裕泰とは?

── ついに公開となった『いま、会いにゆきます』。出来立てほやほやのこの作品の生みの親であり、そしてこの作品で映画監督としてデビューを切った、土井裕泰(どい のぶひろ)監督に色々とお伺いしました。
── 本日はよろしくお願い致します。さっそくですが、この『いま、会いにゆきます』という作品の監督に抜擢された経緯について教えて下さい。
土井> プロデューサーから「『いま、会いにゆきます』というロングセラーの小説があって、それを映画化したい」という企画のお話を頂いて、そこで初めて原作を読みました。
最近の流行として“泣ける”って言葉がキーワードみたいになっていますけど、“泣ける”だけでは面白くないな、と思っていました。
でも、この原作は単純な男女のラブストーリーだけではなくて、「親子」だったり、「家族」だったり、そこに“いろんな愛”っていうものがちゃんと描かれていて、すごく奥行きのあるポジティブな作品だなと思ったんです。それで、「是非やらせてください」とお答えして、脚本家の岡田恵和さんと一緒に脚本を作る作業が始まりました。
── 私も原作を先に拝読していまして、市川拓司さんがお持ちの独特の文章の面白さを、どのように映像で表現されるのか非常に興味があったのですが、映像化の作業は非常に苦労をされたのではありませんか?
土井> そうですね。原作には活字ならではの面白さがあって、これを映像化するのは非常に難易度が高い仕事だな、と思いました。しかも映画には時間の制約もありますしね。その時間の中でどうやってこのストーリーを語っていくのか、かなり打ち合わせを重ねました。
── なるほど。是非、原作のファンの方には、劇場に足を運んで頂いて、映像ならではの表現を堪能して頂きたいですね。ところで今回は「はじめての映画監督」という面でもご苦労をされたのかと思いますが、初めての映画での演出というは如何でしたか?テレビとの違いなどはありましたでしょうか。
土井> テレビでも映画でも、現場に入ってモノを作っていく上で、僕のやる作業というのは基本的には変わらないと思っていたし、実際それは変わらなかったと思います。
ただ、現場での時間の流れ方というのは違いましたね。テレビの現場では、「ライブ感」とか「スピード感」が要求されるけど、映画は1枚1枚の画に丁寧に時間をかけていきますから。
丁度ドラマの演出をはじめて10年経って、何となくこの先守りに入っていきそうな感じもあって、自分で自分の「枠」みたいなものを壊したかった。だから、今回は、初めての映画のスタッフの中に、ポンと飛び込んでみたんです。沢山刺激をうけたかったし、吸収したかったから。
── スタッフもそうですが、撮影も映画らしくフィルムを使用していらっしゃいますね。近頃は映画でもハイビジョン撮影のものを見かけたりするのですが、フィルムへのこだわりというのもあったのですか?
土井> そうですね。折角映画をやるのなら、今までと違う世界というのを経験したい、と思いましたし、この作品の内容というのは、どちらかというとフィルムに適しているんじゃないかなと思ったので。
今は、CGを駆使し、非常に高度なデジタル表現が可能だけれども、本作ではデジタルな表現に頼るのではなくて、ちゃんと人の体温が感じられるようなものにこだわりたいなと。技術的にも、美術的にも「アナログ感のあるファンタジー」を目指したいというのが最初にありました。
── 種田さん率いる美術部渾身のセット「5番倉庫(廃工場)」などは、まさに「こだわりのセット」でしたね。
土井> ええ。「一度死んだはずの澪が、現れて、去っていく」っていう事は、非現実的な出来事なんだけれど、そこで起きる彼らの感情というのは、ものすごくリアルな出来事じゃないですか。
だから、最初に種田さんとは映画自体の世界感を現実と非現実の中間で表現したい、という話をしました。そのためのキーになるのは、「森」と「廃工場」と「秋穂家」であろうと。
原作では「5番倉庫」というのは、森の中の工場の跡地に壁が1枚だけ残っている、っていう表現なんですけれど、種田さんが提示してくれたスケッチにはその廃工場の内部が描かれていた…非常に幻想的な、実際の植物が自生してしまっていて…雨と光が部分的に射し込んで…すごく独特の世界で、それを見た時に、僕自身が、その世界に導かれる気がしましたね。すごく。
そのイメージをもとに、映画の世界をどういう風に作っていこうかという方向性が定まったように思います。今回、本当に美術のイメージが映画全体で強く光っていると思います。
── なるほど…。その「5番倉庫」のセットが立てられている諏訪というロケ地ですが、原作でもクライマックスとなっている諏訪を選ばれたというのは、やはり狙いなのでしょうか。
土井> いえ、諏訪っていうのは特に意識してはいないです。最初は長野県のもうちょっと北の方をイメージしてロケハンをしたんですが、なかなかしっくり来る所が見つからなくて…。
で、どうしようかな?と思っていたときに、別行動で動いているスタッフが「諏訪で廃工場が見つかった。」「その近くで良い雰囲気の森があった」「○○という場所も見つかった」っていう情報が入ってきて…。
特に廃工場のセットは、我々が色々と手を加えなきゃいけないので、なかなか貸していただける所がなくて困っていたんですが、諏訪市の方がとても協力的にして下さって、結果的に諏訪をロケ地の中心に据えた、という感じです。
