球」と「大回転魔球」を、『空想科学漫画読本4』で大リーグボール3号を検証している。柳田は「分身魔球については『空想非科学大全』で検証した」と書いているが、実際は忍者の分身の術を検証しただけで「分身魔球」を扱っているわけではない。
柳田はハイジャンプ魔球について、「ジャンプして投げると足の踏ん張りが効かず、球威が落ちる」「球の落ちる角度を急にするなら、ジャンプするよりマウンドから高い角度にボールを投げ上げるほうがいい」と書いている。この提案による投げ方は既に『大甲子園』で犬飼知三郎の「マウンテンボール」として描かれている。
現実の野球で魔球という言葉が使われたのは、1930年代、1940年代を中心に大阪タイガースなどで活躍した若林忠志の投球が「七色の魔球」と言われたのが最初とされている。
1951年に名古屋ドラゴンズの杉下茂が藤村富美男、川上哲治、小鶴誠とAAA級パシフィックコーストリーグに所属するサンフランシスコ・シールズの春季キャンプに参加した時、杉下がフォークボールを投げることが川上らの知るところとなり、「杉下は『フォークボール』という魔球を投げる」と日本でも評判になった。
現代の野球において最も魔球に近いものといえば、フィル・ニークロなどが得意とした「ナックルボール」が挙げられる。このボールは不規則な変化を起こすため、打者のジャストミートはおろか捕手でさえ捕球が困難とされる。一見するとスローボールなのに強振するバットでは、とらえ難いという点では「大リーグボール3号」のコンセプトと合致する。
ちなみに1980年代にスプリットフィンガードファストボールが「現代の魔球」としてメジャーリーグより持ち込まれ、一世を風靡したが、日本ではフォークボールのほうが多用されて現在では日本では廃れ気味である(ただし一部でフォークボールがSFF化したと言う意見もある)。
2006年末に松坂大輔のボストン・レッドソックス移籍が正式に決定した頃から、ジャイロボールが新たな魔球としてアメリカ合衆国のメディアを中心に各方面で注目されるようになった。
また、特定の球種に対するものではないが特定の選手の特に優れた変化球を魔球と呼ぶ場合もあり、古くは上記の若林忠志の「七色の魔球」や沢村栄治の「三段ドロップ」(当時は曲がればカーブ、落ちればドロップと球種の呼称自体が少なく魔球としか言いようがなかったとも考えられる)、近年では伊藤智仁のスライダーや佐々木主浩のフォークボール、工藤公康や今中慎二のカーブなどが分かっていても打てない球として挙げられる。さらに現在全盛期の選手を挙げれば、千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介投手のシンカーを、同チームで選球眼に定評のある橋本将捕手が『あれは魔球です!』とコメントしたことがある。
奇抜な投法としては、小川健太郎が王貞治に対して使った「背面投げ」が有名。また、打者への投球ではないが板東英二が「どうにかして走者を刺せないものか」と苦心した結果、プレートを外した瞬間に横回転しつつジャンプして牽制球を投げる技を考案していた(結局実戦では使わず終いだったという)。
魔球の対抗概念として、フィクションの世界には「常識からは外れた極めて異質な打法」がしばしば登場する 。野球のルール上、打者の打撃フォームには投手の投球動作ほど制約がないためもあって、ある意味魔球より荒唐無稽に走る傾向も強い。
『黒い秘密兵器』では主人公のさまざまな秘球に対し、バッターも「回転打法」、「さざなみ打法」、「ブーメラン打法」などで対抗した。『父の魂』では「水流投法」に対する「水流打法」が現れた。
『巨人の星』における、花形満の「ノックアウト打法」やアームストロング・オズマの「見えないスイング」の様に、特別な打ち方をするわけではないが、その打球やスイングスピードが尋常ではないものなども含めるとすれば、魔球同様かそれ以上に野球漫画に欠かせない要素のひとつともいえる。
特定の魔球に対抗するために生み出された打法も多い。花形が星飛雄馬の大リーグボール1号を打倒するため行った鉄球と鉄バットの特訓が代表的である(作中、特に打法名などはなし)。同魔球をホームランするために花形は打率を大幅に落とし、シーズン後半を怪我で棒に振るハメになるなど、この種の打法は他の普通の投球には対応できないデメリット面とあわせて描かれることが多い。
