予告とは?

アストラギウス銀河を真っ二つに分けた、バララントとギルガメスの二つの星系が砲火を交えて100年。両陣営の疲弊は極みに達し、ようやく終戦の燭光が見えはじめた大戦の末期。辺境の小惑星リドの漆黒の闇の中で、物語は始まった。
ロッチナの手を逃れたキリコを待っていたのは、また地獄だった。破壊の後に住み着いた欲望と暴力。百年戦争が生み出したソドムの街。悪徳と野心、頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここは惑星メルキアのゴモラ。
食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。牙を持たぬ者は生きてゆかれぬ暴力の街。あらゆる悪徳が武装するウドの街。ここは百年戦争が産み落とした惑星メルキアのソドムの市。キリコの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる。
かつて、あの重々しき歌に送られた戦士たち。故国を守る誇りを厚い装甲に包んだアーマード・トルーパーの、ここは墓場。無数のカリギュラたちの、ギラつく欲望に晒されてコロッセロに引き出されるウドの街の拳闘士。魂無きボトムズたちが、ただ己の生存を賭けて激突する。
最も危険な罠、それは不発弾。たくまずして仕掛けられた地中の闇に眠る殺し屋。それは突然に目を覚まし、偽りの平穏を打ち破る。ウドは巨大な罠の街。そこかしこで、信管をくわえた不発弾が目を覚ます。
人の運命を司るのは、神か、偶然か。それは時の回廊を巡る永遠の謎掛け。だが、キリコの運命を変えたのは、素体と呼ばれた、あの物体。小惑星リドの闇の中で走り抜けた戦慄が、今、ウドの街に蘇る。
ウドという汚れの海に、見え隠れする素体という氷塊。どうやら、水面下の謎の根は深く重い。人の運命は、神が遊ぶ双六だとしても、上がりまでは一天地六の賽の目次第。鬼と出るか、蛇と出るか、謎に挑む敵中横断。
ファウストは、メフィスト・フェレスに心を売って明日を得た。マクベスは、三人の魔女の予言にのって、地獄に落ちた。キリコは素体に、己の運命を占う。ここ、ウドの街で明日を買うのに必要なのは、ヂヂリウムと少々の危険。
昨日の夜、全てを失くして酸の雨に濡れていた。今日の昼、命を的に夢買う銭を追っていた。明日の朝、ちゃちな信義とちっぽけな良心が、瓦礫の街に金を蒔く。ウドは百年戦争が作ったパンドラの箱。質を問わなきゃ何でもある。
敵の血潮で濡れた肩。地獄の部隊と人の言う。ウドの街に、百年戦争の亡霊が蘇る。パルミスの高原、ミヨイテの宇宙に、無敵と謳われたメルキア装甲特殊部隊。情無用、命無用の鉄騎兵。この命、30億ギルダン也。最も高価なワンマンアーミー。
鉄の騎兵が走る、跳ぶ、吼える。機銃が唸り、ミサイルが弾ける。鉄の腕が秘密の扉をこじ開ける。炎の向こうに待ち受ける、ゆらめく影は何だ。いま、解きあかされる、小惑星リドの謀略。いま、その正体を見せる素体の謎。
百年戦争とリド、素体、キリコ、ウド、パーフェクトソルジャー。縺れた糸を縫って、神の手になる運命のシャトルが飛び交う。アストラギウス銀河に織りなされる、神の企んだ紋様は何。巨大なタピスタリーに描かれた壮大なるドラマ。その時、キリコは叫んだ。フィアナ!と。
降り注ぐ火玉。舞い降りる鉄騎兵。欲望と秘密と暴力の街、ウドが燃える。圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躪しつくす。ささやかな望み、芽生えた愛、絆、健気な野心、老いも若きも、男も女も、昨日も明日も呑み込んで、走る、炎、炎。音をたててウドが沈む。
