共著とは?

一人で黙々と1冊の本を書き上げるより、共著の方がぐっと気持ちが楽になります。「一人じゃないんだ」と感じられるからです。共著の場合は「これは自分の作品だ」という気持ちが薄れます。印税も少なくなります。ただし、その代わりに「共著者との友情」という大きなプレゼントをもらえます。共著は、なかなかいいものです。今回は、これまでに私が関わった4冊の共著を紹介しましょう。これからライターを目指す人に、少しでも参考となる情報を提供できれば幸いです。
最初に紹介するのは『Visual Basic for Windowsの本格的応用』(CQ出版社刊)です(写真1)。何を隠そう、これは私のデビュー作です。共著者の古橋寛仁氏とは、まったく面識がなく、書く前に打ち合せもしませんでした。そのため、この本の内容は、Visual Basicがテーマであることは共通していても、前半(古橋氏担当)と後半(矢沢担当)では、まったくつながりのないものです。そうであっても、プログラミングのTips本として、十分に成り立っています。読者対象は、プログラマです。プログラマは、断片的であっても自分に役立つ情報を得られれば満足してくれるのです。
「いつか共著者に会ってみたいなぁ」と思っていたら、発刊の2年後に、その機会が訪れました。私が転職した会社に、偶然にも古橋氏が在籍していたのです。私が入社する直前に古橋氏は退社していたのですが、「そういう関係ならいいでしょう」と上司から連絡先を教えてもらえました。さっそく連絡を取ってみると、古橋氏は、喜んで会ってくれました。初対面の古橋氏と私は、まるで長年の友達どうしのように楽しく語り合いました。私たちには、共著という切っても切れない縁があるのです。この縁を、何に例えたらいいでしょう? 結婚と言うほどではないですが、それに近い感じがします。二人で、1つの本を生み出したからです。
次に紹介するのは、『親と子のインターネット&ケイタイ安心教室』(日経BP社刊)です(写真2)。東京都北区立赤羽台西小学校の野間俊彦先生との共著です。「マナーで防いで、技術で守る」というキャッチフレーズで企画された本であり、前半のマナー編を野間先生が担当し、私は後半の技術編を担当しました。野間先生は、小学校のインターネット教育者として、とても有名な方です。野間先生の足を引っ張ってはいけない、私は気合を入れて書きました。共著は、私だけのものではないのです。
出版社の編集者さん、野間先生、そして私の3人は、直接顔を合わせて数回の打ち合せを持ち、メールで頻繁に連絡を取り合いながら書き進めて行きました。執筆作業は順調でしたが、私には心配事がありました。それは、前半部と後半部の文書の表現を統一できるかどうか、1冊の本として美しい流れを作れるどうかです。この本は、エンジニアが読む技術解説書ではなく、小学生や中学正の子供を持つ親が読む一般書です。Tips集みたいな本にはできません。
完成したゲラ(印刷前のチェック用原稿)を見て、私の心配は吹き飛びました。「さすが編集者さんはプロだ!」と感動しました。表現も流れも、前半部と後半部で見事につながっているのです。221ページで定価1200円の手軽な本ですので、よろしかったらぜひお読みください。「まるで一人の著者が書いたみたいだ」と感じるはずです。
3つ目に紹介するのは、『プログラミング未経験者のための基本情報技術者午後プログラム言語』(日経BP社刊)です(写真3)。これは、とってもにぎやかな本です。セミナー講師総勢6人で、ワイワイ、ガヤガヤと作った共著です。セミナー講師になるような人の中には、個性的な人が多いので、1冊にまとめる作業をした編集者さんは、とても大変だったと思います。
共著の印税は、どうなるのだろう? ということが気になるでしょう。本自体の印税は、一人で書いた場合と同じで定価の10%程度です。これを、共著者が分け合います。「どのように分けるかは、共著者どうしで相談して決めてください」ということになったので、担当したページ数で配分することにしました。私の担当分は、18%になりました。10%の印税の18%です。書いた量が少ないので当然ですが、共著の印税は少ないものです。それでも、私たちは、自分たちのセミナーで使える参考書を、仲間と一緒に作れたことに大満足しています。
最後に紹介するのは、『独習 電気/電子工学』(翔泳社刊)です(写真4)。これは、洋書の翻訳書であり、ベテランライターの日向俊二さんが翻訳を担当し、私は僭越ながら監修を担当させていただきました。私は、企画を立ててくれた編集者さんと日向氏とは、かれこれ10年来のお付き合いです。585ページで定価3200円という大作を、10年間の友情の記念碑として作れたように思います。もちろん内容も素晴らし出来ですが、それ以上に、3人で本を作れたことが嬉しくてなりません。
前にもお話しましたが、私のライターとしての目標は、自分が死んだ後もずっと読み続けてもらえる本(もちろんオリジナル作品で共著でないもの)を書くことです。残念ながら、そのような本は、まだ書けていません。コンピュータ書の寿命は短いので「これは自分の最高傑作だ」という本が書けても、やがて絶版になってしまいます。今回紹介した4冊の中で、最初に紹介した共著だけは、すでに寿命がつきています。でも、私は、その共著を大事に本棚に飾っています。共著者との友情が詰まっているからです。
矢沢氏はグレープシティ株式会社アドバイザリースタッフ。講師とライターという2つの芸を持つ芸人。「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP社)の著者である。2007年06月13日から,ライター業にまつわる経験談をまとめた「ライター矢沢の著作日記」がスタート。このほか,セミナー講演をWeb上で再現した「講師ヤザワのセミナー日記」全14回分,筆者が出会った元気なプログラマを紹介する「私が出会った元気な人たち外伝」全13人分と,世の中の様々な計算機(コンピュータ)を訪問する「名物コンピュータ列伝」全12話も読めます。

[ 184] 【第6回】 共著は仲間たちとの記念碑:矢沢久雄のソフトウエア芸人の部屋:ITpro
[引用サイト]  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070816/279800/



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