ホルデンとは?
|
「Visier」2005年1月号に、存在すら全く知らなかったユニークな構造を持つアンティークライフルに関する記事が掲載されていました。 「開放されたレシーバーを持つ単発レバーアクションライフル。」 これは.44リムファイア仕様のアメリカ製Holdenライフルを短く、簡潔に描写したものである。(頑住吉注:私も初めて知りましたが、ドイツ語ではレバーアクションライフルを「Unterhebelgewehr」と言います。直訳すれば「下梃子小銃」です) それはまるで反射である。「レバーアクション」というキーワードが来たら、大多数の銃器コレクターの頭の中ではほとんどすぐに、自動的にもう「リピーター」というイメージが補完される。だがそれは決して正しくない。というのは、英語では「Lever」として知られる梃子は、少なくとも全く同様にしばしば単発後装銃において見かけられるからである。その大多数はアメリカ由来であり、1850〜1900年に開発されたものである。そしてそれは決して少数ではない。シャープス、Gwyn&Campbell、Stevens−Ideal、Burnside、Bullardの諸システムに基くフォーリングブロック後装銃、あるいはGallagherおよびMaynard方式の中折れバージョン…いたるところに遊底を可動式のトリガーガードによって作動させ得る銃がある。アメリカの著述家Jim Taylorはインターネットサイト( http://www.leverguns.com/articles/taylor/singleshot_leverguns.htm )で23のいろいろな製品をリストアップしている。しかし彼は次のように述べている。「このリストは完全ではない。(中略)私がいくつかを無視し、あるいは省略したことは確かである。そのアイデアを実行に移すことを試みた無名の銃器設計者は膨大に存在した。」 そうした無名の人々のうちの1人がC.B.Holdenである。彼は一時期、Wesson&Herrington社(ハーリントン&リチャードソンの前身)を設立し、特にそのユニークな「ツートリガーライフル」で知られるFrank Wesson(1828〜1899)の下で働いていた。C.B.HoldenがWesson同様ニューイングランド州出身であるのかどうか、彼がどこで手作業を習得したのかはまったく闇の中である。そう、彼がいつからいつまで生きていたのかすらまだ突き止めることができないのである。いずれにせよ彼は、多くのライバルたちがそうしたように、1862年にある後装銃を公開した。前年に南北戦争が始まっており、当時銃器技術者たちがワシントンの国防省に集まってきていた。専門家たちは、1850年代半ばから1865年の南北戦争終了までに、少なくとも30のいろいろな後装銃が軍のために作られたと見積もっている。この数は、使用された銃器モデルの異なるバリエーションまで算入すれば10倍になるだろう。 重要でない技術者であるC.B.Holdenがこうした全てのいきさつを正確に知っていたということは、最高度にありそうもないことである。しかし彼はこのときすでに、熱い戦いが行われているマーケットにおいて自分がたった一つのチャンスをつかむのは、当時普通だった諸バージョンと全く異なる作動の設計を行ったときしかないと感じていたに違いない。彼もメカニズムを作動させるために可動式のトリガーガードを使ったし、この銃にもブロック状の遊底があったが、ライバルたちの諸モデルとの共通点はそれだけである。 コレクターの世界ではHoldenのデザインは「オープンフレームライフル」の概念の下に知られている。というのは、レシーバー右側が開放されたままだからである。これには充分な理由がある。Holdenはブロック状の遊底とハンマーをレシーバー内に設置した。双方を操作するには、射手の手がレシーバー内に介入できなくてはならない。