しまうとは?

取材して記事を書くのが記者の本職だが,まれにプレゼンテーションをする機会がある。IT関連のイベントで,ERPやプロジェクト管理といった土地勘のあるテーマについて,最新動向や事例などを20〜30分ほどで話すというものだ。正直言って,筆者にとって最もやりたくない仕事の1つである。毎回必ず,アガってしまうからだ。
イベントのプレゼン会場では,多いときには100人を超える方が聞きに来られる。小心者の筆者は,それだけの人を前に話すことを想像するだけで,本番前から緊張してしまう。時間が近づくにつれて心臓がドクドク鳴り,なぜか指先が冷たくなる。喉はカラカラ,声も微妙に震える。時間になって壇上に立つと,半ばパニック。手元の資料に書き込んだメモを頼りに,とにかく話を進める。しばらくして落ち着くまでは,それで精一杯と,いつもこんな感じだ。
筆者同様,プレゼンでのアガリを何とかしたいと思っているITエンジニアも少なくないはず――。こう考えて,日経ITプロフェッショナル8月号(8月1日発行)でプレゼンテーション・スキルに関する特集を担当した際に,臨床心理士からアガリのメカニズムと対処策を学んだ。自分自身,大変に参考になったので,ここで紹介したい。
まず,アガるとはどういうことか。実はアガリの症状は,ヒトの遺伝子に刻まれた防衛本能だという。太古の昔,私たちの祖先は猛獣に襲われる弱い存在だった。闘って猛獣を倒すか逃げ切るかできなければ,死が待っている。そこで猛獣などの危険を察知すると,ヒトの体はアドレナリンなどのホルモンを大量に分泌して,臨戦状態に変化する。
心臓がドクドクと鳴り大動脈の血流量が増えて足や背中,腹など大きな筋肉に血を送り込む。筋肉はこわばってしなやかではなくなるが,半面,火事場の馬鹿力が出やすくなる。このとき肺が,こわばった周りの大きな筋肉に圧迫されるので,呼吸が浅くなる。一方でケガをしたときの出血量を抑えるために,毛細血管が収縮して血流量が減る。だから指先が冷える。
アガリの状態は,これと同じだ。猛獣と闘うわけでもないのに,体は勝手に臨戦状態に移行する。馬鹿力を出すという,プレゼンにはまったく不要な運動機能が最優先されて,しなやかな動きが失われ,息が荒くなる。おまけに脳への血流が絞られるので,頭の働きも鈍る。臨戦状態への移行が遺伝子に刻まれたヒトの本能であるため,プレゼンが上手くできるかどうか不安を感じる限り,必ずアガる。それはヒトとして自然なことなのだ。
つまりアガリをなくすことはできないが,軽減する方法はある。といっても「人」という字を手のひらに書いて飲むといったおまじないではない。臨床心理学でいくつか提唱されている科学的なアプローチだ。手軽に実践できるものは,「呼吸法」「イメージ・トレーニング法」「筋リラクセーション法」の3つである。
呼吸法とは,簡単に言えば深呼吸をすること。深呼吸すれば,気持ちが落ち着くことは,誰でも経験的に知っているだろう。それだけに「そんなこと言われなくてもやっている」と思うかもしれない。しかし実際には深呼吸をしているようで,できていない人が多いという。アガった状態で大きく息を吸おうとしても,こわばった筋肉がじゃまをしてしまうからだ。
そこで重要なのは,息を吸うのではなく,逆に吐き切るようにすることだという。思い切り吐けばその分だけ自然と吸うから,深呼吸になる。
2番目のイメージ・トレーニング法は,プレゼンが上手くいく光景をできる限りリアルに,頭のなかで思い浮かべること。スポーツ選手などが良くやる方法で,擬似的とはいえ一度体験しておけば心の備えができるので,潜在意識下の不安を緩和できるという。イメージ・トレーニング法を行うコツは,プレゼンの冒頭や大事なメッセージを伝えるところなど,不安を感じる場面を繰り返しイメージすることだ。電車やお風呂など時間を見つけて,何度も実践するとそれだけ効果が高まる。不安が少なくなれば,必然的にアガリの度合いも小さくなる。
図●筋リラクセーション法のやり方図をクリックして拡大表示。日経ITプロフェッショナル2004年8月号,51ページより 筋リラクセーション法は,その名の通り,筋肉をリラックスさせることだ。先に,アガった状態では筋肉がこわばると説明した。逆に筋肉をリラックスさせると,アガリが軽減される。臨床心理学の実験で,この体の仕組みの存在は証明されている。ただしアガリの状態でこわばった筋肉をリラックスさせるのは簡単ではない。意識的にダランとさせているつもりでも,多量の血液とアドレナリンなどが流れ込んだ筋肉はこわばったままということが多いからだ。
そこで逆に,思いっきり力を入れて筋肉をさらにこわばらせる。寝起き時の伸びと同じ原理で,力を入れて抜くと,筋肉をリラックスさせることができる。この方法は,胸や背中などの大きな筋肉ごとに行う。息を吸って10秒間,筋肉に力を込め,緩めながらゆっくり息を吐くのが基本だ。筋肉ごとの詳しいやり方は,図[拡大表示]に示した。
筆者はまだこの方法を実践する機会を得ていないが,アガリが生理現象であることがわかり気分が楽になった。これからは「アガるなんて情けない」と自己嫌悪せず,前向きに対処策に目を向けようと思う。
もちろんアガリを克服できたとしても,それでプレゼンのスキルが高まるわけではない。特集の取材では,プレゼンの講師やIT企業のなかで自他共に認めるプレゼンの達人など22人の方に話を聞いた。彼らが口をそろえてスキル向上に不可欠だと言ったのは,「何かを伝えたいという熱意を持つこと」と「場数を踏むこと」だ。さらに,“実践的なセオリー”を身につけてから場数を踏めば,段違いに速くスキルアップできる,という指摘も多くの取材先から受けた。
ここで言う“実践的なセオリー”とは,「プレゼンの現場では,聞き手のほうを向いて話さなければならない」といった単なるお題目ではない。「スクリーン側の手で指示棒を持つことで,自然と体が聞き手のほうを向くようにする」といった実践可能なノウハウのことである。
日経ITプロフェッショナル8月号の特集では,プレゼンの達人や講師の協力を得て,そうしたプレゼンの“実践的なセオリー”を集大成した。さらに「プレゼンの直前に時間短縮を要請された」「急に代役としてプレゼンをすることになった」といったピンチを切り抜けるノウハウも盛り込んだ。プレゼンが苦手の筆者自身,参考になることばかりだった。ぜひお読みいただきたい。

