アクシデントとは?
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リスクマネジメントの第1プロセスは「リスクの把握」です。その方法としてはいくつかの種類がありますが、一番多くの施設で用いられているのはインシデント(アクシデント)レポートです。 インシデント(アクシデント)レポートとは施設などの組織において発生したインシデント(アクシデント)について、職員からの自発的な報告を待つ方法で、組織における事故の5〜30%の出来事について把握可能であるといわれています3)14)。米国ではリスクマネジメントの情報源として30年以上使用されており、その過程でいくつかの問題点が明らかになってきました(表1)。 インシデント(アクシデント)レポートには効果的な分析を行うための十分で詳しい情報が記載されていない。 したがって、これらの問題点により過少報告(under reporting)となり現実を把握できない恐れがあるといわれています15)。つまり、これらの現実を踏まえインシデントレポートだけに依存しないリスク把握方法も考慮する必要があるのです。 一方、日本では主に看護部の取り組みとして、事故報告書によるリスクの把握が行われていましたが、最近ではリスクマネジメントという視点から職員すべてが記入できる報告書の作成などの取り組みも多くなっています。 しかし、日本の場合は用語の定義からも分かるようにインシデントはヒヤリ・ハット事例を示すため、インシデントレポートというと実際に事故には至らなかった事例のレポートであることが多いようです。アクシデントとなった実際の事故事例はアクシデントレポ−トあるいは事故報告書と呼ばれ、別書式となることもあります。 インシデント・アクシデントレポートの様式にはチェック式、記述式、それらの併用があり、施設の特性やレポートの活用方法に基づいて作成されていますが、それらの具体例を提示します。 国立循環器病センターで使用されているインシデント・医療事故レポートとその取扱い要領です。レポートはほとんどがチェック項目で事故の種類や原因が詳細に分類されています。 滋賀県立成人病センターで作成されたインシデント・アクシデントレポートです。レポートの形式は主に記述部分が占めています。また、インシデント・アクシデントの分類の定義も示されており、報告者の共通認識を保てるような工夫がなされています。 日本赤十字社医療センターで作成されているインシデント・アクシデントレポートの目的・記入方法と、インシデント・アクシデントレポートです。インシデント・アクシデントレポートは、チェック式と記入式が取り入れられています。 オカーレンスレポートとは重大な事故など、あらかじめ報告すべき事故を定めておき、そのような事故が発生した場合には自発的に必ず責任者やリスクマネージャーに報告する方法です16)。具体的な事故は部門別に定められており、米国のある病院の手術部においては「ガーゼ枚数や手術用具、針の数が術前と合致しない場合」「挿管や抜管時に歯や口唇が損傷した場合」「手術中に死亡した場合」「大量出血が起こった場合」など20項目が提示されています18)。このレポートはエラーの有無にかかわらず重大な事態の発生を管理者が把握するために行われます。この方法を用いることで組織における事故の40〜60%の出来事について把握可能であるといわれています3)14)。 オカーレンススクリーニングとは事前に把握する出来事について基準を作成し、その基準に合わせて該当する出来事を診療記録などから収集する方法です。この方法を用いることで組織における事故の80〜85%の出来事が把握可能であるといわれています3)14)。ただし、この方法は費用と時間が非常にかかる割には、発見される事例が限定されるため効率的ではないという報告もされています16)。ある研究では、医療事故(adverse medical events)の把握について、医師による報告とチャートレビューによる比較を行ったところ、2種類の方法による事故の発見率に差は認められなかったが、費用の点では医師による報告のほうが安いことが明らかとなっています。さらに、医師による報告の事故事例は防止可能なものが多く、医療の質を向上させることができるため効率的であるという結果が出ています17)。 インシデント・アクシデントの中でも特に重大で緊急性を要する場合に使用するもので、リスクマネージャーに直接報告する方法です。その具体的な例としては「予期せぬ患者の死亡」「自殺、自殺企図、自傷行為」「転倒・転落による傷害」などが挙げられています16)。 院内感染のサーベランスや手術の合併症・死亡率など各種委員会でのデータを活用し、オカーレンススクリーニングと併用すると、組織における事故の80〜85%の出来事が把握可能であるといわれています3)14)。 インシデントの種類によっても異なりますが、例えば薬剤エラー(medication errors)のリスクの把握には与薬業務を直接観察することで、エラーの有無からリスクを把握することができます。この方法の発見率は高いですが、高コストで与薬の段階でのエラーしか発見することができず、多くは患者への影響レベルが低いものになってしまうという限界があるといわれており、現実的とはいえません11)。また、処方の段階でのリスクはコンピューターによる入力で把握することができます。ある研究では医師がコンピューター入力により処方することで、薬剤エラーがコンピューター導入前の約55%に減少し、また、患者に影響のない薬剤エラーに関しては84%減少したことが明らかになっています19)。 インシデント・アクシデントレポートの報告ルートは施設により異なります。レポートの種類により異なることもありますが、基本的には病院管理者、各部署や部門の責任者、リスクマネージャーに提出するか、ポストなどに投函する方法があります20)。 レポートの報告ルートはレポートの種類や患者への影響レベルにより異なることもあります。つまり、ヒヤリ・ハット事例と実際に生じた事故事例の場合では報告基準が異なるということです。 西城町国民健康保険直営西城病院で作成されたリスクマネジメントの報告ルートに関する通知です。患者影響レベル、報告判断基準、報告ルートが図表化されわかりやすく記載されています。 トヨタ記念病院で作成されている事故報告制度についての冊子です。インシデント、アクシデントの用語の定義から、報告書の様式、その報告基準、報告ルート、取扱いなどが大変わかりやすくまとめられています。 綾部市立病院で作成された事故報告基準と報告書記載要領です。事故は6段階に分類され、その程度により報告方法が示されています。また、記載要領では具体的な内容が記され、記入し易さに配慮されています。 船橋市立医療センターで作成されている医療事故防止対策マニュアルの中で示されている報告ルートです。職種別に示されています。 約800床の病院で作成された看護事故報告についての資料です。報告目的、報告基準、報告時期、ヒヤリハット報告書と事故報告書の2種類に分けて記録の手引きが記されています。報告時期に関しては患者影響レベルにより期限が定められています。 インシデント・アクシデントレポートの目的は同様の出来事が再発しないようなシステムを構築するための情報を提供することです。つまり、レポートが活用されないようであれば役立たないということです。例えば、インシデントレポートが反省文になっている場合、どのように活用することができるでしょうか。レポートした個人に反省だけを求めるようなレポートではいくら収集しても、システム改善にまでつなげることはできません。 ここで、航空業界ではインシデントレポートの質と量を決めるには5つの要因があるといわれています21)。 これらの考えは医療界にも応用可能であり、上記の内容を踏まえて報告システムを構築する必要があります。 |
[ 142] リスクマネジメントの実践
[引用サイト] http://www.nurse.or.jp/tools/support/risk/risk_4.html