装填とコッキングは子供でも分かるほど簡単に推移する。遊底とハンマーにはレシーバーの開口部に向けて丸い穴がある。ロードのためにはまず人差し指で後方にあるハンマーをそれがロックされるまで後方に引く。次にトリガーガードを下げる。その際これによりトリガーガードと結合された遮断エレメントが下に傾く。この遮断エレメントは遊底をバレル後方で安全に固定している部品である。これで初めて遊底がハンマー同様人差し指によって後方へ動かせる。装填は次のように行われる。弾薬を入れる、遊底を前に押し動かす、トリガーガードを上に回す、そしてこれにより遊底は前のポジションで固定される。これら全てのエレメントの連動のためには遊底後部の尾のような形の延長部が役割を果す。この延長部はa)ハンマーの誘導レール、b)これによりトリガーガードと連動する遮断エレメントが遊底をロックすることができる端部、の役割を果す。 点火のためには長さ約4cmのファイアリングピンが用意されている。これはハンマー前面上部に組みこまれている。ファイアリングピンは対応する遊底の穴を通って滑り、この結果その先端がチャンバーに差し込まれている弾薬のリムの上部に達する。この銃に使われるのは.44リムファイア弾薬である。これは当時全く新しい弾薬だった。1860年に発明され、Ken Warnerの弾薬に関する基礎的著作「Cartridges of the World」によれば1860年、同年にパテントが取得されたアメリカの天才的設計者イーサン・アレンのカービンとともにマーケットに登場したらしい。後年Ballard、Howard、レミントン、Robinson、そして一時期HoldenのボスだったFrank Wessonブランドのライフルもこの弾薬を射撃した。この弾薬の生産は1920年代に終了した。 まわりがすっかり丸められたレシーバー(頑住吉注:要するに輪切りにすると断面が楕円に近い形ということです)のデザインは、Wessonファミリーの製品を思い出させ、鋳鉄や鍛鉄ではなくブロンズで作られていたようだ。レシーバーの開口部の後方には四角形の閉鎖プレートが見られる。その表面はレシーバーの丸い形をなぞっている(頑住吉注:この閉鎖プレートというのはリボルバーのサイドプレートのようなもので、これを外すと内部メカが露出します。で、断面が丸いレシーバーの一部をなすような曲面になっていますが、横から見れば四角い形ということです)。この閉鎖プレートは理由があってより早く登場したS&Wリボルバーのそれに似ている。そう、HoldenのボスだったFrank Wessonは、S&Wの共同設立者Daniel Beard Wessonの弟なのである。 これに対し可動式のトリガーガードはモダンなレバーアクションリピーターを思い出させる。今日のブローニングBLR(頑住吉注: http://www.midwestgunworks.com/page/mgwi/CTGY/C-008 )のように、Holdenのオープンフレーム銃はトリガーがトリガーガード(頑住吉注:つまり通常のように本体側ではなくレバー)に組み込まれている。その直後には厚さ約8mm、長さ約12mmの小さな金属プレートがある。これは下部はトリガーガードと、そして上部は遮断エレメントと結合されている。トリガーガードが下がるとすぐ、この小さなプレートは遮断エレメントを下に引く。トリガーガードが再び上昇すると、後上部はレシーバーにネジ止めされたホルダーにロックされる。 この銃はそのシンプルな構造によって納得させるものであったにもかかわらず、マーケットに定着することはできなかった。Holdenの構造に非常に特徴的な開放されたレシーバー側面は、同時に最も大きな欠点でもあることが分かったのである。フィールドにおいて、あるいは狩に際して、ここからあまりにも容易に泥が侵入し、この結果銃は動かなくなった。