[ 124] プレゼンでアガってしまう人に贈る処方箋:ITpro
[引用サイト]  http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20040730/147967/

南島歌謡史で、民謡の新しい名称が昭和の後期に生まれた。従来使用していた「民謡」のことを「しまうた」(表記はいろいろあり)と方言で表現するようになったのである。それは大きな社会的出来事であった。「しまうた」という用語は沖縄の本土復帰(一九七二年)を前後して、マスコミや民謡愛好者など一部の人たちから起こった呼称。今日では県内はもとより全国的にも知られ、市民権を得ている。 民謡という用語と併行して「しまうた」が使い始められた頃、沖縄の民謡・芸能界ではかなりの反発があった。中には「なぜ民謡ということばがあるのに、しまうたと呼ぶのか」と文句を言ってくる者もあったほど。ところが、「しまうた」の方が沖縄の土着のかおりと響きがよいということで、あれよあれよという間に流行。これまで異議を唱え、抵抗していた人々も使い出したから驚きである。今日からすれば、まさに隔世の感がするエピソードといえよう。 復帰前後に生まれた「しまうた」ということばは平仮名、片仮名、漢字、漢字平仮名混じりなど表記はたくさんある。沖縄・奄美ともマスコミや芸能界では「島唄」「島うた」「島歌」を。研究者の間では「しまうた」が多い。要するに「しまうた」の土台となる「しま」とは何か、という理解の差によって表記も多様になっている。では、なぜ「民謡」ではなく「しまうた」と呼ぶようになったのであろうか。そのことは本土復帰という社会情勢と決して無縁ではない。いわゆる、沖縄民衆の精神文化の華である民謡を、ヤマトグチ(共通語)ではなく、琉球方言で琉球文化圏の独自性を強調したいという内的欲求から考え出されたもの。そのことばは、沖縄の歌謡史からすれば一種の「造語」になるが、古くから民謡のことを「しまうた」と称している同一文化圏の奄美から、実は拝借して誕生させたというのが真相である。 しまうたの上限下限はウスデーク歌謡から現代までを範囲としている。いわゆる自然発生的民謡から、創作意識をもって作詞作曲されたミーウタ(新作民謡)まで。しまうたの「しま」は、民俗学でいう村落としての「しま」とアイランドの「島」を包含した概念で、南島文化の原郷である。 奄美・沖縄・宮古・八重山は同一文化圏とはいえ、歌の世界では強烈な個性を有し、それぞれ差がみられる。その差があるからこそ、魅力も大きいといえよう。沖縄本島・周辺離島は琉歌(8886)の濃密な文化圏で、沖縄音階が主流。宮古は非琉歌圏で律音階と沖縄音階の併存圏。八重山は琉歌形の稀薄な文化圏で、律音階と沖縄音階の併存圏。奄美諸島は琉歌の文化圏にありながら、北三島は日本民謡旋法をとっている。これら四ブロックとも、歌掛けの伝統が息づいている。「オキナワなんでも事典」より

[ 125] 本文/しまうた
[引用サイト]  http://www.culture-archive.city.naha.okinawa.jp/top/main/show_dinfo3.php?keyvalue=50037000



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