ソニーマガジンズとは?

17歳で恋をし、妊娠したスアドさん。彼女の家族は、名誉を汚した罰として彼女を火あぶりにしました。彼女が例外だったわけではなく、その村では男性と話をするだけでも、家族の恥として「名誉の殺人」が行われることも。そして、今でも世界中で年間6000人以上の少女が、家族の手によって「名誉の殺人」の犠牲者になっているとも言われています。
現在はヨーロッパで第二の人生を歩んでいるスアドさん。この[名誉の殺人]と呼ばれる忌々しい因習の根絶を願い、自らも戦う彼女にお話を伺いました。
S: もちろん簡単なことではありませんでした。よくよく考えてのことです。私は奇跡的に命を救われ、今こうして元気に幸せに暮らしています。しかし、世界には今でも同じように、家族によって苦しめられている少女たちがたくさんいます。彼女たちを一人でも多く助けたいという思いから、書くことを決意しました。この本のお陰で『名誉の殺人』という野蛮な因習の存在や、それが一体どういうものなのかということ、そしてそれによって、今でもたくさんの少女たちが犠牲になっているという事実を、多くの人たちに伝えることができました。
フランスでは今、42万部売れていますが、そのフランスでさえ、初めは「名誉の殺人」という言葉すら、知られていませんでした。実際、私自身も、自分がされたことが「名誉の殺人」だったということを、ヨーロッパに来るまで知りませんでした。村では虐待や殺人は日常茶飯事でしたから。今は認知度が高まり、たくさんの人たちの間でこの「名誉の殺人」について、話し合われるようになりました。シュルジール※1の存在も広く知ってもらうことが大切です。そしてそれを伝え続けることが私の使命だと思っています。これからは、この本が私の助けになってくれるでしょう。
S: 確かに家族を殺してやりたいと思うこともありました。でもそういう暴力的な行為ではなく、この本の中で「名誉の殺人」を強く訴え続けていくこと、これが私の中でいちばん美しい復讐だと気づきました。そしてこの本によって、「名誉の殺人」を一人でも多くの人に知ってもらうことが大切です。知られていないから、こういう因習が終わらないのです。こんなことがまかり通ることは間違っているんだということを訴えていかなくてはならないのです。みなさんが知ってくれて、「名誉の殺人」の根絶を求め、村の男たちにプレッシャーをかけ続けていくことが、もっとも大切なことなのです。
S: 毎日電話をかけてきてくれて、話をしています。夫や娘は私のことを誇りに思ってくれています。日を追うごとに家族への愛情が増している気がします。まだ娘たちが小さい頃は、焼けて形を無くした耳のことも、「ご飯をちゃんと食べなかったから大きくならなかったのよ」などといろいろ嘘をつきながら、少しずつ説明してきました。
でも、この本を読んで、娘たちは私の身に起きたことを心から理解してくれました。言葉だけでは途中で泣いてしまったりして、うまく話せませんでしたから。今では家族との絆が以前にも増して深まりました。この本を出す2〜3年前に、離ればなれになっていた息子と初めて会うことができました。息子に話すのは正直辛かったです。彼は最初、自分のせいで私がこうなったのではないかと悩み、そう思われることが、私も辛かったです。ずっと私のことをなんと呼んでいいかわからなかった彼も、この本を読んで、すべてを理解し、つい数ヶ月前に始めて「ママ」と呼んでくれました。とても嬉しかったです。そして彼は私の傷跡を見て、泣いていました。
S: 後悔はしていません。確かに、もう少し成熟していれば、こうはならなかったとは思いますが・・。
でも、その肉体関係はお互い合意の上だったし、私も彼に恋をしていました。決して強引なものではありませんでした。彼も結婚したいと言ってくれました。父に2度も頼みにも来てくれました。でも、家にはまだ姉がいました。結婚は年功序列なので、私たちの結婚を父はどうしても許してくれませんでした。妊娠したけど結婚できないと知って、彼も自分の身の危険を感じて逃げたんだと思います。
でも、あの苦しみがあったから、今の私があるのだと思っています。たとえあの村で一番の美人で暮らしていたとしても、決して今のような幸せは得られなかったでしょう。醜い体でも、今の自分の方が好きですし、うんと幸せです。
S: ただ、働くためだけに生まれてくるのだと思います。2〜3人以上の女は無駄な存在として、殺されることが度々あります。私の母は7人の女の子を殺しました。母は14歳で41歳の父と結婚しました。女は女性と見なされると、ただちに結婚して、夫に仕えることを強いられます。動物以下の扱いを受け、男たちが食事するまわりにかしずいて仕えます。病気になると叱られます。いつも元気で働いていなければならないのです。あの村では、女性には、「嫌なことは嫌」「これが欲しい」という意思を伝える権利が全くありません。すべて男が決めます。
例えばある主婦が買い物へ出かけ、店主と話しをしました。彼女は帰宅後、夫の兄弟に首を切って殺されました。彼女には男性と話しをする権利を与えられなかったのです。それも男たちが決めたことです。もし、今でもあの村にいたら、私も母や他の女性と同じことをしたでしょう。女の子がたくさん生まれていたら、村の風習に従って、何人かを殺していたと思います。
S: この本を書いたときまではまだ彼女を憎んでいました。日に日に自分の顔が彼女に似てくるのが嫌で、手術もしました。でも、村では男たちの支配下で、彼女にも選択肢がなかったんだとわかりました。やっとのことで、ほんの数ヶ月前ですが、「憎んでごめんなさい」と思えるようになりました。
S: 寝る前にベッドでたくさん話しをします。性教育もきちんとしますよ。自分は何も知らず無知だったので、自分が知り得なかったことを娘たちにきちんと話して、間違いのないよう、人並みの知識を持ってほしいと思っています。そして、娘たちには自分の可能性を大切にして、私ができなかった勉強や、旅行などたくさんのことにどんどんチャレンジしてほしいです。