その上当時、遊底の閉鎖エレメントはハードな負荷の持続に抵抗力がなさ過ぎるような印象を与えた。手持ちの銃の閉鎖機構がたっぷり140年後でもまだ難なく機能するにもかかわらず(頑住吉注:それはひょっとしてダメな銃だったせいであまり使われなかったからでは)。 このためHoldenの.44口径ライフルが大きな成功を呼ぶことはなかった。すなわち1862年以後に作られた銃はおよそ200挺であり、生産は1970年代までだったらしい。Holdenライフルは、アメリカのアンティークガン界の権威、Norm Flaydermanによれば「C.B.HORDEN,WORCESTER,MASS」の刻印を持つとされる。だが手持ちの銃はバレル上部に2行で「HOLDEN’S PATENT/APRIL 1862」と目立つよう刻印されている。Antique Firearms社のHartmut Burgerによれば、かつて多くのコレクターはこの銃の代価2000〜2500ユーロを非難した。…彼らがそもそも1挺の銃を見つけたときに。というのは、今回撮影された見本品は撮影作業終了後、直にある珍システム銃のコレクターのコレクションに移される(頑住吉注:たぶん以前は高価すぎると文句を言われたが、現在ではそれ以前に入手が不可能に近くなっている、ということが言いたいようです)。 いずれにせよC.B.Holdenはこの失敗にめげなかった。彼はいくつかの銃器開発の途上で、さらに多くのUSパテントを獲得した。そしてそのうちの1つはオープンフレームライフル同様大量生産に適するほどに熟成の域に達した。すなわち、彼は1870年代半ばから1890年代の終わりまで、大部分は.22口径弾薬用の「チップアップライフル」(傾斜バレルライフル)を製造した。しかしこれも2、3百挺の銃がもたらされただけだった。その後Holdenの旅は歴史の暗闇の中に失われた。 型:「下梃子」とブロック状遊底を持つ後装銃。28インチオクタゴンバレル。レシーバーはブロンズ製。発火機構の部品はケースハードゥン。バレルはブルーイング。ツーピースの(頑住吉注:ウィンチェスターのレバーアクション銃のようにストックとフォアグリップに分かれている)クルミ材製ストック。ストックには鍛鉄製ハーフムーン型バットプレートを装備。タンジェントサイト。アリミゾノッチにセットされた角材型フロントサイト。ストック「首部」には距離調節サイト受け入れのためのアリミゾ口金の削り加工が見られる。 久々に死ぬほどマイナーなアンティークガンのお話でした。文章だけでは分からないと思うんでこれも久々に下手な手書きのイラストでご説明いたします。 これは断面図ではなくサイドプレートを外しただけのそのまんまの図です。後方の窓状の部分は使用時にはサイドプレートでふさがれますが、前の大きな開口部は使用時でも豪快に開いたままなわけです。スキャンしてみたら色分けが良く分かんなくなってしまいましたが、装填から排莢までの手順をこれで説明します。まずグリーンで表現した変な形の直動ハンマーの穴に指を突っ込んで後方に引きます。すると分かりにくいですが茶色で表現したフック状のシアにひっかかってコック状態で停止します。次にトリガーガードを下げます。ただし通常のレバーアクションよりずっと小さな角度でしか動きません。すると赤で表現した「遮断エレメント」、つまりロッキングブロックが下降します。閉鎖時は「遮断エレメント」が青で表現した遊底の後方の尾状延長部を図のように「つっかえ棒」していますが、これが解除されるわけです。すると遊底はフリーになるので遊底の穴に指を突っ込んで後方に引きます。これでチャンバー後方が開放されるので、ここに.44リムファイア弾薬を入れます。遊底を手動で再び前進させ、トリガーガードも戻すと発射準備完了です。トリガーを引くとハンマーが前進してファイアリングピンが弾薬のリムを突き、発射します。