『黒い秘密兵器』の「回転打法」は『侍ジャイアンツ』の「大回転打法」を経て、『ドカベン』の「秘打白鳥の湖」に発展している。 『ドカベン』では他に、ゴルフのようなスイングから超特大の飛球を上げ落球を誘う「通天閣打法」も登場している。
『侍ジャイアンツ』では、「エビ投げハイジャンプ魔球」に対する「ハイジャンプ打法」、「大回転魔球」に対する「大回転打法」などが描かれた。「ハイジャンプ魔球」は球の角度が急になるだけのもので、打者がハイジャンプする策は、理論上、(ジャンプするタイミングと高さが投手と一致さえすれば)普通の直球を打つのと同じになって打ちやすくなる。しかし、投手が「大回転」したからといって打者が「大回転」しても、なおさらボールを打つタイミングがむずかしくなるだけである。
これらに「魔球」のような総括的名称はないが、強いていえば水島新司の『ドカベン』作中の「秘打」がそれにあたる(ただし、作中人物殿馬一人の独自の打法とされており、作中においても一般的名称ではない)。殿馬の「秘打白鳥の湖」は一種の「大回転打法」である。また『野球狂の詩』で岩田鉄五郎が相手投手・力道玄馬の投球フォームを真似た「秘打鬼殺し」を披露している。それ以外で「秘打」という名称は「魔球」ほど一般的にはなっていないが、『剛Q超児イッキマン』など一部の他作品でも使用されている。
こうした特殊な打法に付随して、野球漫画ではしばしば特別なバットも登場する。公認野球規則が定めるバットの基準を逸脱する様な例はさすがに希で、長さや重さ、グリップのデザインなどが通常と違うだけのものが大半を占める。あるいは、材料となった木が特別だったなどの理由づけがされる場合もある。
規則の盲点をついたり、あるいは最初からこれを無視したりした奇抜なバットは、多くの場合悪役の用いるところとなる。「アストロ球団」におけるヴィクトリー球団の選手たちが用いたバットが有名。
野球作品ではないがアサヒ飲料「WONDA」のCMでタイガー・ウッズがゴルフの応用で打球に鋭いバックスピンをかけ、落ちたボールがホームベースに向かって勢いよく転がり野手の捕球を逃れるというものがあった。このCMでは野手たちがボールを追いかけている間にウッズはベースを回るも、結局ホームベースまで戻ってきてしまったボールをキャッチャーが捕り、ウッズはホームでタッチアウトというオチとなっている。
バズーカ・チャンネル(ガンマウェーブ、竜巻蹴足、弾丸(ブリット)ボール)(『超機動暴発蹴球野郎 リベロの武田』)
『サインはV!』と『アタックNo.1』で魔球が登場。『サインはV!』では「魔のX攻撃」、「稲妻落とし」、「稲妻サーブ」など、魔球だけでなく攻撃の複雑さが目立った。『アタックNo.1』の「竜巻落とし」は最終回で分身魔球に発展。「急角度で上から落ちる魔球」と「分身魔球」の融合という意味では、番場蛮の「ミラクルボール」がこれに近い。
『エースをねらえ!』では、宗方コーチが「基礎訓練がつらいからと魔球などのありえない技に頼ろうとするな」とこれを全否定するシーンがある。ただし同作のアニメ版では「竜巻サーブ」という魔球が登場した。
『テニスの王子様』では様々な魔球?(一般的には必殺技)が登場する。本作品に登場する魔球?の解説にジャイロ回転と言う単語が使われていることから、作者が野球を意識しているのがうかがえる。

[ 30] 魔球 - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E7%90%83

僕は魔球が大好きである。凡そマンガの世界における必殺技が大好きなのだが、その中でも“魔球”は代表的な分かり易さを持っていると思う。ド派手で、破天荒で、宇宙の法則を捻じ曲げたような魔球もさることながら、さらに僕を魅了して止まないのは、その無茶なピッチャーから無茶な魔球を突きつけられた、打者たちのその“魔球返し”の解答である。無理無茶な魔球を打ち崩すためには、さらに無理無茶な打法を編み出さなくてはならない。そして一概には言えないけれども、魔球の方は単に無理無茶な根性論で編み出すことができても、それを返す魔球返しは単に根性で見切って打ち返したというワケにはいかないのだ!マンガ的に!なんらかの理論的解答が必要なのである!…何と言うかそこに知恵と勇気の素晴らしさを見てしまうのだなあ(感)根性だけじゃ打てない。理屈だけでも打てない。「理論上は可能かもしれないけど人体には無理でしょう」という情況に果敢に挑む彼ら(今回の話は彼女らですが)の姿に感動し、それを表現するマンガの素晴らしさを感じてしまう。
