基づくとは?
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がんは、予防することができる病気です。がんの原因やハイリスク集団が明らかにされ、具体的な予防法が開発され、がん予防対策が効果的に実施されれば、がんの発生率とそれに続く死亡率は確実に下がるでしょう。 これまでの研究から、がんの原因の多くはたばこや飲酒、食事などの日常の生活習慣にかかわるものだとわかっています。1996年にハーバード大学のがん予防センターから発表されたアメリカ人のがん死亡の原因では、喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)の合計で全体の68%になりました。これらのがん死亡は、生活習慣の見直しによって予防できたものと考えられます。 生活習慣や環境は国によって違い、がんの原因の割合も国によって異なります。しかし、生活習慣の改善で多くのがんが予防できることについては、日本でも米国と同様です。社会全体の対策として、そして一人一人の行動として、偏(かたよ)りのない科学的根拠に基づくがん予防法の見極めが、重要な課題となります。 がん予防では、他のさまざまな条件とのバランスを考えて、がんのリスクをできるだけ低く抑えることが目標になります。これさえ守れば絶対にがんにならないという方法はありません。がん予防の情報は、日々さまざまな場所から発信されていますので、情報の質をよく見極める必要があります。食品や栄養素はバランス良くとり続けることが前提であり、これがいい、あれがいいという情報にいちいち振り回される必要はありません。生活習慣としての食習慣を改善することと、1つの食品をそのときだけたくさん食べることは、全く違います。 また、通常手に入らないような特別な食品を、高いお金を出して買う必要もありません。がんをはじめとする生活習慣病の予防は、それほど簡単に劇的な効果が期待できるというものではありません。毎日食べるもの、毎日することに不健康な偏りがないかどうか習慣を点検し、少しずつ改善し、慣らし、継続するという地道な努力を、ストレスにならない範囲で工夫するというのが基本的な考え方です。 例えば、いくら運動が良いといっても、ほとんど運動習慣がない人が翌日からいきなり激しい運動をするのは危険です。最終的な目標を決めて、毎週少しずつ時間や量を増やし、体と相談しながら進めることです。歩く、走るだけでなく、水泳やジム、球技等、幅広い候補の中から、自分に合った楽しいと思える運動を見つけることが大事です。また、買い物や通勤経路を運動量増加の方向で考えるなどの工夫も大切です。 食事でも同じことで、これがおいしいと思っているものをいきなりガラっと変えるのではなく、週単位、月単位のこんだての中で回数や量を少しずつ変えてみる、あるいは食べ方を工夫してみることが必要でしょう。禁煙外来でニコチン中毒を治療するのも、たばこをやめるためには必要かもしれませんし、体重管理には栄養士の指導が必要になるかもしれません。 いずれにしても、まず生活習慣の点検のための材料として、科学的根拠の確かな情報を集めて、各個人の現状と照らし合わせることが大切です。 情報源として、学会や論文等による研究発表が引用されることがありますが、そのすべてが科学的な根拠に基づいているというわけでもないのです。科学的根拠が確かな発表でも、研究結果の都合の良い部分だけを別の文脈の中で利用するというのは、よくある情報操作の手口です。 また、たとえ良心的に引用されているとしても、その情報を適用するためにはさまざまな方法があること、またそれぞれの方法で、科学的根拠としての意味合いに差があることを知る必要があります(表1)。 ヒトを対象にして行われる疫学研究では、研究対象や方法にさまざまな偏りが入り込む余地が少ないほど、また、研究結果における偶然性がより少なくなるように工夫された方法ほど、信頼度が高いと位置づけられます。また、同様のテーマに対して複数の信頼性の高い研究が報告されていて、その結果がいつも一致していれば、まず間違いないといえるでしょう。信頼のおける方法で行われた研究では、ある要因によって特定のがんのリスクは何倍になるのかという具体的な結論が述べられ、それが偶然の結果ではないという、統計学的な根拠も数値で示されます。 主な疫学研究のタイプを表1に示していますが、信頼度の高い順に、無作為化比較試験、コホート研究、症例対照研究となります。最も理想的なのは、無作為割付による介入研究の結果を待つことです。ある要因を無作為に割付けることにより、偏りなどの要因が均等になることを期待できます。そうすれば、その要因による効果を純粋に検証することができます。ただ、多くのボランティアの参加を必要とし、大変な費用と人手のかかる方法ですので、すべての疫学研究には使えず、対象は限られているのが現状です。こうしたタイプの研究から、乳がんのリスクが高い欧米の女性で、タモキシフェンという抗がん剤に乳がん予防効果がある(同時に、子宮体がんのリスクが上がる)ことや、喫煙者などの肺がんリスクが高い欧米の男性では、高用量のβ-カロテンに肺がん予防効果がなく、かえってリスクがあがってしまうことなどが示されています。 コホート研究では、大規模な対象集団を設け、長期にわたって観察をします。まず、要因についてアンケート調査などで把握したあとで、がんの発生を追跡調査するという手法で、偏りが入りにくく、比較的信頼性の高い方法です。しかしながら、ある要因とがん発生との間にみられた関連が本当は第三の要因(交絡要因(こうらくよういん))によるもので、浮かびあがった要因とがんの関連が、見かけ上のものであった可能性を否定できないという限界があります。コホート研究を根拠にがんの予防法を開発する場合には、動物や試験管内での実験等により、そのメカニズムに対する裏づけを得られていることが必要になります。症例対照研究には、結果が早くわかるという利点があります。一方で、適切な対照の設定が難しく、また、要因について過去に遡(さかのぼ)って調べなければいけないので、さまざまな偏りが入り込む余地が多く、信頼性が必ずしも高くない方法です。このタイプの研究結果が根拠として示された場合には、まだ最終的な結論ではなく、問題提起がされた段階だととらえるべきでしょう。 これに対して、動物実験や細胞などを用いた試験管内実験は、ある化学物質の毒性を確認する場合などには有用です。安全性が最優先される予防原則では、危険のマージンを大きくとって、人への毒性が疑わしいものは排除していかなくてはなりません。そのため、動物や細胞レベルで毒性が確認されたら、人でも同じ結果になるかもしれないととらえる必要があります。人への予防効果を確認する場合は、その利益が疑わしいものは採用すべきではありません。動物や細胞レベルで予防効果が確認されたとしても、人で同じ結果になるとは限らないととらえる必要があります。ただし、このような実験室での研究は、無作為化比較試験の手法を標準とし、再現性も確認されている場合が多いために、起こった現象自体の信頼性は高いです。ヒトを対象とする疫学研究で検討すべき課題を提示したり、疫学研究の結果を解釈したりするためには、欠かすことのできない科学的根拠の構成要素となります。