現在とは?
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今まで、ロシア語に限らず、「歴史的現在」という問題は、体系的には殆んど研究されていない。 このテーマが言語学はもとより、文体論、レトリックといった、いわば文学・詩学の諸問題と深く関わっているからに外ならない。 しかし、一方において、文学の一部の領域において、既に言語学的なアプローチが数多く試みられている。 語用論、テクスト言語学、更には認知科学といった詩学に隣接する様々な学問分野の台頭によって、今まで科学的な扱いが不可能と思われた多くの対象が、主に構造主義的な分析によって、客観的に位置づけられるようになってきている。 本論文では、そうした背景を踏まえて、ロシア語における歴史的現在用法をできるだけ広い視野で捉え、主に"送り手"と"受け手"の間の言語現象として分析し、検討することを心がけている。 まず、先達の時制に関する諸研究を概観し(序論)、その上でロシア語の歴史的現在用法を4細類に分けることを提唱している。 その際、古代ロシア語の諸文献に用いられている古い歴史的現在用法から、20世紀の現代ソビエト文学における歴史的現在用法に至るまで、幅広く用例を渉猟し、具体的に吟味することによって、この4つの型の分類の正当性を裏づけている。 ロシア語の歴史的現在用法は、英語など欧米諸国の言語とも、また日本語とも使い方が異なっている。 その特殊性を生み出している要因の一つが、ロシア語における"体"という文法カテゴリーである。 ロシア語の形態論においては、"体"と"時制"とは密接に結びつき、両者を切り離して"時制"だけを定義することは実際上、不可能である。 こうした事情から、ロシア語においては、一部の歴史的現在用法が、不完了体からしか作られないといった偏向現象が生じ、その点で、他のスラヴ諸語における歴史的現在用法とも大きな違いを見せている。 本論文では、ロシア語のこのような特殊性に鑑み、歴史的現在を、まず次のように4つの型に分類した。 この中で、I型だけが、完了休も使用されるが、他の3つの型は、もっばら不完了体のみの現在形が用いられる。 [I型]については、小説の中に出てくる会話(体験談)を中心資料とし、その中に用いられている"体-時制"の使用傾向を分析する。 更に、いわゆるロ承文学であるブイリーナや民話など多岐にわたる話し言葉のスタイルを持つ資料を駆使して、この型の主要な特徴を総合的に導き出している。 [II型]については、プーシキンの全散文作品を用い、その中から歴史的現在の用法特徴を抽出、整理し、他方で、同時代の作家レールモントフ、ゴーゴリなどの作品の時制用法をも同時に分析し、結果を比較している。 その際、情報理論を援用し、レトリックとしての歴史的現在用法の機能について詳しい検討を行なっている。 [III型]については、チェーホフの全作品(戯曲などを除く)を資料として、その中に用いられている現在形の用法を様々なレベルから分析し、プーシキンと異なる、書き言葉的な歴史的現在用法を考察する。 [IV型]については、特に詳しい分析は行なっていないが、ソ連の新聞、雑誌などに用いられている用例を集めて示し、また戯曲のト書きや物語の要旨などの例も挙げて、まとめている。 この歴史的現在用法の特徴は、話し手の無意識な時制交替にある。 その原因としては、話し手が自分の体験談などに夢中になって、当時の自分に心理的に身をあずけることによって現在形が用いられるというメカニズムが有力である。 一方、語彙的には、直接話法を導く動詞や、状態や持続的行為を表す動詞に現在形が使われやすいという傾向がある。 また、語り手の極めて恣意的な使い方によって過去形と現在形とが規則性を持たず、全くランダムに現れる場合もある。 この用法の特徴は、使用されるコンテクストはI型と同じく主に会話中であるが、作者が読者に対する何らかの心理的効果を狙って現在形を用いているという点にある。 即ち、送り手がレトリックとして時制の性質を利用しているのである。 そこでは、基本的に現在形の有する2つの性質、(1)語りの時間を静止させる性質と、(2)語りの視点を作中人物の傍らからその内部に移す性質とが、利用されている。 (1)の性質から張り詰めた緊張感が、(2)の性質から作中人物との共感性がそれぞれ読者の中に心理的に生み出される。 II型と同様、レトリックとして用いられた歴史的現在である。 専ら、書き言葉的なスタイル(地の文)の中で用いられ、使われ方の規模もII型より大きく、II型とは異なる効果を狙っている。 語りの基本時制として用いられたり、心理的描写に用いられたりすることが主たる機能であるが、このIII型は本来、生産的な用法なので、更に新たな効果を狙った用法が生まれる可能性もある。 