何もかもが、炎の中に沈んだ。微笑みかけた友情も、芽生え欠けた愛も、秘密も。そして、あらゆる悪徳も同じだ。全てが振り出しにもどった。兵士は死んだ魂を疲れた身体に包んで、泥濘と、硝煙の地に向かった。
遙かな宇宙の闇を走り、破壊の街に曲折し、動乱の泥濘に揉まれてもなお、キラリと光る一筋の光。だが、この糸は何のために。手繰り手繰られ、相寄る運命。だが、この運命は何のために。炎熱のクメンに第2幕が開く。
回る弾倉、起きる撃鉄。こわばった指がトリッガーを引く。撃針が、空の薬室を撃ち、虚しい音を立てたとき、皮肉にも、生の充足が魂を震わせ肉体に溢れる。ロシアンルーレット。この、危険な遊戯が、これこそがこの世に似合うのか。
愛を見たのが幻想なのか。心の渇きが幻想を生むのか。戦いの果てに理想を見るのが幻想に過ぎないことは、兵士の誰もが知っている。だが、あの瞳の光が、唇の震えが幻だとしたら。そんなはずはない。ならば、この世の全ては幻想に過ぎぬ。では、目の前にいるのは誰だ。
変わる、変わる、変わる。この世の舞台をまわす巨獣が、奈落の底でまた動きはじめた。天が軋み、人々は呻く。舞台が回れば吹く風も変わる。昨日も、今日も、明日も、硝煙に閉ざされて見えない。だからこそ、切れぬ絆を求めて、褪せぬ愛を信じて求めて。
再戦のための停戦。破壊のための建設。歴史の果てから、連綿と続くこの愚かな行為。ある者は悩み、ある者は傷つき、ある者は自らに絶望する。だが、営みは絶えることなく続き、また誰かが呟く。たまには火薬の臭いを嗅ぐのも悪くない。
さだめ、絆、縁。人間的な、余りにも人間的な、そんな響きはそぐわない。火薬の臭いに導かれ、地獄の炎に照らされて、アストラギウス銀河の星屑の一つで出会った、60億年目のアダムとイブ。これは、単なる偶然か。
人は、戦場に何を求める。ある者は、ただその日の糧のため、引き金を引く。ある者は、理想のために己の手を血潮に染める。また、ある者は、実りなき野心のために、硝煙と死臭にまみれる。雨は汚れた大地をみそぎ、流れとなり、川となって常に大海をめざす。
大いなる偶然が全ての始まり。芽生えた意識は行動を、行動は情熱を生み、情熱は理想を求める。理想はやがて、愛に行き着く。愛はすべてに呵責なく干渉し、創造の嵐を育む。そして、放たれた雷は誰を打つ。
炎熱のジャングルが、狂気をはらむ。それぞれの望み、それぞれの運命。せめぎ合う欲望と、絡み合う縁。弾幕をくぐり抜けたとき、突然現れた一刻の安らぎ。沈みゆく夕陽に、二つの影が重なる。だが、思いは、切なくすれ違う。
嵐が吹かねば、太陽が輝かぬとするなら、大地を走る無謀な風となろう。戦いの果てにしか安らぎは来ないものなら、己の血のたぎりに身を任せよう。それぞれの運命を担い男たちが昂然と顔を上げる。
崩れ去る信義、裏切られる愛、断ち切られる絆。そのとき、呻きを伴って流される血。人は、何故。理想も愛も牙を飲み、涙を隠している。血塗られた過去を、見通せぬ明日を、切り開くのは力のみか。
時代は撓みに撓み、そして、放たれた。怒濤とは正にこれ。疾風とは正にこれ。奥クメンを荒れ狂う狂気と殺戮。因習も伝統も火に焼かれ、波に飲まれ、過去へと流される土砂流。悲劇は堆積され、歴史となり、神話となる。
クメンでの旅が終わる。振り返れば遠ざかる緑の地獄。友よさらば。薄れゆく意識の底に、仁王立つ数々の修羅像。耳に残る叫喚、耳に焼きつく炎。次の旅が始まる。旅と呼ぶには余りに厳しく、余りに哀しい。過去に向かってのオデッセイ。