しかしながら、その根拠が実験室からのものだけであれば、われわれ人間のがんリスクになるか、あるいは予防に有用であるかについて判断するには、慎重である必要があります。 普段から耳にする機会が多いのが、誰かの経験談や主観的な意見です。このタイプの話題は具体的で説得力があるようですが、実際には何の科学的根拠もありません。 がん発生と生活習慣のかかわりでは、どのリスク要因や予防要因が、どのがんに対し、どれくらいの可能性で関与しているか評価が行われます。世界保健機関(WHO)や国際がん研究機構(IARC)等によって組織された委員会では、世界各国からがん研究に携わる専門家が召集され、これまでに発表された科学論文に基づいて、がん予防に本当に有効であるか否かについて討議されます。 通常、このようなリスク評価の結論は、有効であるか否かのいずれかに帰結させることは不可能であると考えられます。そこで、予防効果の確実性について、“確実”、“可能性大”、“可能性あり”、“証拠不十分”等、いくつかの段階にランク分けして示されます。例えば、WHOの「食物、栄養と慢性疾患の予防」と題する報告書では、“確実”と評価されるためには、「数多くの疫学研究が、一致して予防効果を示しており、その中には、複数のコホート研究、できれば、十分な対象者数と研究期間を有した無作為化比較試験が含まれていて、その作用メカニズムに関して生物学的に説明可能である場合」であり、“可能性大”は、「複数の疫学研究が、ほぼ一致して予防効果を示しているが、対象数や研究期間が不十分であったり、追跡が不完全であったり、研究自体の数が少ないなど、確実と判定するには足りない状況で、動物実験の結果は、その予防効果を支持するデータであり、その作用メカニズムに関して生物学的に説明可能である場合」と記されています。 すなわち、コホート研究や、できれば無作為化比較試験を含む複数の疫学研究によって、「その食品を多くとっている人たちのほうが、がんになる確率が低い」という一致した成績が示されなければ、科学的に“確実”とはいえないことを意味します。 WHOによる食事関連要因に関する評価に、IARCによるたばこに関する評価の結果を加えた概要は、表2のとおりです。喫煙は、肺がんだけではなく、他の多くの部位のがん(口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、食道、胃、膵臓(すいぞう)、肝臓、腎臓、尿路、膀胱(ぼうこう)、子宮頸部(しきゅうけいぶ)、骨髄性白血病)のリスクを確実にあげます。また、他人のたばこの煙(環境たばこ煙、あるいは受動喫煙(じゅどうきつえん))も、肺がんのリスクをあげるのは確実とされています。喫煙以外の要因とがんとの関連で確実だといえるのは、運動不足(結腸)、肥満(食道(腺がん)、結腸、直腸、乳房(閉経後)、子宮体部、腎臓)、飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、アフラトキシン(カビ毒の一種で、保存状態の悪いトウモロコシやナッツ等の穀類に混入していることがある)(肝臓)、中国式塩蔵魚(中国の一部地域で食べられている特殊な処理をして作る魚の塩漬け)(鼻咽頭)、また、可能性が高いと思われる関連は、野菜や果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸)、運動(乳房)、貯蔵肉(結腸、直腸)、塩蔵品および食塩(胃)、熱い飲食物(口腔、咽頭、食道)等であると報告されています。 また、リスクをあげる可能性があるものとして、動物性脂肪、ヘテロサイクリックアミン(肉を高温で調理するとできやすい化学物質)、多環芳香族炭化水素(たかんほうこうぞくたんかすいそ:炭焼きやスモークした食品に多く含まれる化学物質)、ニトロソ化合物(加工食品などに多く含まれる化学物質。また、唾液中の亜硝酸(あしょうさん)や亜硝酸塩が、タンパク質に由来する二級アミンという物質と体の中で化学反応を起こすことによってもできる)。 リスクを下げる可能性があるものとして、食物繊維、大豆、魚、n−3系脂肪酸、カロテノイド、ビタミンB2、B6、葉酸(ようさん)、B12、C、D、E、カルシウム、亜鉛、セレン、非栄養性植物機能成分(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン)等があげられていて、さらなる研究データの蓄積が求められています。 表には記していませんが、ある種のウイルスや細菌の持続感染も、がんのリスクをあげることがわかっています。B型やC型肝炎ウイルスは肝臓がん、ヒト・パピローマ・ウイルスは子宮頸がん、ヒトT細胞性白血病リンパ腫ウイルスは成人T細胞性白血病や悪性リンパ腫の原因ウイルスであることがわかっています。また、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染は、胃がんのリスクを確実に高くするとIARCによって評価されています。ただし、これらのウイルスや細菌の持続感染者のすべてががんになるわけではありません。なぜある人はがんになり、他の人はならないのか、遺伝的な要因を含めてその違いを知り、感染者のがんリスクを軽減するための方策を見いだす研究が重要です。 さらに、ある種の化学物質、混合物、放射線や紫外線などの物理環境、あるいはホルモン剤や化学療法剤などの薬剤には人への発がん性があることが、職業や環境汚染等により多く暴露した人たちの観察から示されています。これら既知の発がん物質に対しては、排除や暴露量の制限等、法律などにより規制されることが前提になります。しかしながら医療用の放射線や薬剤については、それを用いることによる有益性とのバランスでの判断が必要になります。 WHOは、これらの精度が高い科学的証拠によって、“確実”、あるいは“可能性の高い”と評価された要因に基づいて、がん予防のための食事指針を提案しています。成人期での体重維持、定期的な運動の継続、飲酒はしない、中国式塩蔵魚の摂取や塩蔵食品、食塩の摂取は適度に、アフラトキシンの摂取を最小限に、野菜や果物を少なくとも1日に400gとる、ソーセージやサラミなどの保存肉の摂取は適度に、飲食物を熱い状態でとらない。以上の8項目をあげています。 しかしながら日本人のがん予防を考えた場合、国際的にはヒトがんのリスクとして“確実”、あるいは“可能性の高い”と評価されている要因でも、量的な面も含めて日常的に遭遇する可能性の低いものには、特段の注意を払う必要はないでしょう。例えば、日本では産生されることがほとんどなく、食品衛生法により規制されているアフラトキシンや、食べる習慣のない中国式塩蔵魚の制限は、あえて取りあげる必要はないでしょう。また肥満のみならず、やせすぎもがんのリスクをあげることが、日本人を対象とした大規模コホート研究で示されています。体重維持のための具体的数値目標などは、日本人のデータに基づいた指針づくりが必須になります。 禁煙とWHO食事指針に基づく日本人の実状を加味した食習慣改善が、現段階では、個人として最も実行する価値のあるがん予防法といえるでしょう。さらに、感染経路が明らかなウイルスの感染予防も重要です。日本人にとって適切な、現状において推奨できるがん予防法を以下に示します(表3)。