文章で説明されていませんが、装填時と同じ手順で遊底を後退させるとオートピストルのような形式のエキストラクターが空薬莢を抜き出すのは間違いなさそうです。ただ、エジェクターの形式は不明です。 いかがなもんでしょうか。この記事には「この銃はそのシンプルな構造によって納得させるものであった」と書かれていますが、私は納得できないです。確かにシンプルではありますけど単発銃である以上シンプルなのは当たり前です。優れた設計者なら当然トリガーガードを下げただけでロックが解除された後に遊底とハンマーが後退して排莢し、後はチャンバーに弾薬を入れてトリガーガードを戻せば発射準備完了となるようにするでしょう。こんなに手間がかかっていいならもっとずっと単純に設計できるはずです。例えばトリガーガードは固定とし、トリガーを引くとまずロッキングブロックが上昇してからハンマーが前進するようにすればかなり単純化します。トリガーが重くなったりストロークを長くとらなければならないのがどうしても嫌なら、ロッキングブロックの一部を何らかの形で露出させて直接操作できるようにすればいいでしょう。要するにこの銃はわざわざコストも上がり強度的な弱点にもなるレバーアクションにする必然性がないと思われます。 とまあかなり不合理に見える銃ですが、だからこそ失敗したわけでしょう。長い銃器の歴史にはこんな、どう考えてもダメだろうというアイデアを一生懸命形にして案の定成功できずに無名のまま消えていった設計者もいた(というか数的にはたぶんそういう人の方が圧倒的に多いんでしょうが)というお話でした。 |
[ 80] ホルデン オープンフレームライフル モデル1862
[引用サイト] http://www.h5.dion.ne.jp/~gun357/holdenrifle.htm
|
──夜。「はいあなた、あーん」「あーん♪」 なんて、甘い事をやっているとある新婚家庭の夕食時に、その日、とんでもない乱入者が現れた。「ふはははは! 邪魔するぞー!」 入口の戸を蹴破り、荒々しく入ってくる一人の筋肉男。しかも身に付けているのは下半身を申し訳程度に覆っただけの薄絹一枚だ。「きゃー!」「な、なんだお前は!」「ふっ、俺か? 俺は盗賊のホルデン様だー! そりゃー、お前等やっちまえー!」「うぉぉぉーーー!」 号令一下、さらに大勢の男と、そして犬顔のグドン達までもが入口から一気に押し入ってきて、あっという間に夫婦を縛り上げると、家財道具の一切合切を運び出してしまう。 やがて……一転してガランとした室内には、縛られた新婚夫婦と、ホルデンのみが残された。「ふっふっふっふ。さぁて、おめえ達からはもうひとつ、いいものを頂戴しようか」「な、何を……!」 縛られ、床に転がされた二人を、ニヤリと笑いつつ見下ろすホルデン。 そのごつい手が妻の方へと伸び、ぐいと持ち上げた。「きゃーーー!!」「ま、まさか! やめろ!!」 最悪の想像が、夫の胸を絶望に染め上げたが……。「あーもーうるせー声だな。だから女ってのは嫌いなんだ」 顔をしかめて、ホルデンは妻を夫から離れた場所に置き、振り返る。「ふふふふ……さぁて、お楽しみはこれからだぜ……」「…………」 まっすぐにこちらへと向けられた血走る目と、荒い鼻息。 夫は……さらに最凶の事態に今まさに遭遇しようとしている自分の立場を知った。「ん〜」 髭面の逞しい顔が、唇を尖らせて夫へと迫る。「よ、よせ! やめろ! やめてくれぇぇぇぇぇ!!」「あなた! あなたぁぁーーーーーーーー!!」 響き渡る、夫婦の絶叫……。 声は、夜空へと吸い込まれていく。やがてその空には星が流れ……はかなく消えていったのだった……。 ──数日後。 冒険者達が酒場へと入ると、なにやら霊査士の少女が真面目な顔で男物の下着を握り締め、じっと見つめている。「……あっ! み、皆さん! これはその、違うんです! 違うんですよ!!」 見られている事に気がつくと、慌てて両手を背中に隠し、真っ赤になって首をぶんぶん横に振った。