お疲れさまとは?

1957年生まれ。作詞家を経て、現在はエッセイスト。96年に京都在。99年より築七十年の町家に移り住む。主な著書には「東京育ちの京都案内」「東京育ちの京町家暮らし」「極楽のあまり風」(すべて文藝春秋)、新刊に「生活骨董」(PHPエル新書)がある。
前回、「ごくろうさま」だけでなく、「お疲れさま」という言葉も、いかに「ございます」をつけようが、目上の人に使うのは、失礼に当たる、ということを書きました。そしたら、知らなかったというサラリーマンの方が多く、やっぱりそうか、と思うことしきりでした。
というのも、私、講演会に招かれたりすると、主催者側のネクタイ族の方から、「お疲れさまでした」と、言われるんです。はい、違和感、感じます。いえ、目上とか、そういう意識は、私、ないんですよ。権威もなんにもない人間ですし。でも一応、講師だからでしょう、「先生」と呼ばれ、そのあとに、「今日はお疲れさまでした」と言われると、あれれ、と思う。だったら「麻生さん、楽しい話を、ありがとうございました」のほうが、よっぽどうれしいのに、と思います。
え? 私のほうが、間違ってるんじゃないか、ですか。でも、先日、テレビの主婦向け番組で、偶然、これがクイズとして出題されているのを見ました。はい、「失礼」というのが、正解でした。おまけに出演者(芸能人と視聴者の主婦)のほとんどは、ちゃんと「失礼」と答えていた。
番組では、会社などでも、外回りから先輩が帰ってきた場合、「お疲れさまでした(でーす)」というより、「いかがでしたか」とか、「暑かったでしょう」とか、具体的なことを言ったほうがいい、ということでした。
「お先に」「お疲れさまでしたー」、確かに、「さよなら」代わりには、便利な言葉ですし、会社のなかで、先輩に使う分には、私もいいんじゃないかと思います。
でも、いつも使ってると、前回の国会議員の「ごくろうさま」じゃないですが、つい外部の人間にも、使っちゃったりする。こういう失言というのは、言われたほうの人間の耳には、しつこく残りますからね。
芸能界では、「おはよーございまーす」「お疲れさまでしたー」と、符丁のように使うじゃないか、とおっしゃるかもしれない。でも、私が作詞の仕事をしていた頃の話ですが、レコーディングのあと、新人や十代のアイドルさんたちは、私に対して「お疲れさまでした」ではなく、「ありがとうございました」とか、スタジオに差し入れをしたときなら「ごちそうさまでした」と、言ってましたよ。もちろん、そうじゃない子もいましたが。
余談ですが、うちの夫の事務所(建築設計事務所)に行くと、夫、私に「お疲れー」というんです。そのたびに「妻は、従業員じゃありません!」と、言い返すのが私です。「ありがとう」と、なぜ言えないのか。うちの夫、ネクタイはしてないんですけどね。■
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[ 85] Insight/Break・流行前線/千年の都から(4)
[引用サイト]  http://www.kepco.co.jp/insight/content/break/break_aso04.html



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