この内容は、今後新しい研究の成果が積み重なることで内容が修正されたり、項目が追加あるいは削除されたりする可能性があることが前提となります。 禁煙は、最も確実ながん予防法です。非喫煙者に対する喫煙者のがん全体のリスクは、日本人を対象とした5つのコホート研究に基づくと、1.5倍程度と推計されています。すなわち、喫煙者がたばこをやめれば、がんになる確率を2/3にまで減らすことができることを意味します。禁煙は、がんだけではなく循環器や呼吸器疾患、糖尿病等多くの病気の予防につながります。日本から喫煙者が1人もいなくなれば、日本人のがんの約20%(男性では30%程度、女性では3%程度)は予防可能であるとの推計もあります。また、他人のたばこの煙を吸わないようにすることにより、肺がん予防に結びつくのみならず、心筋梗塞(しんきんこうそく)や肺炎等の予防にも役立ちます。 ●適度な飲酒。具体的には、1日あたりエタノール量に換算して約23g以内。飲まない人、飲めない人は無理に飲まない。 飲酒は、1日あたり純エタノール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度)の量までなら、がん全体のリスクを有意にはあげないものと考えられます。しかしながら、日本人男性を対象としたあるコホート研究に基づくと、1日2合以上の飲酒で40%程度、3合以上の飲酒で60%程度リスクがあがることが示されました。日本人男性のがんの13%程度が、1日2合以上の飲酒習慣によりもたらされているものと推計されます。日本人男性を対象とした4つのコホート研究を併合した解析でも、1日3合以上の飲酒で60%程度リスクがあがることが示されています。その一方、ある程度の量の飲酒は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げる効果があることが知られていますので、節度ある飲酒が望まれます。しかしながら、飲酒習慣がなかった人が飲酒することによる健康影響は不明であるのみならず、最近では、飲むとすぐに顔が赤くなったり、胸がドキドキしたりするような人は、特に飲酒による食道がんのリスクが高くなるという報告もあります。飲まない人や飲めない人の飲酒は勧めません。 食事については、これをとっていればがんを予防できるという単一の食品、栄養素は、現状ではわかっていません。また、とりすぎるとがんのリスクをあげる可能性がある食品中の成分、あるいは調理、保存の過程で生成される化学物質等があります。したがって、そのようなリスクを分散させるためにも、偏りなくバランスの良い食事をとることが原則になります。その中で、特に以下のことを実行するとよいでしょう。 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限に。具体的には、食塩として1日10グラム未満、特に、塩分濃度が10%程度の高塩分食品は、週に1回以内。 塩分全体の摂取量を抑えます。特に、塩からや練りうになどの高塩分食品の摂取を制限することは、日本人で最も多い胃がん予防に有効であるのみならず、高血圧を予防し、循環器疾患のリスクの減少にもつながるでしょう。1日あたりの食塩摂取量としてはできるだけ少なくすることが望まれますが、厚生労働省は日本人の食事摂取基準として、男性は10グラム未満、女性は8グラム未満を1日あたりの目標値として設定しています。 野菜や果物をほとんど食べない人では、胃がんや大腸がんのリスクが高くなる可能性があります。野菜や果物はがんだけでなく、脳卒中や心筋梗塞等をはじめとする生活習慣病の総合的な予防に有効なものとなるでしょう。具体的には、WHO(世界保健機関)の指針では、少なくとも1日あたり400gをとることを勧めています。野菜は毎食、果物は毎日食べる心がけで400g程度になります。これは、現在の日本人の平均値に当たります。 熱い飲食物はなるべく冷ましてからにして、口腔や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。欧米のように、ハム、ソーセージなどの保存・加工肉をとりすぎるのは、大腸がんのリスクを上げる可能性が高いので、なるべく控えるべきでしょう。 ●定期的な運動の継続を。例えば、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な運動、週に1回程度は汗をかくような運動。 定期的な運動は、日本人で増えている大腸がんや乳がん予防に役立つでしょう。具体的には、WHO(世界保健機関)の指針では、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な運動や、ときに早歩きなどの汗をかくような運動を加えることを勧めています。 ●成人期での体重を維持(太りすぎない、やせすぎない)。具体的には、中年期男性のBMIで27を超さない、21を下まわらない。中年期女性では、25を超さない、19を下まわらない。 BMI(体重kg÷身長m÷身長m)とがん全体の発生リスクとの関係を調べた、日本人中高年期(40〜69歳)男女約9万人を対象とした研究では、男性の21未満のやせでのみ、リスクの上昇が認められました。また、別の日本人中高年期(40〜64歳)男女約3万人を対象とした研究では、女性の27.5以上の肥満でのみ、リスクの上昇が認められました。このように、肥満とがんとの関係は、欧米とは異なり、日本人においては強い関連がないことが示されています。 その一方、肥満に関しては、糖尿病、高血圧、高脂血症等、やせればやせる程リスクが低下する病気もあります。さらに、やせによる栄養不足は免疫力を弱めて感染症を引き起こしたり、血管を構成する壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくしたりすることも知られています。 BMIとすべての原因による死亡リスクとの関係は、日本人中年期(40〜59歳)男女約4万人を対象とした研究では、男性はBMIで23〜27、女性では19〜25あたりが低いことが示されています。また、肥満と死亡リスクとの関係は、年齢によって異なることが知られていて、若い時期ほど肥満が、高齢になるほどやせが危険であることを示すデータがあります。 したがって、糖尿病や高血圧等の病気がなければ、中年期以降では男性は27を超さない、21を下まわらない、女性は25を超さない、19を下まわらない程度を保つように心がけましょう。 ●肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療の措置をとる。がんを引き起こすウイルスへの感染を予防する。 まず、地域の保健所や医療機関で、肝炎ウイルスの検査を受けることが重要です。日本人のがん死亡の1割を占める肝臓がんについては、B型あるいはC型肝炎ウイルスに感染していなければ、まれにしか発生しません。もし陽性であればさらに詳しい検査が必要ですので、ウイルス駆除や肝臓の炎症を抑える治療、あるいは肝臓がんの早期発見のために、肝臓の専門医を受診してください。 B型・C型肝炎ウイルスは、主に血液や体液を介して感染します。出産時の母子感染、輸血や血液製剤の使用、まだ感染リスクが明らかでなかった時代の医療行為による感染ルートが考えられています。