「こ、これはその、さる盗賊の持ち物なんです。今入ってきた新しい依頼に関して、情報を得ようとしていた所で……あの、本当にそれだけなんです! それだけなんですよっ!!」 必至に訴える少女をまあまあとなだめて、冒険者達はその依頼とやらを聞く事にする。もののついでというやつだ。「ええと……今、近隣の町や村に、新婚家庭ばかりを狙うホルデンという盗賊が現れているのです。結婚後間もない家庭に押し入っては、お祝いの品などを根こそぎ奪い取るという手口なのですが……その、盗むのは、それだけではないのです。ほ、ホルデンは……あの……」 と、また急に赤い顔になる霊査士の少女。 どうしたのかと尋ねると、大きく息を吸い込み、決心したように目を開いて、再び話し始める。「新婚の夫の方の唇を奪っていくのです。いえ、唇だけでなく、全身に……く、口付けをするそうで……つまりその、そ、そーいう趣味の人らしいのです。はい。で、それを捕まえて欲しいという依頼なのですが……ど、どうでしょう?」 ……いや、どうでしょうと言われても……。 彼女の話を聞いて、思わず身を引く冒険者達であった。まあ、当然の反応だろう。「既に、次に狙われるであろう新婚家庭にも目星はついており、夫婦にもご協力頂いて、家を捕り物に貸して頂ける手はずになっているのです。この家で皆さんが罠を張って待ち受けるという計画で行くように、段取りを整えて下さい。もちろん、夫婦役もきちんと決めて、中睦まじく振舞って頂かねばなりません。でなければ、ホルデンも罠にはかかってくれないでしょう。他の皆さんは家の内外に潜み、盗賊達が押し入ってきたら一斉に反撃に出て一網打尽にして下さい。捕まえた盗賊団は、まとめて最寄の役人に引き渡してもらえれば良いです。そこまでが依頼となります」 ようやく落ち着いてきたらしい霊査士の少女が、次に盗賊達の陣容などについて語り始めた。「彼等はホルデンを頭目に、十名程の手下と、同じく十名程の犬顔のグドン達を引き連れています。グドン達には食べ物を分け与える事で、協調関係を築いているようですね。ですから、相手が盗賊と言っても、油断はしないで下さい。それに……頭目のホルデンも、色々な意味で手強そうな人物だと思われますので……」 全ての説明を終えた少女が、ほっと息を吐いて、深くお辞儀をする。「私からは、以上です。どうかよろしくお願い致します」「…………」 一方、成り行きとはいえ依頼内容を聞いてしまった冒険者達は……さすがに少々困ったような顔になり、どうするかしばし思案していたということだ。 「今帰ったぞ、おまえ」 ドアを開けつつ、ストライダーの武人・カッシュ(a00002)が、家に入ってくる。「おかえりなさいなのだ、あなた」 笑顔で台所から顔を覗かせ、出迎えたのは、ヒトの重騎士・キールである。胸に大きなハートマークのついたピンクのエプロン姿だ。「おっ、これ、うめぇな!」 テーブルに並べられた料理の皿から肉をひとつまみ取ると、カッシュが口へと放り込む。「そーぉぅ? じゃぁ、これも。はい、あーん」「うめぇなっ」「こ、こらっ! どこまで舐めてるの!」「いいじゃねぇか、うめぇんだから」「そ、それ以上は……もうちょっと遅くなってか・ら……」「おまえ……」「……あなた」 見詰め合う、瞳と瞳。「キール!」「カッシュ!」 お互いの名前を呼び合うと、ひしっと抱き合う二人だ。「この後一緒に風呂にはいろーな。いつものようによ」 だらしなく微笑みつつ、カッシュがぽんとキールのお尻に手をやった。「…………」 その瞬間、若妻のこめかみに血管が浮き上がると──。 ──ごっ☆ 鈍い音が……した。 キールの膝が、マッハの速度でカッシュの股間にめり込んだのだ。「お゛……お゛お゛お゛お゛……」 顔を緑色にして、その場にずるずると崩れ去るカッシュ。「あなた! どうしたのだ! しっかりするのだ〜!」 とか言いつつ、さらにキールが夫の頭を踏んづけて、床板に叩きつけた。「ごぁぁっ!」 