ただ、この作品自体は「これは長野県○○市のお話しです」というのではなくて、「とある森の、ある小さな町のお話し」っていう風にしたかったので、諏訪を中心にして松本から山梨県の白州までの結構広い範囲でイメージを切りとっていくことになりましたけど。
もう1つ、映画ではそのシーンは全然別のシチュエーションに置き換えてしまっていますけど、原作で二人が再会するシーンを読んだ時、「これは明らかに諏訪湖の花火大会だな」っていうのがわかったんです。なので、僕のなかで何となく「諏訪」っていうのがインプットされてはいたんですよ。
だから、結果的に原作に導かれてそこに決まったような、ちょっと不思議な感じはしましたね。原作に見えない力で引っ張られてたのかな。
── うーん、不思議なものですね…。縁があった、とか、呼ばれた、という感じなんでしょうか…。さて、話はかわりますが、監督のご家族について少し伺いたいと思います。まずは家族構成について教えて下さい。
土井> 妻と子供、男の子が2人います。7歳と2歳。写真を見せてあげようか?みんな同じ顔してんだよ、うち(笑)。
── (写真を拝見して)うわっ! ほんとだ…。似てますね! 目が…小さいお子さんの目がすごくお父さん似ですね…。2歳なんて可愛い盛りじゃないですか。 クランクインするとき、監督はスタッフの皆さんに「皆さん家族とか大切な方がいると思いますが、今年の夏だけは、僕に預けて下さい!」と仰ったそうですが、監督ご自身も、お子さんと一緒に夏休みを過ごせないのは、やはり辛かったのでは?
土井> そうですね…、でも、自分のことよりも、やっぱりスタッフみんなが家族から責められてるような絵が浮かぶ訳ですよ…。恋人とかね…。なにせスタッフ全員の夏休みをまるまる奪ってしまうわけですから…。
── なるほど…。そういう状況ですから、逆に家族の存在の有り難さというのを痛感されたのでは?
すごく思うことは、僕たちは、たとえば知り合いに自分の家族構成の話をする時「いやあ、嫁さんがいて、子供がいて、まあありきたりですよ。」なんて言うじゃないですか。普通の家庭で、特にドラマチックな事なんてないですよ、みたいな言い方をしますけど、ふと「この人とどうやって出会ったんだっけ?」とか、「この人と出会っていなければ、うちの子供はいなかったんだよな」とか、そういう運命の巡り合わせみたいな事を、原作を読んだ時に考えさせられたんですよね。
「家族」っていうのは、当たり前のようにそこに居るようでいて、でも実はちょっとした運命みたいなもので巡り会わされて、その偶然が折り重なって、こうして家族になっているんだな。っていうことを感じます。何というか、“神様の導き”みたいなことをすごく感じましたね。この映画を作りながら。
土井> そうですね。実は、みんなこの映画を観て「物事というのは、何かに導かれてるんじゃないかな」というような事を、ふと考えるんじゃないかなと思うんですよね。
運命みたいなものに支配されてるというのかな。だからきっと、「映画やドラマみたいなそんなドラマチックなことがある訳ないじゃない」なんて言うけど、実は皆一人ずつにドラマがあって、夫婦になったり家族になったりしてるんだと思うんですよ。
── なるほど…。とても興味深い考察です。これについては、皆さんは映画を見てどのように感じられたのか、是非伺ってみたい所ですね。さて質問も残り少なくなってきましたが…監督にとっての「ベストポジション」をお伺いしたいのですが。
僕はいつも、どんなに仕事がきつくても、帰れる限りは必ず1回家には帰ろうと思っているんです。やっぱり自宅という場所は、自分を1回リセットする場というか…。
この仕事をやっていると、いかに睡眠時間を取るか、というのはすごく大事な事だし、家に帰って自分の布団で寝る、っていうことで、毎日何かを切り替えていく、っていう大事な場所になっています。それに、やっぱり、帰ってフッと家族みんなが寝てる顔とかを見た時に…ちょっと癒されますしね(笑)。
── どうもありがとうございました。それでは最後になりますが、この公式サイトを見ている方に、メッセージをお願い致します。
土井> この作品は本当に広い意味でのラブストーリーです。性別に関わらず、男の人にも観てもらいたいし、恋をしている人も、していない人も、子供がいる人も、いない人も…、いろんな人がいろんな立場で、必ず何かを感じてもらえる作品になっていると思います。ですから、いろんな人に観てもらいたいですね。
それと、ただ泣ける、涙で終わるのではなくて、劇場を出る時には笑顔になって出てもらえる作品に仕上がっていると思いますので、是非観に来て下さい!
数々の大ヒットドラマを手掛け、日本のドラマ界には欠かせない存在。脚本の流れの中で演技をしっかり見せる演出は役者達からの信頼も厚く、「土井さんなら」という役者も多い。今回が初の映画監督。

[ 82] 『いま、会いにゆきます』 - 土井裕泰監督 インタビュー
[引用サイト]  http://www.ima-ai.com/interview/doi.html



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