現在中高年の方は、輸血や血液製剤の使用などに思いあたることがなくても、昔受けた医療行為などによって、知らないうちに感染している可能性もありますので、一度は肝炎ウイルスの検査を受ける必要があるでしょう。 現時点では、B型肝炎ウイルスは産婦人科医により母子感染予防の処置が行われています。また、日赤のスクリーニングにより、輸血や血液製剤から感染することはありません。そして、血液を伝播(でんぱ)させる可能性のある注射針などの医療器材は特別な消毒が行われていたり、使い捨てになっていたりしますので、今後は新たな感染は起こらないと思われます。 また、子宮頸がんの原因となるヒト・パピローマ・ウイルスは、性交渉により感染することが知られています。性病予防と同様の心がけが、がんの予防にもつながります。 確実、あるいは可能性が高いとまでは評価されていなくても、がんのリスク要因として疑われているものは、生活の利便性や嗜好(しこう)とのバランスを考えながら、なるべく避ける努力をしましょう。一方、がんの予防要因の可能性が示唆されているものは、不足しないように心がけるとよいでしょう。また現状では、がんを予防することが確実、あるいは可能性が高いと評価された食品や食品成分は存在しません。むしろ、通常の食事からは摂取できないレベルの高用量のβ-カロテンやビタミンEのサプリメント(栄養補助剤)は、がんや健康障害のリスクを上げることがわかっています。したがって、たとえがんを予防する可能性が示されている成分でも、サプリメントなどにより、過剰にとりすぎないようにしましょう。 がん予防法を有効に利用するには、予備知識がいくつか必要です。まず、食品や栄養素の摂取量と発がんリスクとの関係は、必ずしも単純には考えられないことがわかっています。量が増えるほど効果が上がるとは限らないのです。ある量を超えると効果が表れはじめたり、消えてしまったり、あるいは逆転してしまったりすることさえあるのです。この点は、特にサプリメントの服用に際して注意が必要です。 また、欧米の研究だけに基づく情報の場合には、日本人ではリスクやその意味合いが変わる可能性があります。例えば、日本人ではかかりやすいがんの種類が違ったり、肥満の割合が少なかったりという特徴があり、そのことを踏まえたうえで、日本人ではどうなのかを解釈する必要があります。 もうひとつ気をつけなくてはならないのは、特定のがんを予防するための生活習慣が、必ずしも健康的とはいえないという点です。例えば、肥満に関連するがんや糖尿病を予防するにはやせればやせるほど効果的ですが、やせすぎてその他の部位のがんや感染症のリスクが高くならないよう、バランスをとる必要があります。最近では、紫外線に関連する白人に多い皮膚がんをおそれて極端に日光を避けていると、体内でビタミンDがつくられにくくなり、大腸がんのリスクが高くなるとの仮説もあります。がん予防のための予防戦略は、総合的な健康と一人一人の生活習慣とのかねあいの中で、改めてその位置づけを問い直さなくてはなりません。 現段階では、研究の進んだ欧米のデータからの情報が先行していますが、日本でも現在、がん予防のために有用であろうと思われる科学的根拠が蓄積されつつあります。がんをはじめとする生活習慣病予防のための、厚生労働省研究班による多目的コホート研究 (JPHC Study) 、文部科学省科学研究費によるJACC Study、宮城県コホート研究 、高山コホート研究、三府県コホート研究、広島・長崎原爆被爆者コホート研究という、いずれも大規模で長期的な研究が実施され、結果が集積されつつあります。 さらに、日本人を対象に実施された研究の結果を網羅し、改めてリスク要因とがんとの関連やリスクの大きさを評価する、「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究も実施されています。 例:乳がん患者の血縁者などのハイリスク・グループに対し、タモキシフェン投与グループとプラセボ(偽薬)投与グループの間で、乳がんリスクを比較する研究 例:ある地域住民の特定の年齢層に対する食事調査を行い、食塩摂取量の多いグループと少ないグループの間で、調査後10年間の胃がんリスクを比較する研究 例:胃がん患者グループと、年齢や性別などを同じ条件に揃えた胃がんでない人のグループの間で、過去の食塩摂取量を調査し、食事内容による胃がんリスクを比較する研究 例:マウスをいくつかのグループに分けて、様々な濃度の発がん物質や抑制物質を投与して、がんの発生率を比較する研究。 たばこ(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、骨髄性白血病) 他人のたばこの煙(肺)過体重と肥満(食道<腺がん>、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓) カルシウム、亜鉛、セレン非栄養性植物機能成分(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) ●適度な飲酒。具体的には、1日あたりエタノール量に換算して約23g以内。飲まない人・飲めない人は無理に飲まない。 塩蔵食品・食塩の摂取は最小限。具体的には、食塩として1日10グラム未満、特に、塩分濃度が10%程度の高塩分食品は、週に1回以内。 ●定期的な運動の継続。例えば、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な運動、週に1回程度は汗をかくような運動。 ●成人期での体重を維持(太り過ぎない、やせ過ぎない)。具体的には、中年期男性のBMIで27を超さない、21を下まわらない。中年期女性では、25を超さない、19を下まわらない。 ●肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合は、その治療の措置をとる。がんを引き起こすウイルスへの感染を予防する。 厚生労働科学第3次対がん10か年総合戦略研究事業「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班作成 |
[ 170] 科学的根拠に基づくがん予防:[がん情報サービス]
[引用サイト] http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/prevention/science.html
