食らわさとは?

鬱陶しいくらいに眩しかった月明かりは随分と影を帯びて空に冠して、新月が近付いてる、そう思えば自然に笑いが込み上げてきた
起きてしまったかと思った朔夜は俺のシャツをしっかりと掴んだまますやすやと安らかな寝息を立てて眠っていた
よく寝ているのを起こすのも忍びなくて寝かせたまま体育館から連れ出したのはいいが、よく考えたら俺はこいつの家知らないんだよな
後先考えずに行動するのも悪い癖かと思えば次の瞬間にはどうにかなるだろ、そんな楽観的な思考には我ながらバカだよなぁと思うけど
歩き出してみれば夜更けだと言う事もあって人通りも車も少ないのは助かったが、体育館の様な室内とは違って石やらゴミやらが転がる悪路を腕の中の朔夜を起こさない様に歩くのは骨が折れた
会う度話す度に深みにハマっていく自分がどうしようもなく情けなくなるけど、それもいいと思う自分は変わったんだろう
立ち止まるついでに腕を持ち上げて前屈みに首を伸ばすと丸まって眠る恋人を包んでいる自分の上着の端を咥えて引っ張った
最近じゃ風俗店の呼び込みも減ってきたみたいだが、それでもこういう界隈じゃまだまだ無くなるもんじゃない
朔夜の背を抱える腕を抱き込む様に引き寄せて少しでも煩くない様にしながら俺は酔っ払いやら勧誘に精を出す連中を尻目に足早にその区間を抜けて行く
ピンクやら赤やら黄色やら、色取り取りのネオンが飾る看板を掲げるビル居並んだ道を進めば俺の自宅が見えてくる
シャワーも厨房も一階に降りれば店の設備で何とでもなるし、第一四六時中親父やお袋が愛人だか遊び相手だか知らないがを連れ込んで来る自宅よりはこっちの方がよっぽど落ち着いて寛げた
一筋縄では行かない所か楽しそうにからかいオーラを発してアキラさんは俺の肩に手を掛けて覗き込む様にして腕の中の朔夜を見ていた
方や黒いスーツに派手な色シャツを着込んだお世辞抜きにも男前なアキラさん、そして絡まれているのは腕に人一人抱えた制服姿の俺
軽く置かれていただけの手は案外あっさり肩を外れて、にやにやと俺を窺うアキラさんにへにゃっと締まりの無い笑みを向ける
お手上げ、とポーズをとって笑うアキラさんに笑って返すが、ふと思い出して俺は慌てて立ち去ろうとする相手を呼び止めた
思わず勢いよく振り返りそうになるのを必至に思い留まって首だけで相手を見ながら俺はちょっと情け無くて緩い笑みを浮かべた
指が攣りそうになりながら部屋の鍵を開けて入ると扉の直ぐ脇にある電気のスイッチに体当たりする様に肩を押し付けて灯りを点ける
それを中心に俺の使いやすい様に壁際に並んでいるロッカーにテレビにオーディオ関連、と自分で言うのも何だが閑散とした部屋だと思う
ベルトを抜き取って前を留めるボタンだけ外してやって、シャツを脱がせると隠す様に掛け布団を掛けてやった
Tシャツにジーパン、ラフな室内着に着替える間も見ない様に聞かない様に意識を逸らそうとする度に嫌に良く耳に入る朔夜の小さく呻く声、身動ぎする衣擦れの音に顔が熱くなる
普段は俺より体温が低いのに眠っている所為か布団に入っていた所為なのか、熱いくらいに感じる温もりが心地良い

[ 46] ・・・After?
[引用サイト]  http://page.freett.com/crazymoon/after.html



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