辣腕とは?
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「好奇心は強いですね、昔から。心がけているのは、必ずライバルをつくることです」 千葉県八千代市にあるみずほ銀行勝田台支店で、鈴木奈美さんの受け答えは明快だ。 趣味はスノボ。「動かずにいられない」と、週1回はスポーツクラブに通う。酒量は「たしなむ程度」と笑う。 筆者が質問すると「○○」「△△、ですね」と、必ずキーワードを拾ってくれる。最初はちょっとどきりとするが、それがちっとも事務的でないから、ああちゃんと聞いてくれてるな、という安心感があるのだ。 勝田台支店の周辺には、1968年の京成本線・勝田台駅開業より前から住む年配の資産家や、定年退職したサラリーマンが多い。鈴木さんはそうした顧客宅を訪問、投資信託・外貨預金・個人年金保険の販売や、みずほマイレージクラブの勧誘、遺言信託、遺産整理業務を行っている。 11月に特定職(一般職)から基幹職(総合職)に転じたばかり。6月にフィナンシャル・プランナー(FP)2級を取得、現在1級に挑戦中だ。 みずほ銀行には、年間の上期と下期に、銀行全体から成績が際立った行員約30人を表彰する制度がある。高校卒業後、95年に旧第一勧銀に入行した鈴木さんはその優秀賞、優良賞の常連。2004年下期には、初のアウォードを獲得しているのだ。セールスコンテストで挙げた顕著な販売実績が受賞理由だ。 入行当初は窓口に座るのが主で、2年目の12月に大卒の女性社員が辞めた際、当時の支店長の推薦で営業に。「驚きましたが、やらせてくださいと即答してしまい」、ピンチヒッターとして外回りを始めた。その後窓口と渉外を交互にやっていた鈴木さんが「目覚めた」きっかけは、昨年1月の支店の移転。同じビル内の旧富士銀行側のローテラー(丈の低いカウンターで対応する窓口)の女性が、アウォードを連続受賞したやり手だった。 「同年齢で、高卒の私のほうが2年先輩だったのですが、目標の数字を大きく上回る実績が非常に衝撃的で……ああ、こんなに頑張っている人が身近にいるんだ、この人に負けたくないな、と思ったんです」 “凄い負けず嫌い”を自認する鈴木さんは、その女性が寿退社した後も、ひそかな「心のライバル」を勝手に決めて仕事に邁進しているという。 「相手に直接『あんた、ライバルよ』って言うことはないですが。ローテラーの方や、目の前に座っている男性基幹職の方とか、身近なほうがいい。抜かれたら必ず抜き返すし、私のほうが上にいたら、抜かれないように突き進みます。その方が何か獲得したら、もちろん同じチームですから『おめでとう』と心から思う半面、内心は『あっ、まずい!』(笑)」 小学校時代は珠算塾に通い、姉2人を上回る初段を取ったが「なんか“初”って、初めて、みたいでイヤ。冗談じゃないわ」と、二段取得まで頑張った。校内リレー選手の常連で、マラソン大会は常にトップ。中・高時代も陸上競技に熱中するなど「前を行く者を許しておけぬ」気性が、スキルを磨き、成果を挙げ続ける大きな原動力なのだ。 では、その顧客に気に入られるスキルとは? 鈴木さんは「お客様と親しくなること、聞き上手になること、共感すること」ときっぱり。 「この人話しやすい、信頼できそう、という安心感を持ってもらうことが一番大事。もし私だったらどう接してもらえば嬉しいか、と常々考えてます」 当初から、年配の顧客を前に「緊張したり、話が合わないということはなかった」が、話すのは8割がご本人。「この商品どうですか?」と持ちかける単品セールスそのものだった。 「お客様が求めているのは、セールスではなく“お金の相談ができるところ”なんです」 その日の朝刊で各自が興味を持った記事を披露しあう。市場関連など金融商品に結びつく事柄が主。社会面を取り上げることも。 戻りRMDB(リレーション・マーケティング・データベース、顧客の訪問日誌)に顧客とのやり取りなどを20〜30分で入力。 近年よく言われることだが、顧客の目が肥え、金融やマーケットの知識も豊富な今、単なる“物売り”は通用しない。そんな最前線にある部隊のスキルを磨くため、みずほ銀行の本部には「臨店スタッフ」という指導・支援のためのスーパーバイザーたちがいる。専門分野は様々で、定期的に支店に来て担当者とともに顧客を回ったり、様々な案件について相談したりする。 鈴木さんも、自分にとって重要な人物として、この「臨店」の証券会社出身の30代女性スタッフの名を挙げている。 また、鈴木さんはみずほ銀行が「2000人体制」を目指す社内資格のフィナンシャル・コンサルタント(FC)2級でもある。FC研修では「親愛のスキル」「質問のスキル」など様々な顧客との応対方法を学ぶ。例えば顧客に「いらっしゃいませ」でなく「お早うございます」と声をかければイエス、ノー以外の声が聞ける、といった具合だ。 「家に上げていただいて、いきなり本題を持ち出すよりも、例えば周囲を見て壁掛けを褒めるところから入る。その話のほうが長くなるんですが(笑)、お客様が笑ってくれたらだいたい話を聞いてくれます」 決して自分を聞き上手だとは思わないという。ただ、顧客が旅行に行ったときの写真をよく一緒になって見たりしていることがなぜか多いとか。「嫌いな人なんていない」というから、嫌われることもなさそうだ。 「お客様がつまらなそうな顔をして手や髪をいじり始めたり、時間を気にしだしたら、がらりと話題を変えたりします。商品のパンフレットを取り出すのは最後の最後です」 鈴木さんはこうした研修やアドバイスを貪欲に吸収し、十二分に生かしているといえよう。今年7月、日比谷公会堂で行われたFC研修で、鈴木さんは特定職・渉外部門の代表として壇上に上がり、堂々パネルディスカッションに加わっている。 勝田台支店では、毎朝8時50分頃から支店2階のメンバーでマーケット勉強会を行う。鈴木さんが転勤前の職場から持ち込んだアイデアだ。 「FC研修に行くたびに日経新聞を取れ、取れと言われ、諦めて購読し始めたのですが、そのうち窓口の子と渉外部隊がおのおの気になった記事をピックアップして発表する会をやり始めました」 好奇心旺盛な鈴木さんは、「すごく勉強になった」。当初はマーケットと無関係の記事ばかりピックアップしていたスタッフも、次第に株価や商品に結びつく記事を拾い出すようになってきたという。 FP、FC取得の試験勉強やこうした勉強会で得た知識は貴重だ。70歳を超える税務・会計のプロに「まさか入れるとは思っていなかった」という個人年金保険を勧めて相続対策に役立てた。また、意外に知られていない相続税法上の知識を披露し、富裕顧客に感謝されることもある。 「やはり私のことを好きになってもらわないと」と言う鈴木さん、今後も本人のみが知る“ライバル”と競り合いながら、その疾走は止まらないようだ。 |
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[引用サイト] http://www.president.co.jp/pre/20060102/001.html