残念なことに、最近その魔球を見られる機会がめっきり減ってしまったような気がする。どうもリアル・スポーツ志向というか、そのスポーツにおけるルールと戦略を練った描き方がもてはやされ、いわゆる魔球的なモノはそのスポーツに対する冒涜、あるいは“逃げ”と受け取るような、昔からあった風潮ですが最近めっきり強くなったのか…、とにかく僕の胸のすくような魔球とその勝負はなかなか拝めないようになってしまった気がする。あったかもしれないんだけどね(汗)最近の記憶として残っているのは「砂漠の野球部」のサイレント・カーブだったか…。眉月の満身創痍の“大回転魔球返し”に涙し、野球ルールを無視して“殺人L字ボール”を返した川上監督の心意気に心打たれた僕としては、最近のマンガ流行自体が魔球を拒むものだとしたらちょっと寂しかったりする。
そんな中で、最近“魔球勝負”としていたく感動した勝負がある。今回とりあげる女子ソフトボールマンガの「ウインドミル」がそれなのだが、実はこの「ウインドミル」を“魔球マンガ”と思われてしまうと、っちょっと違うかな?という気がする(汗)どちらかと言うと先に上げた、女子高生球児たちの青春グラフティという趣が強い。にもかかわらずこの物語のクライマックスは“魔球勝負”で締め括られていて(笑)連載中、普通に楽しんでいた僕のボルテージはここに来て俄然盛り上がってしまったのだった(笑)
ピッチャーは本編の主人公・広沢滝。投げられる魔球は“滝ボール”。僕は魔球と呼んでいるが、実はそれほど魔球というレベルに達してはいない。すごいスピードで投げ込まれるナックルといったところだろうか?速くてブレるのでなかなか打てないが、当たる時は当たるといった程度のものが、“滝ボール本気(マジ)”になってようやく誰にも打てない、魔球レベルに達した状態のものだ。
バッターはオリンピック・アメリカ代表のジーン・マクレガー。バットを振った瞬間はぼ9割がホームランという怪物で、滝ボールは難なく打ち崩したが、“滝ボール本気(マジ)”に対してはノーヒットとなってしまう。そこで生み出された“滝ボール本気(マジ)”を破る解答が怪打法“メイジ・スマッシャー”だった。“滝ボール”が魔球となったのはむしろ相手役である“メイジ・スマッシャー”が生み出された時といっていいかもしれない。
“メイジ・スマッシャー”は、バッターボックス前面いっぱいに立ちさらに前に倒れこみ、“滝ボール”の変化が最高潮に達するその前にボールを叩くというもの。前方に転んだ状態になるので、もうホームランにするしかない!という打法である。あまり打つ機会はなかったが、これはほぼ間違いなく“滝ボール本気(マジ)”をホームランにするところまで行く。さて!ここからが本番で“滝ボール本気(マジ)”は間違いなく打たれると感じた滝が、次に編み出した魔球は“滝ボール本気本気(マジマジ)”。これは変化前のポイントをマクレガーから離すため、一度踏み込んだ足を後ろに踏み切って後方に飛んで投げるというもの。ここまで来るともうかなり魔球っぽい(笑)そんな無理な姿勢でまともな球が投げれるのかというと、投げれちゃうらしい。しかも魔球で(笑)(しかし、バク転するように投げるこの球は下手投げのソフトボールとマッチしていて、なかなか美しいフォームでハッタリも効いていると僕は思ってもいます(笑))そんなワケでこの“魔球勝負”。1ミリでも前に倒れこみたいマクレガーと1ミリでも後ろにのけぞりたい滝が、奇声を発しながら前と後ろにズッコケる異様な勝負へと発展して行くのです。
そして物語の最終回、試合も決勝の最終回、最後の一投において、不様に転んでユニフォームを汚していたこの二人は遂に互いに技を完成させてしまう!前方にコケていたマクレガーは、スパイクを地面に突き立てることによって身体を固定し完全なるスイングを生み出す。そして後方にズッコケていた広沢滝は、振り上げた脚がキレイに弧を描いてスタリッと着地する。勝負の行方は敢えて書きませんが、これがちょっとよかった。最終回に技が完成するってすごく感動的じゃありませんか。そんなワケで“魔球勝負”がなかったら「手堅い作りだね」くらいしか言わなかったであろう、この「ウインドミル」。ちょっとお気に入りの作品なのです。

[ 31] 魔球勝負
[引用サイト]  http://www.websphinx.net/manken/labo/clmn/j_maq.html



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