ばなしとは?

手ぬぐい職人の伊之助(ラサール石井)は、妻・おきわ(篠井英介)に惚れぬき、近所の住職・重善(板尾創路)との不倫にも目をつぶっている。しかし重善に婿入りの話があると知ったおきわは焦り、また、しつこい夫への嫌気もあって、ふぐ中毒に見せかけて伊之助を殺害。計画は成功するが、翌朝、火葬場から伊之助が元気に帰って来て…。
原作は北條秀司が40年以上前に書いたコメディ。完成度は高いが、笑いは時代を敏感に反映するから、書かれた当時どんなに面白くても、そのままでは絶対に色あせる。
KERAは、大手術を敢行した。時は現代、妻の不倫から自殺を図って入院した男を先輩がなぐさめる。そして、「こんな話があるんだよ」と、北條版を聞かせるのだ。しかもセットは抽象、衣装も(江戸時代の話なのに)デザイン性の高いもの。おきわを演じた篠井英介は、普段のショートヘアのまま。あらゆる点で、抽象的でシンプルな現代的解釈がほどこされていた。
ラストは、そのふたりが時空を越えひとつに。北條が用意したどんでん返しを、さらにKERAがひとひねりした格好だ。それがまるで、KERA版と北條版が、タイトルにある狐と狸のごとく騙し合った構造に見えた。これこそ、古い脚本を再演する意味だろう。板尾創路の色気、ラサール石井の上方男ぶりも自然で、いいプロデュース公演の見本だった。
『特権階級のセクト主義とイデオロギーの演劇に抗し、あくまで一般庶民のための格調ある舞台を創造する。この信念は終生、変わることがない』 これは1996年に93歳でこの世を去った劇作家、北條秀司が生涯貫いた劇作精神である。この庶民に対するあくなき愛情が、どの作品にも色濃く表れている。高いところから見下ろすのではなく、同じ人間の目線で見つめつづけた作家の洞察力は確かで、こんな時代だからこそより強い有効性を感じる。 この作品は、1961年に東宝劇場で上演された戯曲である。この作品はタイトルが示すように狐と狸の化かし合い。人間の際限ない欲望を喜劇タッチで描いた傑作を、ナンセンスな笑いとポップな感覚で現代の演劇シーンをリードする「ナイロン100℃」を主宰するケラリーノ・サンドロヴィッチが見事に平成の世に甦らせた。
1982年、ニューウェーブバンド・有頂天を結成。並行して85年に犬山イヌコ(当時は犬山犬子)、みのすけらと劇団健康を旗揚げ。 92年の解散後、翌93年にナイロン100℃結成。(現在も活動中)99年「フローズン・ビーチ」で第43回岸田國士戯曲賞を受賞。以降、数々の演劇賞を受賞。近年、舞台活動では劇団公演に加え、外部プロデュース公演への参加も多数。また、映画・テレビドラマの脚本・監督も手がけるなど多方面で活躍中。

[ 5] トムプロジェクト
[引用サイト]  http://www.tomproject.com/works/kitsune.html



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