全ては、リドの闇の中から始まった。人は生まれ、人は死ぬ。天に軌道があれば、人には運命がある。炎に追われ、閃光に導かれ、辿りゆく果ては何処。だが、この命、求めるべきは何。目指すべきは何。打つべきは何。そして、我は何。
宇宙の闇を、ただ行く。巨大な鉄の箱が乗せているのは、夢か、地獄か。男の愛が、女の希望が、巨大な鉄の箱の中で、育まれる。二人はゆだねた、姿現さぬ支配者に。やがて破られるであろう、しばしの安息を。
過去からの銃弾が、魂を射抜く。傷ついた魂は、敵を求め暗闇を彷徨う。レッドショルダーの光、レッドショルダーの影、レッドショルダーの痛み。砕けたはずの過去、死んだはずの過去が、キリコの新たな謎を発掘する。
この、果てし無く広がる闇は、輝く星のためにあるとしたら。今日という日が、明日のためにあるとしたら。天国はこの地獄の隣にあるはずだ。ここはもう充分に見た、充分に。譬えそこが禁断の地であろうとも。
何故にと問う。故にと答える。だが、人が言葉を得てより以来、問いに見合う答えなどないのだ。問いが剣か、答えが盾か。果てしない撃ち合いに散る火花。その瞬間に刻まれる影にこそ、真実が潜む。
愛の究極に、憎しみの究極に、ともに潜むのは殺意。完全なる殺意は、最早感情ではなく、冷徹なる意志。人は、神に似せて創られたという。それでは、神の意志に潜みしものは、愛か、憎悪か。
赤い空、赤い土。かつて流された夥しい血がこびりついた、不吉な星。ここには、メルキア装甲騎兵団特殊任務班X−1、レッドショルダーの鋭い爪痕が刻まれている。
たとえそれが、夢の中の出来事であろうと、思い出すのもおぞましい事がある。まして、この身、この身体に染みついた火薬の臭いが、逃れられぬ過去を引き寄せる。目に焼きつく炎、耳にこびりつく叫喚。赤い星、惑星サンサが呻く。
家族、望み、笑い、涙。かつてこの星に息づき、溢れていたもの。それらは、ある日焼かれて、ひと握りの砂となった。砂は蒔かれて地表を覆い、砂漠となった。いま、嵐が砂を巻き上げる。怒りと悲しみの星の素顔が、荒れた空気に晒される。
求めても、求め得ぬもの。望んでも、望み得ぬもの。狂おしいまでの渇きが、叶わぬ思いが、殺意と闘志を生む。心に地獄を持つ者同士の、不可思議なる合意が、壮絶なる対決を生む。
なぜ、どうして戦う。なぜ銃を向けあう。ともに落ちた地の底で、互いの心の中を覗く。そこには、荒涼たる砂漠の中、闇夜に銃を求めて立ち尽くす、孤独な己の姿が在った。
己の放った銃弾が、鏡の中の己を打ち砕く。飛び散る破片とともに、見えなくなる自分。遙かな宇宙の彼方、もう一人の自分を映し出す鏡を求めて、クエントへ。
始めから感じていた、心のどこかで。強い憎しみの裏にある渇きを。激しい闘志の底に潜む悲しみを。似た者同士。自分が自分であるために、捨ててきたものの数を数える。声にならない声が聞こえてくる。
地表を覆う砂の一粒一粒に、無限の謎を秘めた星。ここに全てがある。PSが、百年戦争が、ギルガメスが、バララントが。すべてのものがここに収斂される。照りつける太陽、吹き渡る風。静寂の中に、歴史が眠る。
文明を見捨てたのか、文明に見捨てられたのか。延々、悠久の時の流れを遡り、谷の底に行き着いた、謎の民クエント人。彼らが目指したものは何か。彼らが恐れたものは何か。アストラギウス銀河の秘密が、この星に眠る。
クエントとは、谷の底のこと。数千年を経て、地の底に姿を隠した超文明を追って、キリコが走る。クエントの神の子とは。神の子の野望とは。全てを包んで煙る谷底に、己のルーツを求めて、キリコが彷徨う。