一般に、年表の現在、記録の現在、要旨の現在、ト書きの現在などと呼ばれている一連の現在形用法が、すべてこの中に含まれる。 文体的に共通している特徴は、送り手によって物語られるのではなく、説明される点にある。 また、年表の現在や表題の現在のように、文がそのまま一まとまりの概念として、名詞化したと考えた方がいいような場合もある。この用法も、典型的な歴史的現在用法の―つと言える。 以上が、第1部の内容であるが、次の第2部では、歴史的現在用法の周辺にある幾つかの現在形用法について考察している。 第5編では、ロシア語の自伝小説における現在形の多用現象を取り上げ、自伝小説の地の文に用いられている現在形用法を、トルストイの自伝三部作を使って具体的に分析している。 自伝小説に用いられる現在形の特徴は、話し言葉的なスタイルであること、過去の習慣的行為においては完了体・現在形も用いられることなどから、I型の歴史的現在用法に類似していることがわかるが、一方で、レトリックとしての機能も果しており、II型の歴史的現在用法とも関連をもっている。 第6編では、夢の描写においてよく現れる現在形用法を取り上げ、ドストエフスキイの作品の中の夢を用いて具体的に分析を行っている。 夢の描写には3つのタイプがあり(現在形型、過去形型、混合型)、それぞれ分けて分析、検討した。 その中で、現在形型の夢のテクストは、不完了体・現在形に時おり完了体・過去形(ペルフェクト的用法)が混用されるもので、しかも話し言葉的なスタイルではないことなどから、III型の歴史的現在用法の1つと考えることが可能と思われる。 第7編では、完了体・現在形の1用法である、過去形の文脈における例示的用法を扱っている。 例示的用法とは、反復的行為を表す完了体用法を指すが、ここでは特に自然描写(具体的にはトゥルゲーネフ『猟人日記』に現れる自然描写)に用いられる、こまやかな繰り返し現象の描写を詳しく分析している。 また、人間の習慣的行為の例示的用法をそれに対置して、用法上の微妙な違いを浮き彫りにしている。 全体を通して言えることは、今まで一般に言われている事柄の多くが、広義の歴史的現在用法の一面を述べたものに過ぎないということである。 例えば、(1)ロシア語の歴史的現在には不完了体のみが用いられるとか、(2) 歴史的現在では逐次的行為を表すとか、(3)歴史的現在は臨場感を生み出すとか一般に言われているが、(1)はI型には当て嵌まらず、(2)はII型の一部の用法(突然型用法)に過ぎず、(3)はII型とIII型の一部の用法(視覚型用法)から二次派生的に生じる現象に過ぎないということである。 |
[ 88] 金田一真澄 ロシア語における「歴史的現在」
[引用サイト] http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~slav/thesis/kindaichi.html
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現在の100万円と1年後の100万円の価値は等価ではない。この事実は、現在手元に 100万円あったとすれば、それを年率3%の銀行預金に預けることにより、自動的に 1年後に103万円になるということから、感覚的に理解できるであろう。ここで、 「自動的に」というのは「無リスクで」という意味であり、現在手元にある100万円は 確実に1年後に103万円になるということである。それが、少しでも不確かで ある場合は、そこにリスクが存在するということであり、そのリスクが 如何ほどであるかを研究することは、金融工学の主要テーマの1つと言うことが できる。 ここでは、「無リスク」の状態をとりあえず想定しよう。すると、前述の例では、 現在の100万円は、1年後の103万円に等しいということになる。つまり、現在100万円 持っていても、1年後に103万円持っていても、現時点から見た 資産価値としては等しいということである。このとき、1年後の103万円を、現在の 100万円の将来価値と呼ぶ。逆に、1年後に確実にもらえる100万円は、 現在の幾らに相当するであろうか?無リスクの銀行預金があったとして、 それが年率3%の利息をもらえるものであったとすると、それは現在の約97.09万円に 相当する。この約97.09万円を、1年後の100万円の現在価値と呼ぶ。 資産価値の現在と将来をつなぐものは、金利である。金利が低い場合は、 現在価値と将来価値の差は小さく、金利が高い場合は現在価値と将来価値の差は 相対的に大きくなる。金利は、政策的に定められる側面が大きいが、最終的には 市場で決定される。つまり、資金の需給や将来見通し、そしてリスクなど、 全ての情報を反映して市場で決まるものである。債券の価格は、 将来のキャッシュフローの現在価値であるが、これを定める主要な要因の 1つが金利である。