どれだけの力がこもっていたのか……カッシュの頭は、どこっ! と一撃で床板をぶち抜き、突き抜ける。「……」 その傍らには、全身を金色に塗りたくり、トマト柄のパンツ一丁に蝶ネクタイという姿でインテリアの彫像になりすましたヒトの医術士・ポチョムキン(a01214)が立っていた。逞しい笑顔を浮かべてポージングを取り、素晴らしい筋肉美を見せつけつつ、若い夫婦達の微笑ましいヒトコマを見下ろしている。「……ふむふむ。若奥様のお尻は危険、と……」 台所の片隅では、興味深げな視線でなりゆきを見守るストライダーの翔剣士・ルーニィ(a00826)の姿もあった。物陰に潜みつつ、現在待機中だ。ソーセージをつまみ食いしながら、手にした『乙女のメモv』に、先程から何か一生懸命書き込んでいる。 ……家の中は大体そんな感じだったが……外でも次第に動きが出てきていた。「……来たな」 静かな声で、ストライダーの忍び・ツキトジ(a00294)がつぶやく。家の裏の林の中である。 暗闇の中を、二十人程の影が家へとまっすぐに近づいてきていた。「団体さんのお着きだ。せいぜい歓迎してやろうぜ」 ニヤリと笑いつつ、ヒトの狂戦士・バック(a01803)が自らの拳をさする。「さて、準備準備、と♪」 どこか楽しそうに、あらかじめ用意していた肉をその場に広げ、うちわで扇ぎ始めるのは、エルフの翔剣士・リリィ(a01132)だった。盗賊には分からないだろうが、食い意地の張った犬グドンなら、これくらいはすぐに嗅ぎつけるだろう。「あーあ、でも、できれば私もできれば新妻役をやりたかったですね……」「ふーん、なら、ここで俺とやるかい?」「……え?」 パックに微笑みかけられたが……。「遠慮しておきます。ここでやっても意味ないですし」「あらら……そりゃ残念」 リリィに苦笑交じりにすぐ言われ、肩を落とすパックだった。「ふふっ、たっぷりむっつりギンギンにお仕置きしなきゃだよねー♪」 犬シッポを楽しげにふりふり揺らしながらの言葉は、ストライダーの牙狩人・ココ(a01593)だ。「……なンでもいいけどよ。油断すんじゃねェぞ、ココ」 ストライダーの忍び・シンザンが、そんな少女をたしなめるように声をかける。「うん、わかってるよー。もう、シンザンってば、そんなにキンチョーしたらダメなんだぞっ♪」「……」 あくまでも明るい少女に、いや、お前の方こそ少しは緊張しろよ、と、言ってやりたい彼だった。「さて、では行くか」 ツキトジの台詞に皆が頷き、音もなく移動を始める。 盗賊も、グドンも、彼等の存在にはまったく気がついてはいなかった。「うはははは! 邪魔するぞー!」 ドアを蹴破り、『愛の巣』と書かれたのれんをくぐりつつ、家へと突入する筋肉男──盗賊ホルデン。「……ぬ?」 彼の目にまっさきに飛び込んできたのは、キールがカッシュの頭を踏んづけている場面だった。「ほほぉ……なーるほど。そういう趣味か。結構結構」 満面の笑みを浮かべつつ、コクリと頷く。どうやら何か勘違いをしたらしい。「だが! 漢はいぢめる対象にあらず! 大きな愛で包み込むものだ! ええい女! そこをどけぃ!!」「……」 命じられるまま、あっさりキールが横にどくと、ホルデンはつかつかとカッシュに近づき、首元を掴んで床に刺さった彼の頭を引っこ抜いた。「おお……なんと麗しい……」 キールの攻撃により、鼻血を吹いて白目を剥いているカッシュの顔に頬を染めると、ゆっくり顔を近づけていく。「……いよいよね……わくわく♪」 ごくりと、台所で息を飲むルーニィ。助ける気は……今はまだない。 が……他の者が動き出した。 金色に塗られた、筋肉の彫像が……!「お待ちなさい」「むぅっ!」 ぴっちりトマトパンツに蝶ネクタイの黄金筋肉は、言うまでもなくポチョムキンだ。「それだけの筋肉を持ちながら悪に染まるとは……まったく嘆かわしい。この爺めが真の筋肉の心をお教えして差し上げましょう」「ふっ……面白い! ではこの愛らしい犬シッポちゃんを美味しく頂く前に、お前を筋肉合戦で潰してやろう!」 