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近年、がん検診の効果を科学的な方法で評価し、公共政策として実施するか否かを決定することが、国際的な標準になってきました。わが国でも過去3回にわたってがん検診の効果判定が行われました。効果ありとされたがん検診は、信頼性の高い研究方法により、がんによる死亡率が減少すると判定された方法です。 このホームページでは、がん検診の受診者の皆様を対象に、科学的根拠に基づくがん検診について説明します。 がん検診の最大の利益は、がんの早期発見・早期治療により救命されることであります。そのためには、より精度の高い方法で早期のがんを発見することが重要です。 第一は、検診によってがんが100%見つかるわけではないという点です。どのような優れた検査でも100%の精度ではありませんし、病気になる個々人の差があります。従って、がん検診にはある程度の見逃しがつきものといえます。 第二は、過剰診断により、過剰な検査や治療を招く可能性があることです。検診によって「がん疑い」が増加すると、そのための精密検査が増加します。また、治療の対象とはならない微小ながんが発見された場合でも、手術や薬物治療が行われることがあります。こうした過剰診断や過剰治療は、医療費の増大を招くことになります。 第三は、受診者の心理的影響をもたらす点です。精密検査が必要ということで不安を感じることもあります。 第四は、検査に伴う偶発症の問題です。たとえば、胃内視鏡検査では出血や穿孔などの可能性があり、極めて稀ですが死亡に至ることもあります。検診の不利益としてよく取り上げられる問題に、放射線被曝があります。検診による放射線被曝は、機器の開発・改善により、その影響は最小限に抑えられるようになりました。検診の放射線被曝によるがんの誘発や遺伝的影響は極めて低いと考えられますが、全く何も起こりえないと断定はできません。そのため、放射線被曝による影響の可能性がある若年者(40歳未満)はがん検診の対象からは除外されています。 がん検診の効果が本当にあるかどうか判定する指標としては、死亡率が用いられます。がん検診を実施することで、対象となるがんの死亡率の減少が証明されることが、がん検診の効果があるといえる第一条件です。 研究方法は、目的や研究の対象により、様々な方法があります。しかし、科学的に信頼性の高いとされる方法は、研究結果が偏りのない普遍的なものであることが証明されているか、否かというところが重要になります。たとえば、個々人の価値観、医療従事者の私見や不適切な指標による評価は、結果を自分の都合の良いように解釈したり、一部の医療機関では実施できても、他の医療機関では実施できそうにもないといった偏った結果を導く可能性があります。そこで、偏りのない条件を設定した上で、がん検診の効果が本当にあるのかどうかを評価することが必要であり、その条件を満たすものが信頼性に高い研究方法となります。 がん検診の評価方法としてよく用いられるものとして「発見率」があります。しかし、「発見率」は検診を評価するための公平な視点に欠けていることから、本当にがん検診の効果を示す指標とはなりません。 「発見率」は検診方法の精度だけでなく、対象となる集団の影響を受けます。がんの罹患は年齢が高くなるほど、特に60歳以上では急激に増加しますし、性別によっても異なります。たとえば、胃がんでは60歳以上の受診者が多い地域検診では発見率が高く、30〜40歳代が中心の職域検診では発見率が低くなります。発見率の差は、がん検診の方法の精度や診断能力の差よりも対象集団の年齢や性別に影響を受けます。従って、「発見率」の高い検診機関が必ずしも診断精度が高い優良施設とは限りません。 がん検診を行うことにより、対象となるがんの死亡が減少することを証明する方法はいくつかあります。しかし、信頼性が高いとされる研究方法は、研究対象に偏りがないことが必要です。効果の評価方法として最も信頼性の高いのは無作為化比較臨床試験(Randomized Controlled Trial :RCT) です。次善の方法として、いくつかの研究方法がありますが、1つの医療機関の成績や専門家の意見は最も信頼性が低い研究に位置づけられています。 RCTはスクリーニングの対象となるがんの死亡率が対照群に比べて検診群で低下するかを検証する試験です(図1)。がん検診の対象となる検診群と非検診群を無作為に割り付けることにより、両方の受診者の特性を近似させ、その上で検診を受けることにより、本当にがんによる死亡が減少するかを長期に渡って追跡し検証します。 症例対照研究やコホート試験は、検診の効果評価の方法として国際的にもよく用いられている方法です。しかし、研究の対象となる集団の偏りが、その結果に影響を及ぼすことから、次善の方法として位置づけられています(表1)。 効果ありとされたがん検診は、信頼性の高い研究方法により、がん死亡率減少効果があると判定された6つの検診(赤い字の検診)です。その結果をまとめたのが表2です。 判定が保留になっている検診方法や、検討の対象外になっている方法(胃内視鏡や大腸内視鏡検査など)は、現在十分な研究が行われていないため、正確な判断ができません。従って、「効果がない」というのとは異なり、これからの研究成果により「効果あり」と判断される可能性もあります。そのため、がん予防・検診センターでは、こうした検診方法が健康な人を対象としたがん検診として、本当に有効か否かの研究を進めています。 十分な研究が行われていないことに加え、日本人の陽性率が高いことから、がん検診としては推奨されていません。 30歳以上の女性を対象とした細胞診による子宮頚がん検診は、国内外の研究で効果が証明されています。 十分な研究が行われていないことから、がん検診としては判定保留です。が、米国ではRCTが進行中です。 効果がないとする症例対照研究の報告があり、がん検診としては推奨されていません。 超音波が普及していることから広く実施されていますが、十分な研究が行われていないことから、がん検診としては判定保留です。 わが国においては、効果が証明されています。適切に行うことができれば死亡率減少効果は認められるとされ、現行の検診が推奨されています。 近年、検診として着手されたばかりで、評価を行う資料が不十分な状況であり、がん検診としては判定保留です。 便潜血検査による大腸がん検診は、海外におけるRCT及び国内の症例対照研究により死亡率減少効果が証明され、がん検診として推奨されています。 精度や生存率の検討も不十分であり、効果に関する研究が行われていないことから、がん検診としては判定保留です。 肝炎ウィルス・キャリアから、肝炎、肝硬変、肝がんへがんの進展過程が解明され、感染が確認された場合の治療法は確立しています。従って、肝炎に感染しているか否かが、肝がんによる死亡率を減少させる要となります。肝炎の感染者を発見することは、肝がんの発生率を低下させることから、がん検診としては推奨されています。 十分な研究が行われていないことから、がん検診としては判定保留です。が、米国・欧州ではRCTが進行中です。 十分な研究が行われていないことから、がん検診としては推奨されていません。 効果の確立したがん検診を受診することにより、対象となるがんで死亡する危険性が減少します。現在判定保留になっている検診方法によって、対象となるがんで死亡する危険性が本当に減少するかどうかは明らかにはされていません。しかし、こうした検査が、健康な人々を対象としたがん検診として行うことに適しているかどうかは、現段階では明らかではありません。そのため、科学的に判断するための研究を、当センターでは進めていきます。 がん検診を受診することは、利益ばかりでなく、不利益もあります。どのようながん検診を受けるかというのは、個々人の判断に任されています。検診を受診する前に、本当に効果のある検診なのかを確かめた上で、受診の決断をする必要があります。当センターでは、皆様が、がん検診を受診すべきかどうかを判断する情報を提供していきます。同時に、未だ効果が証明されていないがん検診については、皆様のご協力を仰ぎながら、研究をすすめてまいります。 がん検診を受診される前に、検診のもたらす利益と不利益について、かかりつけ医や当センターにご相談いただきながら、ご検討いただくようお願いいたします。 |
