アクアヴィットとは?
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蒸留酒は英語でspirits。これは「たましい」の意味もある。なぜ、蒸留酒は「たましい」なのだろう。 アルコールができるためには糖分が必要。いちばん最初に人類が飲んだ酒は、蜂蜜やフルーツなどが自然に発酵してできた酒だ、といわれる。ワインやビールなどの醸造酒は、そうした自然のサイクルのなかからできてきたものだ。 ところが、蒸留酒というのは、そこに人間の手が大きく加わって生まれる。いったんできた醸造酒を、火にかけ、蒸発させ、それを再び冷やして、生き返らせる。つまり、醸造酒に死と再生の儀式がほどこされ、新しい「たましい」が吹き込まれて誕生する。ここに、蒸留酒がスピリッツといわれる所以がある。 蒸留酒は、錬金術師によって偶然発見されたといわれ、ラテン語でAqua-vitae(アクア・ヴィテ=生命の水)と呼ばれた。錬金術師は酒づくりを世界各地に伝えていった。まず、スペインでワインを蒸留し、それがフランスに伝わり、あるいはアイルランドに上陸してウイスキーの祖先となった。 アクアヴィットは、ほとんど語源に近い発音を残した、北欧諸国でできる蒸留酒のこと。主原料はジャガイモ。高純度に蒸留した後、キャラウエイやアニス、クミンなどのハーブやスパイスで香りづけをする。そのため、ハーブ・スピリッツともいわれる。 友人のバーテンダー・菊地敏明さんは最初にオールボー(デンマークのアクアヴィット)を飲んだときの印象をこう語る。 「アフター・テイストの余韻が長かったです。正直いって最初はキャラウエイ系の香りに抵抗感がありました。『これが生命の水か?』って。でも、飲んでるうちにあの香りがたまらなくなった。人を虜にさせる香りですね」 ぼくはコペンハーゲンに旅したときに、初めてオールボーを飲んだ。デンマークの人たちはニシンのマリネをつまみながら、アクアヴィットをキュッと飲み、その後、ビールをゴクゴクと水のように飲んだ。同じようにやってみると、これがまた美味い。淡い青空の広がる昼下がり、港近くのオープン・カフェで飲ると、お腹の中にポッと灯りがともるようだった。思えば『マッチ売りの少女』のアンデルセンもデンマーク生まれ。少女もアクアヴィットを飲むことができたなら、寒さを凌げたのかもしれない。 「そうなんです。アクアヴィットは体を温めてくれるお酒ですよね。ぼくも秋田生まれなので、冬の陰鬱さがわかるんですが、そういう気分のときにアクアヴィットは人を元気(これもスピリッツの意味ですよね)づけてくれるんじゃないか、と思うんです。まさに北国の生命酒です。 ボトルもグラスも冷凍庫でキンキンに冷やす。霜がついたグラスに注がれた液体は、冷えて粘性が高まり、トロッとしている。ひとくち含むと、まず穀物のまるくやわらかい感触と香りがし、次いで、キャラウエイの香りがたってくる。そして、デンマークの平らな大地を吹きすぎる清潔な風が心身を駆けめぐりはじめ、溌剌とした気分になる。 きっと、アクアヴィットには、命を生み、そして育む神さまの息も吹き込まれているのだ。 |
[ 169] アクアヴィット
[引用サイト] http://www.president.co.jp/dan/20020100/01.html