互いに力強いポーズを取り、そんな言葉を言い合う漢達。 猛る筋肉を持つ者に、それ以上の台詞は不要だった。「いざ!」「筋肉勝負!」 うぉぉぉ、という気合と共に、凄まじいまでの速さと勢いでもって腕立て、腹筋、スクワットが繰り返される。 ポチョムキンの回りには、一抱えくらいのフワフワの毛玉──護りの天使が飛び回っていた。 使う者の特性もあってか、なんとなくそれすらも筋肉質なように見えたが……たぶん気のせいだろう。「……うーん……これは凄いわ! 旅団の皆にも後で報告しなくっちゃ♪」 目の前で繰り広げられる光景を見ながら、こちらもまた凄いスピードでメモを取りまくるルーニィであった。「若奥さん、パン屋です」 家の近くで待機していた盗賊達の近くで、そんな声。「……?」 怪訝な顔で振り返った盗賊の一人の側には、いつの間にかにっと笑ったバックが立っていた。「な……!」 叫ぼうとした時は、もう遅い。そいつの顔めがけて、次の瞬間ツキトジがクリームたっぷりのパイを叩きつけてやる。「わぶっ!」「な、なんだ!? どうした!?」 たちまちのうちに混乱する、盗賊達。「……一箇所に固まられてちゃ、静かにやるのは不可能だよな」「やもうえまい。ここはひとつ、派手に行こう」 頷き合い、手当たり次第に目に付いた雑魚盗賊を張り倒していく二人だった。「……来ましたよ、犬顔グドン」 一方、グドン達の方はというと、リリィの流した肉の臭いに誘われて、冒険者達が待ち受ける罠へと順調に誘われている。「よーし、じゃああいつらが罠にかかったら、俺が最初に攻撃をするから、その後にお前らが続──」 と、シンザンが指示を出しかけたが……。「えぃっ☆」「のわぁーーッ!!」 どん、と、その背中をココが押し、物影からシンザンが飛び出す。 さすがに驚いて全員立ち止まる犬グドン。 そして……止まったその位置こそ、彼等が仕掛けた罠の場所だった。 ──どぉん。 地響きがして、地面が一気に陥没する。巨大で深い落とし穴だ。「きゃーうまくいったー♪ えらいぞシンザーン♪」 グドンをまとめて叩き落す事に成功したのを見るや、嬉しそうにぴょんぴょん跳ね回るココ。「……まあ、確かにうまくはいきましたけど……」 と、リリィはなにやら複雑な表情だ。 チラリと穴を覗くと、底の方でグドン達の中にシンザンが埋もれて、ひくひく痙攣している。「いいんでしょうか……これで」 思わず首を捻る彼女であった。「……雑魚とはいえ、さすがに数が多いな」「しかし、逃がすわけにはいかんぞ」「ああ、分かってらあ!」 家の近くでは、バックとツキトジが、相変わらず雑魚盗賊相手に奮戦している。 そこに……最強の助っ人が現れた。「……一つ一夜にくねぶらりんv 二つ不思議と輝くお尻v 三つ魅せましょ薔薇雫……v」 どこからともなく不気味な曲が流れ、そんな声が響いてくる。「な、なんだ……」「おい、あれを見ろ!!」 誰かが叫び、指差した。 ……屋根の上を。 暗がりの中に浮かぶ……逞しい尻の筋肉……。 やがて雲間から月の光が差し込むと、そこには背中に薔薇の刺青の入った筋肉の城が現れた。「あぁ〜んv 愛のナース・サマンサ参上よぉんv ホルデンちゃん、あたしと勝負よぉんv」 エルフの医術士・サマンサ(a01672)。ぴっちぴちの看護服にはちきれた想いのたけをたっぷり詰め込んだ愛の妖精だ。「で・もv その前に……」 光る瞳を目一杯に開いて、眼下を見下ろすサマンサ。「いやぁんv こんなに可愛い男の子たちがいっぱいよぉんv 美味しそう……v ガマンできないわぁぁ〜〜んvvv」 叫び、両手を広げて、夜空へと飛び立った。 そのまま地響きを立てて盗賊達のど真ん中に着地すると、片っ端から捕まえて、愛の世界にご招待する。「ほらほらぁ〜〜v とってもジューシィ〜よぉ〜んvv」「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 サマンサの愛の洗礼は、常人にはあまりにも危険すぎた。 