[ 171] 科学的根拠に基づくがん検診
[引用サイト] http://www.ncc.go.jp/jp/kenshin/gankenshin.html
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従来,企業取引等においては,取引相手方の「本人性」,「法人の存在」,「代表権限の存在」を確認するための信頼性の高い手段として,登記所が発行する印鑑証明書・資格証明書が広く利用されてきたところですが,「商業登記に基づく電子認証制度」(以下「電子認証制度」といいます。)は,これらの証明書に代わって,電子的な取引社会において用いられる証明として,法人の登記情報に基づいて「電子証明書」を発行するものです(注1)。この証明は,電子認証登記所として指定された登記所の登記官(注2)が行います。 この電子認証登記所が発行した電子証明書については,原則として,昼夜を問わずインターネットを通じて,リアルタイムでその有効性の確認を請求することができます(後記5参照)。 例えば、ある法人代表者が電子署名を付した電子文書を送信する際に、この電子証明書を併せて送信すれば、これを受信した相手方は、その送信者の電子証明書に表示された法人の名称,主たる事務所,代表者の資格・氏名について、その時点での登記情報に変更が生じていないか等(代表者の退任や解散による資格変更,本店移転,商号変更等の登記がなされれば,その電子証明書は性質上無効とされます。)について,インターネットを通じて確認することができます。これにより、電子取引等の場面においても、従来の文書による取引と同様に、相手方の「本人確認」、「法人の存在」,「代表権限の存在」等を確認することができることになります。 なお,電子認証制度を利用することができる法人代表者等(登記所に印鑑を提出した者)(注4)からは,次の者が除かれます。 電子証明書には,会社代表者の公開鍵を証明するほかに,登記簿の情報に基づいて,一定の登記事項(会社の代表者であれば,商号,本店,代表者の資格,氏名)について併せて証明されます。 これらの登記事項は,登記官が申請書類を審査して登記するものであり,不実の登記申請を行った場合や変更登記の申請を怠った場合には罰則規定が設けられており,一般に真実である蓋然性が高いといえます。たとえ,それが真実でなかったとしても,これを信じた者には,商法第12条,第14条等により手厚い保護が与えられています。 なお,電子証明書に記録された登記情報は,証明期間中であっても,その後に変更されていることが考えられます。電子証明書を受け取った場合は,その有効性を確認する必要があります。 電子証明書の発行やその有効性についての証明を行う電子認証登記所には,東京法務局が全国に一の登記所として指定され,登記の管轄にかかわらず,全国の登記所の管轄に属する法人等を対象として,事務を行います。 なお,電子証明書の発行等の申請の受付は,法人等の登記を管轄する全国の登記所(管轄登記所)が行います。 「商業登記に基づく電子認証制度」を利用しようとする場合に必要となるインターフェイスに関する仕様については,別に官報等で公開しており,利用者は,この仕様による技術要件等を備えたアプリケーションソフトウェアを,利用目的に応じて,あらかじめ用意する必要があります。 この仕様は,大別して,(a)申請磁気ディスクの記録方式,(b)電子証明書のフォーマット等,(c)電子証明書の送信の方式,(d)電子証明書の使用休止届出用暗証コードの変更と使用休止届の送信の方式,(e)電子証明書の有効性確認の方式について,それぞれの技術的要件等を示しています。(この仕様については,今後,必要に応じて追加・変更することがあります。)なお,現在市販されている対応ソフトウェアをこちらで紹介しています。 電子認証制度は,会社の代表者・支配人や商号使用者のほか,商業登記法の関係規定(第12条の2)を準用する他の法令に基づいて,会社以外で登記される各種の法人(民法法人,独立行政法人,特殊法人,認可法人,協同組合,社会福祉法人,医療法人,宗教法人,学校法人,信用金庫,特定非営利活動法人など)についても,登記所に印鑑を提出した代表者は,利用することができます。 会社の営業所に置かれた支配人は,支配人登記簿ではなく,その会社の登記簿に登記されるため,登記所に印鑑を提出することにより,電子認証制度を利用することができます。これ以外の支配人登記簿に登記されるいわゆる個人商人(商号使用者)の支配人は,電子証明書の発行を受けることはできません。 電子認証制度は,「公開鍵暗号方式」による電子署名を対象として,電子署名の際に用いる「秘密鍵」に対応する「公開鍵」の持ち主を「電子証明書」において証明するものです(注1)。 なお,発行される電子証明書には,発行者である電子認証登記所の登記官による電子署名が付され,その登記官の公開鍵についての電子証明書が添付されます(注2)。 1) 電子認証制度は,いわゆる「RSA公開鍵暗号方式」(日本工業規格X5731-8の附属書Dに定められているもの)による電子署名を対象として,認証を行います。 電子証明書のフォーマットは,国際標準とされる国際電気通信連合ITU勧告に基づく規格X.509 version3に準拠しています。 電子認証登記所(東京法務局)の登記官が発行する電子証明書についても,それが本当にその登記官が発行したものであるかを確認する方法が必要になるため,発行する電子証明書には,電子認証登記所の登記官による電子署名が付された上,自己署名をして証明した電子証明書(自己署名証明書)が添付されます。この登記官の電子証明書(※)を識別するためのメッセージ・ダイジェスト(ハッシュ値)については,告示されて公表されるため,これと照合することにより,それが真正なものであるかどうかを確認することができます。 公表する登記官の電子証明書のメッセージ・ダイジェスト(広くフィンガープリントとも呼ばれます。)は,ハッシュ関数SHA-1による変換値(16進数表示)です。 電子証明書に記録された事項は,使用するアプリケーションソフトウェアによって,利用者にどのように表示されるか異なります。利用者は,その利用目的に適したソフトウェアを用意する必要があります。 )「証明期間」は,電子証明書の有効性(証明事項の変更等の有無)について電子認証登記所が証明に応じる期間を指します(後記5参照)。この期間を経過した電子証明書は,性質上無効なものとして扱われます。 始期と終期は,グリニッジ標準時により記録されます。使用されるアプリケーションによっては,これを日本時間で表示することも考えられます。 )電子証明書に表される事項のうち,会社の商号・会社代表者の氏名については,会社代表者(申請者)の任意により,ローマ字等による英字情報が記録される場合があります。 これらは登記事項ではなく,商号の英字等による情報については,電子証明書の発行申請時に,それを証する書面(定款等)の提出が求められることがあっても,その英字等により表記された商号を使用する権限等についてまで,証明するものではありません。 )電子証明書の利用者が行う電子署名の暗号方式は,RSA公開鍵暗号方式に限られ,これを示す符号(オブジェクト識別子:OID)が表されます。 )会社代表者(申請人)の公開鍵のデータ。その鍵の長さは1,024bitまたは2,048bitです。 )登記情報に基づく日本語による証明事項は,電子証明書のフォーマットのX.509 version3の独自拡張領域において証明しています。 なお,登記簿に記載された文字がJIS第一水準・第二水準以外のものであるときは,申請人の指定する正字,カタカナ等の所定の文字に置き換えて表示されます。 )電子証明書の発行者である電子認証登記所の登記官が,この電子証明書に電子署名を行った値を記録します。 登記所に印鑑を提出した会社代表者またはその代理人に限られます(前記1「電子証明書の発行を請求することができない者」に注意)。 会社代表者が,電子証明書の発行を請求しようとする場合は,登記がなされている管轄登記所に,登記所に提出した会社代表者の印鑑を押印し,手数料分の登記印紙を貼付した「電子証明書発行申請書」[PDF]を提出します。 この申請に当たっては,自己の公開鍵等の必要事項を記録したフロッピーディスクを添付するとともに,印鑑カードを提示する必要があります。(注) なお,申請人は,一人で複数の公開鍵を届け出て,複数の電子証明書の発行を受けることができます。ただし,申請は公開鍵ごとに行う必要があります。また,同一の公開鍵について複数の電子証明書の発行を申請することはできません(新たな公開鍵を生成して申請するか,公開鍵が重複しないよう,あらかじめ,既に発行を受けている電子証明書について使用廃止の届出を行った後に申請してください。)。 電子証明書の取得時(後記3(5)参照)には,この自己の公開鍵に対応する秘密鍵が必要となりますので,データの削除等により秘密鍵を紛失することのないよう御注意ください(秘密鍵を紛失されますと電子証明書を取得していただくことができなくなります。)。 会社代表者の代理人が申請する場合には,代理権限を証する書面(会社代表者が登記所に提出した印鑑を押印したものに限ります。)が必要になります。 「電子証明書の証明期間」とは,電子認証登記所に対して,発行後の「電子証明書」の有効性(証明事項に変更が生じていないか等。後記5参照)について,インターネットを通じて証明を請求することができる期間をいいます。 「証明期間」は,3か月単位で,最長27か月まで選択することができます。手数料の額は,この「証明期間」に応じて定まります。 「証明期間」の経過後は,電子認証登記所に対してその電子証明書の有効性について確認を請求しても,証明がされないこととなるため,この「証明期間」を経過した後は,その証明された公開鍵に対応する秘密鍵で電子署名を行っても,取引相手方等からは署名者を確認することができないことになります。 したがって,この「証明期間」は,その電子証明書に記録された自己の公開鍵に対応する秘密鍵(署名鍵)を使用することができる期間ともなります。 さらに,この「証明期間」内であっても,自己の秘密鍵(署名鍵)が使用することができなくなる場合があります。「証明期間」は電子証明書の内容が有効とされる期間ではありません。 「証明期間」内であっても,電子証明書に記録された登記事項に関係する変更登記等を申請し,その登記がなされた場合には,電子証明書の証明内容に変更が生じることになります。電子認証登記所は,これ以降(証明期間が満了するまで)に電子証明書の有効性の確認請求を受けたときは,電子証明書に記録された証明事項に変更が生じた旨を証明することになり,その電子証明書は性質上失効するため,同じくその者の署名鍵は使用することができなくなります。 したがって,「証明期間」を定めるに当たっては,会社代表者の任期や本店移転,商号変更等の予定を考慮して,電子証明書の証明事項となる登記事項に変更が予定されるときは,「証明期間」を過度に長期に設定しないように注意が必要です。 「電子証明書発行申請書」とともに管轄登記所に提出するフロッピーディスクは,対応ソフトウェアを使用して作成し,商号を記載したラベルを貼って提出します。 申請用フロッピーディスクには,上記のほか,申請人による任意の記録事項として,次の情報を記録することができます。この記録事項は,電子証明書に表されます。 ただし,商号の英字情報を記録して申請する場合には,それを証明する「定款」等を提出する必要があります。 電子証明書の発行がなされると,電子証明書の発行申請書を提出した管轄登記所の窓口において,その電子証明書の番号(シリアル番号)が告知されます 電子証明書の番号の告知は,原則として,「電子証明書発行確認票」という書面を交付して行います。この確認票には,電子証明書の番号(シリアル番号)のほかに,申請情報に基づき電子証明書に記録された事項として,商号/名称,商号/名称(英字),本店/主たる事務所,資格,氏名,氏名(英字),電子証明書証明期間(有効期間),管轄登記所名が表示されるため,あらかじめその内容を確認することができます。 管轄登記所の窓口において電子証明書の発行申請の手続を終えた後,申請人は,告知された電子証明書の番号と自己の公開鍵を指定して,いつでもインターネットを通じて,電子認証登記所から電子証明書を取得することができます(注1)(注2)。この取得には,対応のソフトウェア(前記1の注3参照)が必要になります。 )電子証明書の取得は,その「証明期間」内であって,かつ,電子証明書の証明事項に変更が生じるまで(変更の登記がなされるまで)に行う必要があります。電子証明書に記録された登記事項に変更が生じた場合には,それ以降,電子証明書の取得はできなくなります。 )電子証明書の取得時には,電子証明書の請求手続時に管轄登記所に提出された公開鍵(自己の公開鍵,前記3参照)に対応する秘密鍵が必要となります(この秘密鍵を紛失されますと電子証明書の取得ができなくなってしまいますので,データの削除等により秘密鍵を紛失することのないよう御注意ください。)。 電子証明書の発行を申請される方は,電子証明書の「証明期間」に応じて,手数料を納付する必要があります。この手数料は,申請時に「登記印紙」を電子証明書発行申請書に貼って納付します。 手数料額は,電子証明書の証明期間が3か月のときは2,500円,3か月を超えるときは,その超える期間3か月当たり1,800円を加算した額となります。(平成15年4月1日改定) なお,証明期間の設定は必ず3か月単位で設定することとなり,例えば,証明期間を1年とした場合の手数料は7,900円です。 電子証明書は会社代表者が一人で複数の公開鍵を届け出て,何件でも発行を受けることができますが,上記の手数料は,電子証明書において証明される公開鍵1個ごとに必要になります。 電子証明書の証明期間内にその電子証明書の使用廃止の手続(後記6参照)を行っても,手数料の払い戻しはされません。廃止された電子証明書について有効性の確認請求がなされた場合には,電子認証登記所は,証明期間が満了するまで,その電子証明書は使用廃止がされている旨を証明することになります(後記5参照)。証明期間内に,電子証明書の証明事項に関係する変更の登記がなされた場合にも,同様に,その電子証明書は性質上失効しますが,手数料の払い戻しはなされません。 