今回は、金利を用いて、債券の将来価値と現在価値を求める 方法について学ぶ。 ある期間(1年とか半年など)の金利をrとし、現在価値をPV (Present Value)、将来価値をFV(Future Value)とする。このとき、 n期後(金利が年率である場合はn年後)のFVは、以下の式で表される。 ここで、nは整数でなくても構わない。例えば、年率金利を用いて、 1年3ヵ月後の将来価値を考える場合は、n=1.25である。 〜例1〜年率5%の無リスク資産があったとき、100万円の3年9ヶ月後の将来価値は、 以下のように計算できる(円単位未満四捨五入)。 〜例2〜年率4%の無リスク資産があり、この資産への投資の利息は半年ごとに年利の 半分が支払われるものとする。この資産に100万円を2年3ヶ月投資したとき、 その将来価値は次のようになる(円単位未満四捨五入)。なお、利払い回数が 年1回の場合についても考察せよ。 ある期間(1年とか半年など)の金利をrとし、現在価値をPV (Present Value)、将来価値をFV(Future Value)とする。このとき、 n期後(金利が年率である場合はn年後)のFVのPVは、 以下の式で表される。ここで、nは整数でなくても構わない。 〜例3〜5年3ヵ月後に確実に受け取れる100万円があり、その期間に対応する 無リスク金利が年率3%であったとき、その現在価値は以下のように計算できる (円単位未満四捨五入)。 〜例4〜10年満期でクーポン6%、額面100万円の国債があったとする。この国債は、クーポンの 半分が半年ごとに支払われる。全ての期間の無リスク金利が年率5%で 一定であったとき、この国債の現在価値は次のようになる(円単位未満四捨五入)。 〜例5〜3年満期でクーポン5%、額面100万円、利払い年1回の国債があったとする。 現在から1年間、2年間、3年間の無リスク金利が、それぞれ年率3%、4%、5% であったとき、この国債の現在価値は以下のように計算できる (円単位未満四捨五入)。 年率3%の無リスク資産があり、この資産への投資の利息は半年ごとに年利の 半分が支払われるものとする。この資産に100万円を7年9ヶ月投資したとき、 その将来価値はいくらか。 5年後に確実に受け取れる100万円があり、その期間に対応する無リスク金利が 年率2%であったとき、その現在価値はいくらか。 7年6ヶ月後に確実に受け取れる100万円があり、その期間に対応する 無リスク金利が年率2%であったとき、その現在価値はいくらか。 7年6ヶ月後に確実に受け取れる100万円があり、その期間に対応する 無リスク金利が年率3%であったとき、その現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン4%、額面100万円の国債があったとする。 この国債の利払いは年1回である。全ての期間の無リスク金利が 年率3%で一定であったとき、この国債の現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン5%、額面100万円の国債があったとする。 この国債の利払いは年1回である。全ての期間の無リスク金利が 年率4%で一定であったとき、この国債の現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン4%、額面100万円の国債があったとする。 この国債は、クーポンの半分が半年ごとに支払われる。全ての期間の無リスク金利が 年率3%で一定であったとき、この国債の現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン5%、額面100万円の国債があったとする。 この国債は、クーポンの半分が半年ごとに支払われる。全ての期間の無リスク金利が 年率4%で一定であったとき、この国債の現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン6%、額面100万円、利払い年1回の国債があったとする。 現在から1年間、2年間、3年間、4年間、5年間の無リスク金利が、 それぞれ年率3%、4%、5%、6%、6.5%であったとき、 この国債の現在価値はいくらか。 5年満期でクーポン6%、額面100万円、利払い年1回の国債があったとする。 現在から1年間、2年間、3年間、4年間、5年間の無リスク金利が、 それぞれ年率4.5%、5%、5.5%、5.8%、6%であったとき、 この国債の現在価値はいくらか。 |
[ 89] 債券: 将来価値と現在価値
[引用サイト] http://www.ie.reitaku-u.ac.jp/~ykago/lectures/fe_basic/fe_basic01.html