時空がねじれ、地層が断裂する。惑星クエントの腸が抉られる。垣間見えた古代超文明の輝きが、野望をそそる。アストラギウス銀河の暗闇に、巨大な鼓動が響きはじめた。禁じられた扉を開くのは誰だ。
クエントへ。あらゆる権力が、あらゆる野心が、大いなる謎を秘めた辺境の惑星へと向かう。クエントの地底に住まうは、神か、悪魔か。謎は歴史を遡り、閃光は欲望を映し出す。
クエントが発する、暗く巨大な引力が、アストラギウス銀河のきな臭い火種を吸い寄せる。錯綜する権謀と術策。目に見えぬ無数の導火線に火が走る。忌まわしくも懐かしい、あの臭い、あの音が蘇る。
膨大な、あまりにも膨大なエネルギーの放出。巨艦を突き抜ける火玉。塵も残さず消え去る艦隊。3000年の歴史の彼方から、古代のエネルギーが爆発する。戦闘か、欲望か、キリコか。道なる意志を触発したのは何か。
暗黒の宇宙から届いた、支配者からの招待。謎の香りに包まれた、絶対権力の甘い味。そこには、欲望を満たす全てがある。神の誘惑に、あらゆる野心が魅せられる。
人の世の喜びも悲しみも、一瞬の星の瞬き。万物流転。全てが宇宙に仕組まれた、巨大なイルミネーションだとしたら。底知れぬ闇の中にしつらえられた、ただ一つの椅子に座り、いつ果てるとも知れぬ、無数の光の象徴を見つづける者。それは誰か。
宇宙でたった一人その資格を持つ男が、座標を定めて走り始めた。生まれながらのPS、異能者、神の子。バララント、ギルガメス、アストラギウスの絶対支配。壮烈な決意が、自らを加速させる。全てをこの手に。
死にかけた神が呼んでいる。全宇宙を敵にしても、我が下に来るべし。我は与えん、無限なる力を。我は伝えん、3000年の愉悦を。神なる者の壮大な誘惑。人たる者の壮絶なる決意。いまクエントに、最後の戦いが始まる。
一人の男と、一人の女が、銀河の闇を星となって流れた。一瞬のその光の中に、人々が見たものは、愛、戦い、運命。いま、全てが終わり、駆け抜ける悲しみ。いま、全てが始まり、きらめきの中に望みが生まれる。
眠りは質量のない砂糖菓子、脆くも崩れて再びの地獄。懐かしやこの匂い、この痛み。我はまた生きてあり。炎に焼かれて、煙にむせて、鉄の軋みに身を任せ、ここで生きるが宿命であれば、せめて望みはギラつく孤独。
荘重なる欺瞞、絢爛たる虚無。武をうたい秩序を司って七千年。不可侵宙域にあって銀河を睥睨する大伽藍が、新たなる主を求める。ドゥ・オステ・オワグーラ・クレ・ヤシディーロ。グラッツィ・ミト・モメンダーリ。
巡る、巡る、すべてが巡る。巡る、巡る、誰もが巡る。求めるものを知らず、縋るべきを知らず。数千年の虚妄のままに、幾千万の渇えたる魂が群れをなす。我も行く、宿命のままに。焼けた大地に孤影を踏んで。
誰が仕組むのか、誰が望むのか。満ちるものが満ち、撓むものが撓む。溜められたエネルギーが出口を求めて沸騰する。欲望と野心、策謀と疑惑、誇りと意地。舞台が整い役者が揃えば暴走が始まる。そして、先頭を走るのは、いつもあいつ。
敢えて問うなら答えもしよう。望むことはささやかなりし。この腕にかき抱けるだけの夢でいい。この胸に収まるだけの真実でいい。たとえて言うなら、その名はフィアナ。フィアナこそ我が命、フィアナこそ我が宿命。

[ 48] ボトムズ予告集
[引用サイト]  http://homepage2.nifty.com/yu1/votoms/av_yokok.html



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