手数料は,物価,実費等の事情を考慮して,改定する場合があります。なお,電子証明書の証明期間内に手数料の改定がなされた場合でも,既に納付済みの手数料について還付や追徴を行うことはありません。 会社代表者が電子証明書を添付して署名文書を送信した場合に,受信者は,その添付された電子証明書について,電子認証登記所に対して,インターネットを通じてその有効性(証明期間を経過していないか,証明された登記事項に変更が生じていないか等。後記(3)参照)についての証明を請求することができます(手数料不要)。 電子証明書の証明期間は,その電子証明書の内容が有効な期間を示すものでないため,証明期間内のものであっても,その証明事項の変更等が生じていないか等について確認した後でなければ,信用することはできません。 なお,この電子証明書の有効性についての確認請求をするためには,対応のソフトウェア(前記1の注3参照)を使用する必要があります。対応のソフトウェアがあれば,電子証明書の添付された署名文書を受け取った取引先など誰でも,インターネットを通じて行うことができます。 この電子証明書の有効性についての確認請求は,電子証明書の「証明期間」内に行う必要があります。この期間は,会社代表者が電子証明書の発行を申請する際に指定します。 「証明期間」は,電子認証登記所に対して電子証明書の有効性についての証明を請求できる期間を指します。 )有効性の確認は,請求時点における電子証明書の有効性について証明書を求めることができるほか,電子証明書の証明期間内の過去の日時を指定して,その時点における有効性を確認することもできます。この請求は,インターネットを通じて,証明期間経過後7日間まで可能です。 なお,この場合の証明には,発行者である電子認証登記所(東京法務局)の登記官による電子署名が付され,その登記官の電子証明書が添付されます。 次表の証明事項については,使用されるソフトウェアによって,どのように利用者に表示されるかが異なるため,利用目的に適したソフトウェアを用意する必要があります。 この欄に表示する各事項は,電子証明書の状態を分類するための目安であり,電子認証登記所による証明事項を示すものではありません。 なお,これらの事項についてその理由等を確認したい場合には,相手方に照会されるようお願いします。管轄登記所では,登記簿の閲覧,登記簿の謄本を請求することによってその理由等を確認することはできますが,電話等で登記に関する内容をお答えすることはできません。 代表権・代理権の制限の登記がなされた場合を含みます。行政区画の変更や住居表示の実施により会社の本店の登記事項が変更される場合は除きます。 この項のいずれの事項も,その後に,表の2のいずれかの事項に該当することとなった場合を除きます。 なお,この項に定める事項に該当したときは,電子証明書がその有効性を証明できない状態にあることを示しています。 電子証明書の発行を受けた者は,自己の秘密鍵(署名鍵)を使用しなくなった場合,秘密鍵を他人に知られてしまった場合等において,その電子証明書の使用を廃止しようとするときは,これを管轄登記所に届け出ることができます(手数料不要)。 これ以降,電子認証登記所は,電子証明書の有効性確認の請求に対して,その電子証明書は使用廃止がされている旨の証明をすることとなります。 1)電子証明書は,その証明期間内に使用廃止の手続をとっても,残余期間分の手数料の払い戻しはされません(前記4参照)。 2)電子証明書において証明される登記事項に変更が生じた後は,電子証明書は性質上使用廃止と同じ状態になるため,これ以降に,廃止の手続を行う必要はありません。 電子証明書に記録された登記事項に変更が生じたときは,その変更の登記を申請する際に(あるいは,その前に),電子証明書の使用廃止の手続を行うことにより,迅速にその後の署名鍵の悪用を防止することができます。 「電子証明書使用廃止届」[PDF]に必要事項を記入して,管轄登記所に提出した会社代表者の印鑑を押印の上,管轄登記所に提出します。 秘密鍵を他人に知られてしまったおそれがある場合などには,前記6の電子証明書の使用の廃止の手続に先だって,インターネットを通じて,電子認証登記所に対して電子証明書の使用を休止する旨を届け出ることができます(手数料不要)。 これ以降,電子認証登記所は,電子証明書の有効性確認の請求に対して,公開鍵の持ち主が電子証明書の使用を休止している旨を証明することとなります。 電子証明書の使用休止は,対応のソフトウェア(前記1の注3参照)を使用して,電子証明書の発行申請時に届け出た「暗証コード」を入力の上,インターネットを通じて,電子認証登記所に対して届出事項を送信します。 使用休止用暗証コードが他人に知られてしまった場合や,暗証コードを忘れてしまった場合には,暗証コードを変更することができます。 この場合には,識別符号(休止届出用暗証コード)の変更届[PDF]に必要事項を記録したフロッピーディスクを添付して,印鑑カードとともに管轄登記所に提出します(手数料不要)。 電子証明書の使用休止の手続後に,電子証明書を廃止することなく,使用を再開しようとするときは,「電子証明書使用再開届」[PDF]に必要事項を記載(会社代表者の提出印を押印)して,管轄登記所に提出します(手数料不要)。 電子認証登記所が行う事務は,コンピュータシステムによって処理されており,データバックアップ等の保守作業のためシステムを停止する必要がある場合には,一時的に電子証明書の有効性確認の請求等を行うことができなくなります。 電子認証登記所のシステムは,高度なセキュリティを備えていますが,災害時等においてシステムの正常を確認する必要がある場合にも,一時的にシステムを停止する場合があります。 また,電子認証登記所のシステム以外にも,利用者との間には使用される回線設備やインターネット等の様々なシステムが介在するため,これら一部に障害が生じ,正常な情報の伝達等ができなくなる場合にも,利用に支障が生じることが想定されます。 電子署名や電子認証制度の利用にかかわるソフトウェアの操作方法(電子証明書発行申請用フロッピーディスクの作成方法,電子証明書の取得方法,署名文書の送信時の電子証明書の添付方法,電子証明書の有効性の確認請求の方法,署名文書の復号の仕方等)が分からない場合には,ご使用になるアプリケーションソフトウェアの製造元等にお問い合わせください。 電子認証制度を利用するには,所定の仕様を備えたソフトウェアを用意する必要があります。これらの操作方法はご使用になるアプリケーションソフトウェアによって異なりますので,その使用方法を確認してください。 電子証明書の取得時には,電子証明書の請求手続時に管轄登記所に提出された公開鍵に対応する秘密鍵が必要となります。 したがいまして,この秘密鍵を紛失されますと電子証明書の所得ができませんので,データの削除等により秘密鍵を紛失することのないよう御注意ください。 |
[ 172] 第3 商業登記に基づく電子認証
[引用サイト] http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION/GUIDE/guide03.html
