武闘とは?

それは確かに彼女の青春が通りすぎてきた モーニング娘。の道のりを言い表していると思った。
とにかく5月のその日だけを目指して、カレンダーに必死にバツをつけ続ける他愛ない毎日だった。
昨年末に妙に体調が悪くなり、旧年中のご挨拶もせずにそのまま新年を迎えてしまった。 年が明けても体調は一進一退でなかなか霧が晴れてこないのだけれども、これはそういうものだと割り切るしかない。
『歩いてる』 が1位をとった後、娘。には8期メンバーが加入した。 光井愛佳。 吉川という子の脱落は惜しい気もしたけれども、この子が娘。に入ってくることにはまったく異存なく、諸手を上げて歓迎したい気分だった。
かつてのメンバーを含めて、これまでのどのメンバーにも当てはまらないタイプのように見えたし、それだからこそ選ばれたのだろう。
だが何よりも印象的だったのは、彼女の加入記者会見の際、光井から “目標の存在” と名指しされた久住小春の貌だった。 揺るがない視線で質問者を真っ直ぐ見、毅然とした表情で質問に答えるその姿は、いつの間にか先輩としての自覚と娘。としての風格を漂わせて、思わずそのシーンだけ何回も繰り返し見てしまったほどだ。
『歩いてる』 1位と光井愛佳加入の間に、ガッタスはスフィア最終戦を迎えた。 あさみとみうながそれを最後にチームを離れることになる試合。 自分もまた気心の知れた仲間とともに有明に駆けつけ、声を限りに応援した。
周知のように総合優勝はできなかったけれども、決勝戦のPK戦の、その最後の一蹴まで “負ける気がしなかった”。 戦前からネガティブな予想ばかり目にしたと記憶するし、それは無理もないことだったのだけれども、あの日あの時、ガッタスは翼を持ち、誰の手にも届かない中空
そのころから徐々に咳をすることが増え、それは体調が悪化していることの証でもあったけれども、のらりくらりと病の指先が触れてくるのをかわし続けた
手元には、11月30日の日付とその時所属していたガッタスメンバー全員のサインが入ったボールがある。 ひょんなことから自分の下に回ってきたのだけれども、握手会にもグッズにも興味を持てず、そういう類いのものを熱心に求めたことのなかった自分が、今それを持っている。
振り返れば それを手に入れた経緯を含めて 何か暗示めいたものを感じずにはいられない。 自分にとっては、それはまるで彼女たちからの 旅立ちの餞別そのものだ。
12月31日には紅白を見た。 裏番組はどれも強烈な魅力を持っていたけれども、そちらはHDDに録画して紅白を見た。 吉澤ひとみは相変わらず輝いていた。
けれども、その時確かにそれは何か別の輝きに見えたのだ。 代わりにメンバー、とりわけ新垣や藤本ははっきりと白く輝いていた。 これはもう感覚的なものだし、放つ光の種類が違うとでも言うしかない。
見終わった直後、除夜の鐘が響く中、自分はミクシに 「これで卒業だね」 ということを書いた。
正直に言えばここまで早く発表があるとは思っていなかったけれども、2007年が卒業の年となることに疑いはなかった。
残されたモーニング娘。は藤本美貴がリーダーとなり、高橋愛がその補佐をするという。 知名度云々という話をする人もいるらしいのだけれども、まったく問題ない。
むしろきっと、さらに輝くモーニング娘。を生み出してくれるはずだ。 自分たち自身の足で歩いてきた2006年、真剣に取り組み、それを楽しめば、何事もできるということをメンバーは学んだのだから。
藤本美貴の統率力を危惧する声もあると聞くが、それもまたまったく問題はない。 むしろ適任とさえ言ってしまってもいいだろう。 藤本美貴は優しくて温かく視野が広い。
気侭な発言の語尾だけを捉えて揶揄されることも多いけれども、彼女の懐の深さは立派にリーダーをつとめるに価する。 その上 外に向かっての話し方を知っている、即ち
“言葉を知る” 彼女なら、持ち前の負けん気と素晴らしい機転で、また新しいモーニング娘。をつくってくれるに違いない。
藤本美貴をローマに例えるならば、トライアヌス帝だろう。 後に 『至高の皇帝』 と讃えられながらもその称号を辞退した、ローマ史上最初の “属州出身”
サブリーダーとなる高橋愛はさらに大人になるだろう。 純粋な部分は失わず、大人の女性としてますます美しくなるに違いない。 上には圧倒的な存在感を誇る藤本美貴がいる。
傍らには娘。愛に満ち、誰よりも高橋愛を深く理解している新垣里沙がいる。 それぞれに個性と輝きを持った6期の3人もいる。
久住小春の背中を追いかけるように娘。に入ってきた光井愛佳は、小春とはまた別の位相において、新しい時代のモーニング娘。の象徴となるだろう。
衰退や行き止まりを想像するのは容易い。 それを想像して嘆くのも簡単だ。 だがそんなものは多分 何も生み出さない。
それは吉澤ひとみについて考えるときでも同じだ。 疾走し続けなければならなかった娘。から、今ようやく離れるのだ。 たまにはゆっくりと自分のペースで歩き続ける時代があっていい。
一度死に体にまでなった彼女が、立派に娘。のリーダーをつとめあげたのだ。 例えば3年前、誰がそれを予想できたというのか。
吉澤ひとみはまさに見送る人だった。 彼女の旅立ちを誰よりも祝福してくれる同期は、先に旅立っていった。 彼女が最初にモーニング娘。に入ってきた頃のことを見知っている人も、もうそこにはいない。
彼女はいつだって見送ってきたのだ。 もしかしたらそれは寂しいことかもしれないが、決して不幸なことではない。 今のメンバーは、かつての仲間が知らなかった吉澤ひとみを知っている。
時間はまだあるように見えて、これまでのどの娘。の例に漏れず、その日はあっというまにやってくるだろう。 瞬きをする間に、その日になっている。 惜しむべき時間はいつだって駆け足だ。
その日、彼女は何を唄うのだろうか。 あの罅割れた日々と和解することができるのだろうか。

[ 143] 武闘
[引用サイト]  http://seventhdawn.cool.ne.jp/mm/musume_index.shtml



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