彼女たちが経験している青春、私にはなかった青春を、今私は彼女たちとともに楽しんでいます。娘たちは私の母でもあり、友達でもあります。村にいたころは、母親とこんなに話をしたことはありませんでした。私が子供のころに築けなかった母娘関係を築くことができました。
S: 正直、はじめの頃はまだ残っていたと思います。ヨーロッパで一人目の娘を出産したとき、少しがっかりしてしまったんです。あぁ、この子は女の子だから、私と同じような不幸な目に合うのではないかと不安になりました。それはきっと、悪しき因習が、自分の中に染み付いていた証拠でしょうね。でも、今はこの本のおかげで、生まれ変われたので、そういう気持ちは全くありません。
S: ジャクリーヌが保護した少女たちが数十人います。私よりもひどい火傷を負った子もいます。彼女はまだ心を閉ざしてしまって話もできない状態です。彼女たちとは、ゆっくり時間をかけて接していくことがもっとも大切です。彼女たちには私という見本がいます。どんな不幸でも克服できるということを伝えてあげたい。希望は必ずあると教えてあげたいです。人に話を聞いてもらえるということは、とても大切な治療です。彼女たちを自分の娘と思って接しています。
S: こんな風になれたのも、決してすぐにということではなかったんですよ。この本を書くにあたり、少しずつ自分のことを思い出しながら、理解していくことができたのです。私は字が書けませんから、テレーズが口述筆記をしてくれました。彼女は私に「とにかく生まれ変わりなさい。今までのスアドを忘れなさい。新しいスアドを開放しなさい」と励まし続け、私の心を引き出してくれたのです。彼女がたくさん話を聞いてくれて、すべてを吐き出すことができて、私は生まれ変わったのです。この本を出せたことは私にとって最も効果的なセラピーだったと思います。この本は分析医にも治せなかった私の心の闇を取り払ってくれました。今は、あんなに嫌っていた傷跡も「大丈夫、これが私の人生よ」「この傷も私の一部」と思えるようになり、隠すこともなくなりました。傷を見てもらえることで、私自身、一日一日強くなれる気がします。今私は自分がとても心地いい環境に身をおくことができています。その充実感と自信が私を輝かせているのかもしれません。人を愛するにはまず自分を愛することが大切だと知りました。そして私が今こうして力強く話せるのは、それが私の使命だからです。
この本のおかげで、本当の女になれた気がします。新しい、第二のスアドが誕生したんです。
S: こんなに幸せと感じたことはありません。この幸せをみなさんに分けてあげたいです。世の中に、様々な問題で苦しんでいる女性はたくさんいると思います。でも決して希望を捨てないでください。決して希望を忘れないでください。女性は強いんだということを忘れないでください。
S: 「名誉の殺人」を知ってもらえただけでも大きな力になります。そしてどうか、この本を読み終わったあとは、身近な人とこの話題について話し合ってください。あなたたちには、私にはなかった"話す権利"というものがあるのですから。ひとりでは何もできないかもしれませんが、スイスにはシュルジールという団体があります。日本にも様々な人権保護団体があります。自分たちで作ってもいいかもしれません。とにかく団結することが大切です。みなさんからの支援を胸に、希望を捨てず私もがんばります。そして、今回日本に来て、こうしてここで私に話をさせてくださったことに心から感謝します
本当にあたたかいおもてなしを受けて感動しています。仕事上では主に女性の方が多く、皆さんの心配りに本当に気持ちよく仕事ができています。
仕事以外のことで言えば、よく食べています。お食事を本当においしくいただいています。先ほど食堂に行ったのですが、みんなが挨拶してくれました。今自分が住んでいる場所でも、初対面の人には「やけどしているね」など奇異の目で見られることが多いのですが、こちらの方はまったくそういったことがなく、全然知らない人からも挨拶をされたり、声をかけられたり、そういうことがとても心に染みます。それだけ自分が気持ちよくいられるので、東京に来て初めてノーメイクで、そしていつもは耳の傷を隠すために髪の毛をおろしていましたが、初めて髪の毛を縛ってレストランに行きました。取材の時にもこんなにも肌を見せることはなかったのですが、全部ジャケットを脱いで傷を見ていただいたりできるのは、今こうして自分が気持ちよくいられるからだと思います。
自分が娘時代に味わえなかった愛というものが、いかに大事かということを今実感しています。娘たちに対しても、息子に対しても。いかに愛が大事か、それをいつも覚えておいてください。困難にぶつかっている人、いろいろなことがあると思いますが必ず希望を忘れないでいてください。私のように生きている者もいるので、希望を絶対に忘れないでください。そして最後に、こうして日本に招いていただき、日本で数々の人に会う機会を与えてくださったことにありがとうと言いたいです。
〈SURGIR【ルビ:シュルジール】(出現)〉は精神的にも肉体的にも苦痛を抱え、罪深い慣習に拘束されている世界中の女性たちおよびその子供たちのためのスイスの組織です。〈出現〉は女性たちを打ちのめしている不公平な因習と日々、必死に闘っています。

[ 145] Sony Magazines -- ソニー・マガジンズ 話題のノンフィクション『生きながら火に焼かれて』--
[引用サイト]  http://www.sonymagazines.jp/new/nonfiction/fire.html

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[ 146] Sony Magazines CATCH BON!−キャッチ本゛
[引用サイト]  http://www.catchbon.jp/index.html



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