ハマるとは?

チューニングとかセッティングとかの話を書いたので、そのバランスを取ると言いますか、そういうコトしてる時のあるあるネタみたいな話をばひとつ。
セッティングにしろなんにしろ、すぐに良い感じに決まってくれれば何の問題も無いわけですが、あちらを立てればこちらが立たずという兼ね合いみたいなことになってきた時に、どこで手を打つかが見えなくなって来てしまうことというのも、あったりします。
たとえば高音部ではザラザラいって欲しいけど低音部では一切鳴って欲しくない場合だとか。高音の為にザラザラ度を上げると低音でもバチッって鳴っちゃうし、じゃあバチッていわないようにするかっていったら今度は高音で寂しいし、みたいな。
そういうの気になっちゃうと、ウンウンいいながらず──────っとビミョーな調整を続けて、いつまで経っても終わんなくなっちゃったりすることって、ありますよね。
ギターの音作りなんかでも、たとえば低音がスカスカじゃ嫌だってんでローをぐいって上げたらモコモコになっちゃったからハイをえいって上げたら今度中域が目減りしてきたからミドルも上げたら最初の状態みたくなっちゃって無限ループって怖くね?なんて、まあちょっと似たようなこともあったりして。
また、弦やスナッピーがビヨ〜ンとか鳴ってるのに気付いてしまうと、もう気になって気になってしょうがなくなってきたりもしますよね。弦を締めたりミュートしたりすれば抑えられるものの、それだとザラザラ感が失われたりして、じゃあミュートしつつ全体としては緩めたらどうだろう?とか色んなこと試してみたりして、これまたいつまでもウンウン唸ることになったりなんかして。
低い方が弾き易いんだけど、下げ過ぎたらビビったり音詰まり(という現象があるんです)したりするし、とかみたいな。ええいこんなにビビるのはネック曲がってるかフレット凸凹になってんだろコノヤローとか言って大規模メンテナンスにまで話が及んだりなんかしてね。
いや僕個人はちょっと高めぐらいが音の張りがあって好きなんで、あんまりそういうコトになったりしないんですけどね。
まあ状況は色々あるにしても、そうやってウンウン唸りながらず─────────っと微妙な調整とかやってると、今どんな音を目指してたんだっけとか、どうなれば気が済むんだっけとか、そういうのが自分でも解らなくなってくることって、あるんですよね。俗に言う「ハマってきた」ってやつで。
あのよく言われるネタで、深夜に書いたラブレターだの歌詞だのを、翌朝読み返してみたらあまりの恥ずかしさに身悶えていっそ死んでしまいたくなったみたいなのがあるじゃないですか。その「翌朝」の状態に自分をもっていってから、作業を再開するのが吉です。
一旦全然違うこと、出来れば何か遊びをやって、頭の中から完全に作業のことを追い出してしまうのがポイントですね。この時に「今こうやって違うことやって頭が冷えたら今度はビシッと決めてやるぜ待ってろよテメェこの野郎」とか、ミエミエの下心を持ってたら見透かされてしまいますよ。遊ぶ時は全力を持って本気で遊びましょう。
遊びを止める時も、「よし、もうそろそろリフレッシュ出来ただろう」とか邪な考えを持っていてはいけません。あくまでも、遊び終わったから、終わりなんです。それで、さてやることも無くなったし、よし今度はちょっと楽器でも触って遊ぶか、という何気ない感じが出来れば欲しいところですね。だからと言って棒読みで「よーし、今度は楽器で遊ぶぞお」とか口に出して言ってみたって、敵もそう簡単には騙されてはくれませんよ。あくまで自然体で。
でまあそんな感じで完全に一回リフレッシュというかリセットしてから、何気な〜く音を出してみると、さっきそれなりに煮詰めたと思っていた筈の音に対して「なんじゃこりゃ」という往年の刑事ドラマの名ゼリフを漏らしてしまったり、また逆に、さっきまでどーにもこーにも上手くいかんなあって思ってた筈の音が「あれこれ結構イイ感じじゃん」と思えたりして。結構、そんなもんだったりするんですよね。
まあ何でもそうなんだろうと思うんですけども、こう、根詰めて何かやってる方が俺今頑張ってるぜ輝いてるぜって実感があるのかも知れないんですけど、でもそうやって目を吊り上げてたら段々段々ハマッていってしまうということはあるんですよね。
木工や刃物研ぎなんかでもやっぱり同じようなことってあります。上手く行かない時にムキーとかなってやっても、余計に悪い方に向かうんじゃないかと思います。
あの、面白いもんで、「形を出す」という作業には、ある程度念力が必要な気がしたりするんですね。いや念力ってのはまあ本気でそう信じているわけでもないんですが、でも「平面にするぞ」とか、「刃の先っちょのここんとこだけ研ぐぞ」とか「ここはこお、すぅーっていう曲線だ」とか、色々意識するのとしないのとでは、実際に結果に違いが出るんですよね。
まそれは楽器の演奏だって同じことですけどね。たとえばスタッカートかレガートかを使い分ける時に、コンマ何秒で手を動かしてミュートして、というレベルまで細かく考えたりしませんもんね。「切る!」「繋げる」とか、あるいはもっと抽象的に「跳ねる感じ」「ノンビリした感じ」とかいう程度ですら意識した時点で、もう身体は反応してるっていうね。
ですから今言った念力ってのはまあ、肉体の動きをコントロールする為の、コマンドというかショートカットキーとでもいうか、そんなような物として作用しているんでしょうけど、まあでもとにかく、面白いぐらい意識の持ち様で実際の結果って左右されちゃうんですよね。
と言ってマンガか小説かなんかみたく「心の迷いが現れておるわい」とか「心を無にするのじゃ!」とか、そーゆーコト言いだしちゃうと、それはそれで別の方向にハマっていってるような気がしますけどね(笑)。なにもそんな言い方せんでもええがな、っていう。
まあ要するに、実際かなり神経を集中させないといけないコトってのはあるのだけど、ただそれが良い状態で集中出来ているのか、ムキになってカラ回りしてるのか、ってので話が全然違ってきてしまう、というアレで。
「あ、俺今煮詰まってる」って判っちゃったら、未練たらしく作業するよりか、スパッと気分転換しちゃう方がいいんじゃないかなって気がしますね。
特に音作りとかセッティング関係では、耳がオカシクなってるなって感じたら、本当にしつこくやっても無駄だと思います。一回リセットしないとね。した方がいいと言うより、しないとね。
あ、一応言っておきますけど、下心がどうとかいう心理戦か何かみたいなくだりは、あれテキトーに口が回ったというか指が回ってノリで書いちゃっただけですんでね。敵って誰のことやねん、という。蛇足と知りつつ一応。

[ 143] ++ DAIのカホン : ハマる ++
[引用サイト]  http://dai-k.jp/column/column_76.html



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