あっという間に、その場にはヌケガラとなった使用後の盗賊達が積み上げられていく。「……なんというか、奴が味方で良かった。心の底からそう思うぞ……」「……ああ、同感だな。けどよ、近づいたら俺達も危ないぞ」 バックとツキトジは、身体も心もたっぷりその場から遠ざけて、すっかり観戦モードだ。「やややっ! てめえ! 俺様の可愛い子分達に何してくれやがる!!」 と、そこに異変を感じたホルデンが、家から飛び出してきた。「んまぁ〜v あなたがホルデンちゃんね〜v 今こそあたしと勝負よぉ〜んv」「面白ぇ!! ヤッてやるぜ!!」 一気に最高潮へと盛り上がる両者のボルテージ。「……うぅぅ……ひどい目にあったぜ……」 そこに、よろよろとシンザンがやってくる。「えいっ☆」 背後から駆け寄ったココが、またもやその背中どんっと押した。「わっ!? な、なン──」 よろけたシンザンは、まっすぐにサマンサの方へ……。「あたしの技は……こうよっvv」 叫ぶと、サマンサは彼の頭を鷲掴みにして、一気に手元に引き寄せる。 ──ぶちゅぅぅぅ〜〜〜……。「うぬ、負けるか! ならばこちらも!」 ホルデンはホルデンで、まだ家の中で白目を剥いていたカッシュを引きずり出すと、 ──ぶっちゅぅぅぅ〜〜〜……。「…………」「…………」 冒険者、生き残りの盗賊も含めて、その場にいた全員の動きと思考能力が、一瞬停止した。「……さらば……我々は君達の貴い犠牲を忘れない! その魂……熱く永久にっ!」 窓辺では、キールが熱い涙を流している。 見上げた夜空に、大きくカッシュとシンザンの笑顔が浮かび、消えていく……そんな幻影が見えた気がした。「ほぉらぁ〜v あたしが治療してあげるわぁ〜んvv」 ……全てが終わった後、真っ白に燃え尽きたカッシュとシンザンの顔を持ち上げて脇の下に押し付け、毒消しの風での治療を試みるサマンサ。 森林を渡る心地よい風のような空気の流れがたちまち二人を包んだが……効果はなかったようだ。 それどころか、形容不能な断末魔の叫びを上げると、後はピクリとも動かなくなってしまう。「ふむ……ではこの爺めも、何か癒しを施してみましょう」 全身金色のポチョムキンが、ポージングを決めつつさらに強烈な治療を試みたが……結果は同じだった。「楽しかったねー♪」「そうね〜。メモも随分書けたし、いう事なしね。あはっv」 ココとルーニィが、そんな事を言いながら明るく笑っている。 ホルデンはというと、ココの放ったホーミングアローが尻に突き立った上に、ルーニィの用意した網に絡め取られ、彼女達の足元に転がっていた。さすがにポチョムキン、サマンサと続けて死闘(?)をしたせいで、その後あっさり捕まえる事ができたのだ。「……他の盗賊達もあらかた縛り上げたぞ」 と、ツキトジがやってくる。「グドン共は適当に追い払ったが……それでいいんだよな?」「ですね。悪いのは盗賊の方だけですし」 バックの台詞に、頷くリリィ。 めでたく、これにて一件落着である。 しかし……。「さぁ……ホルデンちゃぁんv お楽しみはこれからよぉんvv」 まだ、満足していない者が約一名……。「責められるのも悪くないわよぉんv きっと癖になるんだ・か・らv」 服を脱ぎつつ、縛られた盗賊に迫る筋肉妖女、サマンサ……。「ぬぉぉぉぉぉぉ!!」 その『お楽しみ』がいかなるものであったのか……さすがのホルデンも、悲鳴を上げたとの事だ。 もちろん、他の冒険者達は、一様に目を背けていたという。 この世に悪がある限り、正義の冒険者達が今日も行く──。■ END ■ あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。 |
[ 81] 無限のファンタジア
[引用サイト] http://t-walker.jp/mugefan/adventure/replay.cgi?sceid=37
